遠隔転移がない乳がんの治療-1.手術

  • 乳房を一部切除する「乳房温存術」と、乳房全体を切除する「乳房切除術」がある。
  • 乳房を切除した後で再建する「乳房再建術」では、人工物を入れるインプラント再建が主流である。
  • 「自分にとって最も重要なことは何か」をよく考えた上で、それに沿った手術方法を選ぶことが大切。

完全に治すことを目指すために、基本的に手術が行われます。手術には、次のようにいろいろな方法があります。がんの大きさや周囲への広がり、さらに治療後の見た目も考えて、患者さんが何を重要視しているかを考慮しながら、手術法を選択することになります。

乳がんの手術は、大きく「乳房温存術」と「乳房切除術」に分けられます。乳房を切除した後、乳房を再建する「乳房再建術」も行われるようになっています。

乳房再建には、自分の体の組織(腹部や背中の皮膚・脂肪・筋肉)を使う「自家再建」と、人工物を利用する「インプラント再建」があります。自家再建だけでなく、インプラント再建も、最近保険適用になりました。
リンパ節への転移がある場合には、手術時に「腋下廓清」(えきかかくせい)が行われます。

自分にとって何が最も重要なのか(ふくらみの形にこだわりたい、変形してもいいから自分の臓器を残したい、手術の時間やお金が最優先など)について、その理由とともに突き詰めて考えてみてください。その答えを医師に伝えて、手術方針を決めることが大切です。

種類名 内容 向いている人
乳房温存術
(部分切除)
・がんと共に乳房の一部だけを切除し、乳房を残す手術。手術後、再発を防ぐために、残した乳房に対して放射線療法を行う。
・乳房を一部切除するため、どうしても乳房の変形が起こる。
・あまり大きくなく、多発や乳管の中を進展していない場合です。
・変形しても自分の乳房を残したい場合。
乳房切除術
(全摘出)
・がんを含めて乳房を切除する手術。(標準的な手術では、乳輪、乳頭を含め、乳房全体が失われる。)
・インプラント再建する場合は、「皮下乳腺全摘術」(乳房の皮膚・乳輪・乳頭を残して、がんと乳房の中身を切除)を行うと、整容性が最も優れ、傷あとも目立たない。
がんが大きい場合や多発する場合。
乳房再建術 ・乳房切除術後、乳房を再建。乳房の形を維持するのに優れる。
・乳房再建には、自分の体の組織(腹部や背中の皮膚・脂肪・筋肉)を使う「自家再建」と、人工物を利用する「インプラント再建」がある。いずれも保険適用。
乳房の形を重視する場合。
<自家再建>
大掛かりな手術が必要となるため、患者さんの身体的負担は大きくなる。
自分の組織で乳房をつくりたい人
<インプラント再建>
・組織拡張器(エキスパンダー)を胸の筋肉の下に入れ、少しずつ膨らませ、乳房の形をつくる。最終的にシリコン製のインプラントに入れ替える。
・「ラウンド型(丸型)」と「アナトミカル型(しずく型)」がある。
・ラウンド型は、お椀型の乳房の人であれば自然に見えるが、やや垂れた乳房や大きな乳房の人では、不自然に見えることがある。
・アナトミカル型は、やや垂れた乳房や大きな乳房でも自然に見える。
腋下郭清
(えきかかくせい)
・手術時にリンパ節を切除する手術。センチネルリンパ節(がん細胞が最初に運ばれていくリンパ節)に転移がある場合に行う。
・画像検査などでリンパ節転移の有無がはっきりしない場合には、「センチルリンパ節生検」を行って確認する。
また、センチネルリンパ節生検の結果は、その後の治療選択のための重要な情報となる。
わきの下のリンパ節に転移がある場合。

(監修:医療法人湘和会 湘南記念病院 かまくら乳がんセンター長 土井卓子先生)

乳がん関連ページ

乳がんに関する主な公開記事

がん治療(標準治療)の基礎知識 第1回 乳がん

湘南記念病院かまくら乳がんセンター長 土井卓子先生が、乳がん治療の基礎知識を解説しています

がん治療における補完代替医療研究の最前線

金沢大学大学院医学系研究科 臨床研究開発補完代替医療講座特任教授 鈴木信孝先生が、乳がんホルモン療法施行患者におけるシイタケ菌糸体の有用性について総説的に解説されています。

第23回乳癌学会リポート

厳選口演演題を取材し、仕事・余暇を楽しめる 乳がんの新しい薬物治療のあり方について報告しています。