食道がんの治療方針

  • 食道がんはリンパ節転移を起こしやすいので、それを考慮して治療法を選択する。
  • 内視鏡治療の絶対的適応となるのはT1a-EPとT1a-LPM。
  • 手術は化学放射線療法より根治性が優れている。

食道がんはリンパ節に転移しやすいという特徴があります。たとえば、がんが粘膜下層にとどまるT1bのリンパ節転移率(リンパ節転移が起きている確率)は、大腸がんでは約10%、胃がんでは約20%ですが、食道がんでは約50%となっています。このように早い時期からリンパ節転移を起こすため、それを十分に考慮して治療方法を選択する必要があります。

0期のうちT1a-EPとT1a-LPMであれば、リンパ節転移が起きていることはまずありません。そこで、内視鏡を使って粘膜だけ切除する内視鏡治療の絶対的適応となります。T1a-MMでは15%ほどにリンパ節転移が起きているため、治療法の選択が難しくなります。内視鏡治療も可能ですが、リンパ節転移が起きているとがんが進行してしまうため、最初から手術が選択されることもあります。

(図)「O期T1aの進達度分類」

【食道がん】「O期T1aの進達度分類」

Ⅰ期以上の食道がんでは、手術が治療の中心となります。化学療法と放射線療法を併用する化学放射線療法(CRT)もありますが、根治する確率は手術のほうが高くなっています。治療後の生活の質(QOL)は、化学放射線療法のほうが優れていますが、根治的な化学放射線療法を受けた人の約3分の2は、がんが残ったり、再発したりして、追加治療が必要になるというデータがあります。根治的放射線療法を行った後に手術を行うのは、合併症が起こりやすく傷の治りも悪いなど、リスクが高くなります。治療法の長所と短所を知り、よく考えて最初の治療法を選択することが大切です。

進行した食道がんに対しては、手術に化学療法や放射線療法を組み合わせた治療が行われます。リンパ節転移が多い場合には、手術前に化学療法を行ってがんを縮小させ、それから手術する方法が選択されます。また、食道がんが進行して気管や大動脈などに浸潤している可能性がある場合、そのまま手術したのでは、がんを取り切れないことがあります。そこで、まず放射線療法を行ってがんを縮小させ、それから手術を行います。また、手術後に、根治性を高める目的で、放射線療法や化学療法を行うこともあります。

(図) 「食道がんの臨床病期と治療」

食道がんの臨床病期と治療

日本食道学会編「食道癌診断・治療ガイドライン2012年4月版」(金原出版)より一部改変

(監修:順天堂大学医学部附属順天堂医院          
がん治療センターセンター長・特任教授 鶴丸 昌彦先生)

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