<特集 がんの免疫療法>
究極のオーダーメイド治療「自家がんワクチン」
―がん治療専門医も驚いた効果のある例が続出

大野忠夫 セルメディシン株式会社代表取締役社長 日本歯科大学客員教授

大野忠夫 セルメディシン株式会社代表取締役社長 日本歯科大学客員教授
大野忠夫先生(セルメディシン株式会社代表取締役社長 日本歯科大学客員教授)に究極のオーダーメイド治療「自家がんワクチン」について解説していただきました。

自分のがん組織から がんワクチンをつくる

がんの手術を受けると、切除したがんの病理診断が行われる。顕微鏡で観察して、どのような種類のがんか、悪性度はどうか、といったことが調べられる。そして、残ったがんは、ホルマリン漬けのままか、パラフィンで固められるかして、保存される。

この残ったがん組織を活用できる免疫療法が、「自家がんワクチン療法」である。自分のがん組織を使う治療で、もちろん切除したばかりのがん組織も使えるが、病理診断の残りのがん組織も使うことができる。

がんは、体を構成している細胞が、突然変異を起こすことで生まれる。しかし、がん細胞が生まれても、免疫がしっかり働いてさえいれば、たちまち除去されてしまう。ところが、免疫が十分に働いていないと、がん細胞はどんどん増殖していき、いずれ発病することになる。

がんの免疫療法は、免疫の力を高めることでがん細胞を攻撃する治療法である。いろいろな方法があるが、自家がんワクチン療法もその一つである。患者さん自身の死んでいるがん組織と免疫刺激剤を混ぜて「自家がんワクチン」を

2015年になって、日本でも厚生労働省が「ゲノム医療実現推進協議会」を設置し、ゲノム医療の実現に向けた具体的な方向性を示している。国際基準で検査試料の品質・精度管理を行う必要性や、希少疾患や難病、薬剤の副作用回避のためのファーマコゲノミクス(ゲノム情報に基づいた創薬研究)を対象に研究を促進すべきだとしているが、これが日本で初めて提示されたゲノム医療政策である。アメリカやヨーロッパに比べるとつくり、これを注射で患者さんの体に戻す。すると、患者さんの体の中で、免疫が活発に働き始める(図1)。

図1 自家がんワクチンとは

このワクチンには、患者さんのがん細胞が持つさまざまな「抗原」が含まれている。抗原とは、免疫細胞が攻撃対象とみなすことができる目印のことである。がん細胞は多くの種類の抗原を持っているが、ワクチンを注射することで、それがすべて体内に入る。

攻撃役の免疫細胞である「キラーT細胞」が、目印を持つ細胞(つまり体内に残っているがん細胞)を見つけ出し、それを殺していく。このように、がん細胞という敵だけを的確に攻撃して、治療効果を発揮する。

自分のがんだけが持つネオアンチゲン抗原も攻撃の目印にできるのが長所

がんの免疫療法には、いろいろな種類がある。免疫細胞を体外で培養して数を増やしてから、患者さんの体に戻す「免疫細胞療法」や、多くのがんにある数種類の目印(抗原)を、人工的に合成してワクチンをつくる「ペプチドワクチン療法」があるが、「自家がんワクチン療法」はこれらの方法とは発想が根本的に異なっている。

がん細胞が持っている目印は、実際には膨大な種類がある。患者さん一人一人のがん細胞は、それぞれ独自の抗原を持っている。そのため、がん細胞が持つ目印は、数万種類というレベルに達している。自分のがんを使う自家がんワクチン療法では、この数万種類に及ぶすべての目印を活用して、免疫細胞にがん細胞を攻撃させることができる。もちろん、患者さんのがん組織には、その患者さんのがん細胞にしかない(同じがんの種類であっても他人のがんにはない)特殊な抗原(ネオアンチゲン)も含まれている。これが、自家がんワクチン療法の最大の特徴である(図2)。

図2 抗原の種類

ワクチンは3回に分けて注射するだけ

治療は、自家がんワクチンを3回に分けて、2週間間隔で注射する。他に、初回注射の前と最終注射の後に、免疫反応テストが行われることがあるが、これは主治医の方針による。注射は皮内注射といって、皮膚の表皮と真皮の間にワクチンを入れるようにする。

皮内にはランゲルハンス氏細胞(免疫細胞の一種)という特殊な細胞がいて、がんの抗原をリンパ節まで運んでくれる。副作用はほとんどない。注射した部位が赤くなったり、軽い発熱が現れたりすることがあるが、いずれも一過性で、症状が重症化することはない。免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボやキイトルーダなど)よりもはるかに安全である。

肝臓がんの再発を防ぎ生存期間を延長した

自家がんワクチン療法の有効性は、臨床試験で確認されている。世界的にも評価が高いのは、肝臓がんの再発を防ぎ、生存期間を延ばすことを証明した臨床試験である。

試験の対象となったのは、肝臓がんで手術を受けた患者さん39人であった。肝臓がんは、手術を受けても再発することが多いがんとして知られている。この患者さんたちを無作為に2群に分け、一方の群にだけ、手術後に自家がんワクチン療法が行われた。そして自家がんワクチン療法を行った群と行わなかった群で、その後の経過を比較したのである。

次のグラフは、どのくらいの患者さんに再発が起きなかったかを示している(図3)

図3 肝がんPFS-CCR2004

手術後21カ月時点で、再発していない人の割合を示す無再発率は、「ワクチン無しの対照群」が38・1%なのに対し、「ワクチン有群」は84・2%という高さであった。自家がんワクチン療法により、再発が抑えられたのである。この研究結果は、米国がん学会の公式学術誌に論文発表されている。

がん治療の専門医も驚いた症例が続出

乳がんで骨転移があると、どんな治療をしても(放射線+抗がん剤でも)治せない。骨転移は際限のない痛みをともない、最末期には正視できないほど苦しむ。それを抑えるため、放射線照射が行われるが、内臓を保護しなければならず、最大照射線量の半分程度に抑えられる。そのために、痛みはとれても骨転移は治せない。

骨転移が残っている限り、いつ再発するかわからず、体内に爆弾を抱えて生きることになる。

しかし、図4の方は骨転移が治った。

図4 Mammary-bonemeta-CMI0406

この方は、乳がんのなかでも悪性度の高いトリプルネガティブと言われるタイプであったが、手術後に自家がんワクチン療法を受け、「放射線治療+化学療法+ゾレドロン酸+(効かないのに)ホルモン療法」まで受けている(後の治療法だけでは骨転移は治せないのだが)。しかし、3年後には骨転移巣が完全消失(それでも放射線科の先生は治ったとは認めなかった)、4年後にはさすがにその先生も「治った」と言っていいと同意した。この成功例は世界的にも珍しく、専門学術誌に論文報告された。

しかし、いろいろな治療法を組み合わせたのでは、「本当に自家がんワクチンが効いたかどうかわからない」というのが、腫瘍内科医が繰り出す反論である。

だが、腎盂がんで、肺と腹部リンパ節に多発転移していて、病理切片をみた病理専門医が、「病理の立場からは、これは治らないがんですね……」と断言した場合はどうだろうか。腎盂がんを治せる抗がん剤はないのである。

しかし、当の患者さんが、抗がん剤治療がやはり効かなかったとわかってから、それ以上の抗がん剤治療を止め、自家がんワクチン療法に切り替えた結果(自家がんワクチンの単独療法となった)を図5に示そう。

図5 腎盂がんCMI2114

3カ月後には多発転移巣が縮小、22カ月後にはすべて消滅、根治してしまった。文句なく、これも学術論文となった。しかも、この患者さんを治療した銀座並木通りクリニック(TEL:03-3562-7773)では、自家がんワクチン療法により別の腎盂がん症例も連続して根治に成功している。

他にも、驚きの症例がある。肺がん脳転移長期生存例、巨大肺がん胸水貯留の完治例、余命2カ月という小細胞肺がんの劇的延命効果例、29回も再発した肝がんの治癒例、腹中破裂肝がん著効例、胃がん腹膜播種例、膵がん腸間膜リンパ節転移消滅例、骨肉腫多発手術根治例、化学療法無効腹膜がん症例、胆のうがん多発転移例、大腸がん腹壁転移例、等々があり、なかには、権威ある県立がんセンターの主治医がとっくに死亡したと思い込んでいた患者さんが、自家がんワクチン療法後に今でも生存、就業できている例もある。

これらの情報は、こちらのホームページに公開されているので参照願いたい。
(→ http://cell-medicine.com/cases/report/kyogaku-2/ )。

重要なのは、これら症例の多くが英文学術論文となって世界に報告されていることである。学術論文は、出版される前に専門家中の専門家が査読する。査読者は海外の専門家となるため、批評は実に厳しいものとなる。これをクリアーできる科学的な価値ある論文内容でなければ、英文論文として出版されることはない。

「自家がんワクチン」の臨床効果について英文論文が多いということは、世界の専門家が自家がんワクチンの科学的価値を認めたということである。その点こそ、自家がんワクチンの効果に関する信頼性が段違いに高いことを示している。

放射線治療との併用は治療効果を高める

自家がんワクチン療法は、放射線療法と相性のいい治療法である。放射線を照射するとがん細胞が弱まるが、弱くなった細胞は、免疫細胞の攻撃の対象にされやすいことがわかっている。

強い副作用を伴う抗がん剤との併用はあまり好ましくない。抗がん剤の副作用で、免疫の働きが低下してしまうためである。ただ、免疫力を低下させない程度の低用量化学療法(抗がん剤の用量を減らした療法)なら、逆に併用でよい結果が得られる。現在では、このような併用の仕方は、むしろ推奨されている。

がんが小さな段階で治療するのが効果的

自家がんワクチン療法は、がんの種類を選ばす、効果が期待できる治療法である。ただ、がんが大きくなりすぎると、手に負えなくなる。この治療法が優れた効果を発揮するのは、がんがごく小さな段階である。

手術後に再発が発見されるのは、がんが画像検査で見えるほど大きくなった段階である。効果を最大限に引き出すためには、こうなる前、再発が起きていない段階特集がんの免疫療法で行うのが理想的である。

免疫反応のアクセルオン・ブレーキオフが重要

表1にまとめたのが、自家がんワクチン療法の特徴である。自家がんワクチンは免疫を強く刺激し、免疫反応のアクセルとなる。

表1 治療方法の特徴 ◆メリット(特徴):
患者さんのがん組織からワクチンをつくるので、がん細胞を効果的に特定して攻撃する。
◆対象となるがん種・ステージ:
白血病を除くすべてのがんが対象。
◆特に有効性が高いと考える治療:
肝臓がん、脳腫瘍、乳がん、腎盂がんの再発予防。
◆他の治療法との併用:
手術後に再発予防として使用。放射線療法とも相性がよい。化学療法との併用は好ましくないが、低用量化学療法とは良い結果が得られる場合がある。
◆デメリット(負担・副作用):
副作用はほとんどない。治療費の目安150 万円前後。

それに対して、免疫チェックポイント阻害剤は、がん免疫反応を阻害しているブレーキをはずす。そこで両者を併用すれば、「アクセルオン・ブレーキオフ」という、車を動かすような共働作業が起こり、がん治療は成功する。

すでに、この実例が当社のホームページに掲載され、学術論文にもなっている。こちらを検索してご覧願いたい。

(→ 「自家がんワクチンと免疫チェックポイント阻害剤との併用:症例報告論文が受理されました」 )。

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