乳がんの状態を理解するための基礎知識

  • 乳がんの状態(がんの性格や進行度)と、患者さんの希望する治療方針によって、治療方法を検討する 個別化治療が行われている。
  • 本当に納得できる治療を受けるには、患者さんが、治療法の考え方やご自身のがんの状態について理解することも大切。

乳がんの治療では、個別化治療が進んでいます。乳がんという同じ病気であっても、どの患者さんにも同じ治療が行われるわけではありません。検査によって1人1人の患者さんの「がんの性格」や「がんの進行度」をよく調べて<総合的に>判断することによって、予め治療効果の判定や打つべき手を推測できるので、それらと患者さんの希望する治療方針を考慮して、それぞれの患者さんに適した治療が行われるようになっているのです。

患者さんが本当に納得できる治療を受けるためには、治療法の大きな流れと判断ポイント、ご自身の体の状態について、しっかり理解しておくことが大切です。その上で、ご自身がこれからどのように生きたいかを考え、医師とより良いコミュニケーションをはかりながら、治療法を選んでください。

受診の前後に、次のようなチェックリストを用意して記録して行くと、現状の把握や今後の治療法の検討に便利です。

チェックリスト
チェック項目 それを知る異議
部位 基本的な治療方法(手術の有無、手術の手法、補助療法の有無など)を選択するための参考情報として。
見た目(皮膚変化・発赤・潰瘍・えくぼ症状の有無)
乳頭までの距離
組織型(非浸潤がん/浸潤がん:通常型・特殊型)
大きさ(cm)(全体/浸潤径) 進行度(ステージ)を把握し、基本的な治療方法(手術の有無、手術の手法、補助療法の有無など)を選択するための参考情報として。
臓器転移の有無
リンパ節転移の有無
(センチネルリンパ節)(0、1~3、4~9、10以上)
拡がり(乳腺-脂肪-皮膚、筋膜-胸壁) がんが周囲組織のどこまで広がっているかを測る指標として。
リンパ管侵襲(ly0、ly+、ly++、ly+++)
(切除したがん組織の中に含まれるリンパ管の中に、がん細胞が入り込んでいること)
脈管侵襲(V0、V+、V++、V+++)
(がん周囲の血管やリンパ管の中にがん細胞がみられること)
病理検査で脈管侵襲が確認されると、転移・再発する危険性が高くなるので。
ホルモン受容体
ER(エストロゲン受容体)(陽性、陰性)
PGR(プロゲステロン受容体)(陽性、陰性)
サブタイプ分類をし、治療に使う薬剤を選択するための情報として。
HER2(0、1+、2+、3+)
(がん細胞表面の遺伝子で、これが発現しているかいないかで、タイプ分けされる)
核異型度(グレード1、2、3)
(グレード1、2、3)
がんの悪性度を知り、治療法を選択するための参考情報として。
行なった検査とその結果
(マンモグラフィー、エコー、細胞診、針生検、CT、MRI、血液検査、骨粗鬆症(DEXA)など)
治療の参考情報として。
行なった治療
(手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法など)

乳がんの性格

がんの性格を知るために、針生検で採取した組織を調べます。その結果から、サブタイプ分類により、5つのタイプに分かれます。

HER2(注1) 増殖能(注2) ホルモン受容体(注1)
(エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体)
陽性 陰性
陰性 低い ルミナールA トリプルネガティブ
高い ルミナールB(HER2陰性)
陽性 問わず ルミナールB(HER2陽性) HER2タイプ
注1)ホルモン受容体
乳がんの中には、女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の刺激が加わることで増殖するタイプがある。このタイプの乳がん細胞は、エストロゲンやプロゲステロンと結合するための受容体を持つ。これらの受容体がある場合に、エストロゲン受容体陽性(ER+)、プロゲステロン受容体陽性(PR+)と判定される。このどちらか、あるいは両方が陽性の場合に、ホルモン受容体陽性という。ホルモン受容体陽性の乳がんは、ホルモン療法の対象となる。
注2)増殖能
がん細胞が増殖する能力。 増殖能が高いと、がんが進行しやすいと考えられる。
がんの増殖能の程度を表す腫瘍マーカーが、Ki67。
注3)HER2
がん細胞の表面に存在する遺伝子で、増殖因子の一種とされる。
乳がんには、細胞の表面にこの遺伝子が発現しているタイプと、発現していないタイプがある。発現しているタイプの治療には、その働きを抑制する「抗HER2薬」が効果を発揮する。抗HER2薬には、トラスツズマブ、ラパチニブ、ペルツズマブがある。

さらに、組織を顕微鏡で観察する病理検査で、「核異型度」というがん組織の〝顔つき〟を調べ、悪性度をグレード1~3の3段階で判定します。

乳がんの進行度

乳がんがどのくらい進行しているかは、「しこりの大きさ」「リンパ節転移の有無と広がり」「遠隔転移(他の臓器への転移)の有無」によって判断します。病期(ステージ)は、これらの状況から分類されたものです。ただし、がんの状態は、がんの性格などもあわせて、総合的に考えるのが基本です。

病期0
(ステージ0)
非浸潤がん:乳がんが発生した乳腺の中にとどまっているもの
(パジェット病を含む)
病期1
(ステージI)
しこり:2cm以下 リンパ節に転移がない
病期2
(ステージII)
A しこり:2cm以下 腋窩(えきか)リンパ節(わきの下のリンパ節)に転移がある
しこり:2.1~5cm リンパ節に転移がない
B しこり:2.1~5cm 腋窩リンパ節に転移がある
しこり:5.1cm以上 リンパ節に転移がない
病期3
(ステージIII)
A しこり:5.1cm以上 腋窩リンパ節に転移がある
しこりの大きさを問わない 腋窩リンパ節転移が強い、または腋窩リンパ節転移を認めず、胸骨傍リンパ節に転移がある
B 皮膚や胸壁に浸潤がある
C 鎖骨下リンパ節や鎖骨上リンパ節に転移が広がっているもの
病期4
(ステージIV)
乳房から離れたところに転移しているもの

(監修:医療法人湘和会 湘南記念病院 かまくら乳がんセンター長 土井卓子先生)

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