<特集 がんの免疫療法>
高活性NK細胞療法
がん免疫細胞療法に科学的妥当性はあるか

益山純一 ニューシティ大崎クリニック

益山純一 ニューシティ大崎クリニック
益山純一先生(ニューシティ大崎クリニック)にがん免疫細胞療法に科学的妥当性はあるかについて解説していただきました。

「大崎式」NK細胞療法

ニューシティ大崎クリニックは2004年に開業し、NK細胞を主要な細胞としたがん免疫細胞療法をおもにステージ4の転移ある進行がんに対して行ってきた。元来NK細胞を増やすことは難しいとされるが、医薬品およびGMPグレードの試薬を使用して安全に少量の末梢血からNK細胞を大量に増殖させる独自の培養方法を開発した。

これはNK細胞を大量に培養し投与する治療であるが、今話題になっているチェックポイント阻害剤(オプジーボなど)と同じ免疫療法といわれるものの、両者の免疫に対する働き方はまったく違うものである。前者は活性化したNK細胞を体内に加えていくことでがんと闘う免疫力を高めていく方法、後者は担がん状態にある免疫抑制をブロックすることで免疫刺激を高める方法である。チェックポイント阻害剤の効果は肺がんで20~30%と言われ徐々に適応範囲が広がっているが、副作用として免疫刺激が強く起こるため、さまざまな形で自己免疫疾患(重症筋無力症などときに重篤)を発症することがあり専門医による長期観察が必要である。

一方、従来のがん免疫細胞療法は20年近くの実績があり、副作用は軽度の発熱以外ほとんどなく安全に行えるのが特徴である。

私たちの考え方は、投与するNK細胞数を多くするだけでなく、がん細胞に対する傷害活性などその攻撃能力が十分に活かされるように培養し、投与によって体内の免疫系全体にできるだけ大きなインパクトを与えて免疫力を高め抗がん効果を引き出すことである。実際に1回の治療あたりどのくらいのNK細胞が投与されているかをご紹介する。

がんの進行具合、使用抗がん剤、体調などで得られるNK細胞数は異なるが、図1に示すように、100例のがん患者さんで調べると、67%の患者さんでNK 細胞は40億個以上、44%は60億個以上(平均で82億個)で、同時に培養されるT細胞も含めると投与総細胞は100億個以上になる。

図1 1回の投与NK細胞数の分布(100症例)

40億個以上のNK細胞投与で体内の免疫は高まるので、3分の2の患者さんに免疫の効果が出てくる。

どれほどの体内の免疫系にインパクトがあるかを見るには、細胞投与前後に採血し血液中の免疫状態をチェックすることである。当クリニックでは6つの免疫指標を治療経過に沿って測定している。図2は、手記1(35頁参照)の乳がんの患者さんで、6カ月間の抗がん剤治療と並行して免疫細胞療法(▼)を行い、その後切除した。ここでは血中のNK細胞数とNK活性を示す。

図2

NK活性はNK細胞のがん細胞破壊力を見る検査である。抗がん剤は一般に免疫にダメージを与えるが、図に示すように、最初はNK細胞数、NK活性は正常域を大きく下回ったものが、NK細胞の投与が始まってから徐々に上昇し正常域を超えた。11回で投与した総細胞数1576億個、そのうちNK細胞は946億個であった。術後の切除がん組織の病理検査で残存腫瘍細胞は認められないと報告され、術前の治療でがんは完全消失したわけである。

免疫細胞療法の科学的妥当性―厚生局定期報告資料から

2014年11月25日に「再生医療等安全性確保法」が施行され、現在はこの法律のもとにがん免疫細胞療法は行われている。細胞培養や治療に当たって安全を確保することはもちろん、1年間に行った治療内容を定期報告することが義務付けられている。その中で、その治療に科学的妥当性があるかを示すことも求められている。簡単に言えば、免疫細胞療法はがん治療に本当に効果があるかということである。

当クリニックが2016年に厚生局へ報告した科学的妥当性について、その報告資料を提示したいと思う。

国に申請する治験などでは、固形がんの腫瘍縮小効果判定のためRECISTガイドラインが使われている。しかし、自由診療を行うクリニックがさまざまながん症特集例からCT画像を得てガイドラインに沿って効果を判定することは不可能と言っていいが、それでも病院のCT画像やその報告書などに基づき63例で評価することができた。ほとんどが転移を伴うステージⅣであった。ガイドラインに沿うことはできないため、CT画像上、治療前後で、縮小(完全消失を含む)、変化なし、増悪(一部増大・新規病変あり)に分けた。

一方、免疫検査を160例で行い、免疫指標6項目(NK細胞、NK活性、顆粒球リンパ球比など)を総合して5段階評価に分類、それを免疫療法前後と比較し、免疫レベル上昇、変化なし、低下に分けた。図3Aのように、63例のCT画像上で腫瘍の変化は、縮小51%、変化なし20%、増悪29%、160例の免疫検査では、図3Bのように免疫力上昇69%、変化なし22%、低下9%であった。腫瘍の大きさでいえば、縮小が増悪を上回り、免疫上昇の効果が7割に認められたことは、この治療に科学的妥当性があると考えられる。

図3 CT検査結果、免疫検査

しかし、抗がん剤と免疫細胞療
法を併用しているので、腫瘍縮小
51%は免疫細胞療法ではなく抗がん剤だけによるものかもしれない。たとえば、それが抗がん剤や放射線がよく効く肺がんや食道がんに偏っていればその可能性がある。腫瘍縮小にがん種の偏りがないか調べると、5症例以上の6がん種に腫瘍縮小率に大きな差は見られなかった(図4)

図4 癌腫とCT検査結果

症例数の多い膵臓がんでは、RECIST基準によらない腫瘍縮小は54%で、治験で行われたMPACT試験ではジェムザールとジェムザール+アブラキサンのRECIST基準による腫瘍縮小はそれぞれ7%と23%であった。症例数やRECIST基準の適応など直接に比較はできないが、腫瘍縮小が難しいと言われる膵臓がんで、免疫細胞療法の併用で半数以上が縮小したことはその相乗効果が推定されると思われる。

がん免疫療法を行う上で、治療後の体内の免疫状態をモニターする検査は、免疫的効果を知るだけでなく、がん治療としてどれだけ治療効果に関与しているかを判定するためにも必須である。当クリニックは化学療法など標準治療との併用を基本としているが、上述したように免疫検査では70%で免疫力の上昇が見られた。化学療法など標準治療との併用が基本であるが、NK細胞など大量の免疫細胞を投与することによって化学療法の免疫ダメージを抑え、これに打ち勝てることを示している。

さらに重要なことは、腫瘍縮小効果と免疫療法は関係するかどうかである。関係があれば、標準治療に免疫細胞療法を併用する意味は十分にある。それを調べる統計学的方法がフィッシャーの正確確率検定である。46例で腫瘍縮小の有無と免疫力判定を比較すると、両者には統計解析から明らかな関連が示唆された (p=0.0155:p<0.05 が有意)。

図5のように、標準治療のもとで、免疫力上昇は腫瘍縮小に関与し好影響を与えると考えられる。このことからも、活性化NK細胞など、できるだけ多くの活性化免疫細胞を投与することで大きなインパクトを与え体内の免疫状態を刺激し高めることが肝要である。

図5 標準治療の腫瘍縮小に免疫細胞療法の併用効果はあるか?

エビデンスをつくるには

最後に、最近のがん免疫細胞療法に対する批判について述べたいと思う。

前項で科学的妥当性を示したが、これでもエビデンスレベルとしてはまだ低いものである。批判の要点は「治療効果のエビデンスのないものはすべきではない」と理解している。批判に耐える高いレベルのエビデンスを得るには、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請し審査ののち治験を第1相から3相試験まで進めていく必要がある。私たちの免疫細胞療法も2011年にPMDAへの治験申請が受理され2年近く審査を受けた。しかし、クリニックレベルでは対応できない問題に加え、第1相試験だけで10億円の多額な費用がかかることから申請は断念した。がん免疫細胞療法を真摯に行っている医療機関はすぐにでも治験を行いたいと考えているが、資金的な問題が一番のネックになっていると思う。

エビデンスのないことの批判よりも、なぜエビデンスがないのか、どうしたらエビデンスが出せるのか、建設的議論をするべきである。公的資金の援助や公的がん専門病院の参加を得て、予断のない中立的な立場で臨床試験を行いエビデンスとして結果が出せれば、最終的にがん患者さんに正しい情報を伝えることができるのではないか。

患者さんの「声」
「免疫療法が一日も早く〝保険適用になる〟ことを願っています」
免疫療法(高活性NK細胞療法・免疫細胞療法)を受けた患者さんの手記

ニューシティ大崎クリニック提供

【手記1】KMさん、39歳

忘れもしない2015年3月頃、胸に違和感を感じシコリを発見しました。しかし、当時授乳中だった私は、乳瘤だと思い込み「子供に母乳さえ飲ませていれば、いつかは自然に消える!」という昔から言い伝えられていた伝説的な言葉を鵜呑みにしていたので、特に気にも止めていませんでした。

ところが、それから2カ月くらい経つと、体調が悪くなり、動く事も食べる事もできなくなりました。そんな私を見るに見かねて、母が毎日献身的な看病をしてくれ、食事もバランス良くつくってくれました。母のお蔭で少しずつ食べられるようになり、徐々に歩けるようになりました。その後、直ぐに母に病院へ連れて行かれ、検査を受けると乳がんである事が判明しました。しかも乳房に4㎝の腫瘍が2つ、リンパにも3㎝の腫瘍が2つ転移していたのです。

担当医は標準治療だけを勧めてきて、「35歳以下の若年性乳がんは全体の2・7%なんだよ。このままだと5年先はこの世にいないと思う」、「抗がん剤治療をしても腫瘍がこれだけ大きいから絶対にCR ( 完全奏功)にはならないと思うよ」と宣告され、絶望の淵に突き落とされて、目の前が真っ暗になり、途方に暮れてしまい、ガクッと力が抜けてしまいました。

そんな時、どんな事があっても決して諦める事のない強い母の勧めで、NK治療の事を教えて貰ったのです。私はよく分からず、半信半疑でしたが、母を信じて藁をも掴む思いで、この治療に一縷の望みを託しました。

高活性NK細胞療法は、元々自分の体にある弱ったNK細胞を活性化して打つだけなので、副作用もなく安心でした。標準治療だけを選択した患者さんの壮絶で地獄のような、副作用でのた打ち回る苦しみを目の当たりにしましたが、私は脱毛以外の副作用は全く出ませんでしたので、つくづくNK治療と併用して良かったと心の底から思いました。その後も腫瘍はどんどん縮小していきました。そんな中、自分で意識的に標準治療のみの時とNKを併用して治療した時とでは、腫瘍がどちらがどのくらい縮小するのかを知りたくなりました。そこで、数カ月かけて比べてみた結果、NKを併用して治療した時の腫瘍の縮小度が標準治療だけの時よりも約10倍も縮小していたのです。標準治療だけの時は原発巣が2㎜しか縮小されないのに対し、NKと併用して治療した時は、原発巣が2㎝以上も縮小していたのです。その後も乳房の腫瘍の1個とリンパの腫瘍の1個も消失していたのです。

8回目のNK投与後にMRIや超音波で検査した結果、担当医に「腫瘍が見当たらないですね。手術しましょう」と言われ、手術の当日まで計11回NKを打ち続けました。そのお蔭で、手術後、担当医が母に「開いてみたら、とても綺麗でビックリしてしまいました」と不思議そうな顔をして言っていたそうです。その上、病理の結果はpCR(病理組織学的消失)。脈管、リンパ管、全てにおいて細胞レベルでもがん細胞は見当たらないとの事でした。本当に今でも信じられないくらいの夢のような結果でした。自らのNK細胞を活性化させる事で、がん細胞に対する殺傷能力を強め、本来の自分の力でがん細胞を消失させるNKの治療法は、改めて最も副作用の少ない安全で革新的な信頼できる治療法なのだと心から実感しました。今では、担当医から「pCRになった秘訣を是非教えてください。手足の痺れが全く出ないという人は初めてみました」と言われています。

現在の私は、すっかり良くなり、自分ががん患者である事を時々忘れてしまうくらいです。これからも再発予防のためにNKを投与し続け、免疫力を高めていきたいと思っています。

こんなに素晴らしい免疫療法が、保険適用になることを私は切に望んでいます。今は保険適用ではないため、高額な医療費がかかってしまいます。NKを投与したくてもお金がなく受けられない人があまりにも沢山いるという事は悲しすぎます。誰もが受けられるシステムに一日も早くなってほしいと思います。そうなれば、かけがえのない尊い多くの命が助けられるはずなのですから……。

【手記2】SCさん、71歳

多くの人が、自分ががんと関わりがあるなんて考えてもいない様に、私もそのうちの一人でした。

今年(2017年)古希を迎え、今から17年前の53歳の時でした。健康診断で乳がんが見つかりましたが、その時は全摘手術のみで済みました。どこにも転移は見られず、抗がん剤治療もなく、もうこれで終わりと思っていましたが、2年半後に肝臓に転移していることがわかりました。自覚症状もなく、強いて言えば、疲れを感じることはありました。肝臓に転移したことはとても深刻な事例だったそうです。

元気に日常を送っていたのに、これは困ったことになったと思ったものの、いよいよ抗がん剤治療になってしまうのかと不安になりました。抗がん剤治療がどういったものかわかりませんが、その当時の私の中には、いろいろと副作用があり、悪いイメージしかありませんでしたから、それを避けようと思い、何か良いものがないかと調べ始めました。その時に、現在も続けている免疫細胞療法に出会いました。

説明会にも参加して、理解できたことは、採決した血液を2週間かけて培養し、100億個に増やした細胞を体に戻しがんを殺すということが、素人なりに明快に理解することができました。ほかにもいろいろと説明はありましたが、これが一番私にはわかりました。副作用の心配もありませんし、それどころか投与日にはポパイのように元気の素を大量に注入してもらったと思えて、気持ちも元気になるようです。

先ほど申し上げた肝臓転移の治療は、やむを得ず抗がん剤を使うことになりましたが、免疫治療も一緒にやりましたので、医師も驚くほど早く消えて治すことができました。私の場合、副作用は全くありませんでした。抗がん剤治療の予定があるときにも、日程を見計らって免疫治療を行い、免疫検査で常に一定以上の免疫力の高さを維持していることがわかりとても安心でした。肝臓の転移が消えて、その後再発が全くないまま今年(2017年)で12年になります。実際に抗がん剤治療を受けていても、周りの人たちは本当に病院に通っているようには思えないと、いつも元気でいる私を見て驚いています。抗がん剤治療だけだとしたら、免疫力も低下し、少しずつ体が弱って、心も挫けそうになってしまうでしょうが、免疫力の高さを保っていれば、普通の生活を送ることができ、病気に打ち勝つ気力も出てくる今の免疫療法をありがたく感じているところです。

この先、またなにがあるかわかりませんが、私には強力な武器があると思って、平穏に日常生活を送っています。

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