皮膚がんの治療――有棘(ゆうきょく)細胞がん

  • 手術では、がんの辺縁(へんえん)から1~2㎝離して切除する
  • 急速に進歩した分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬

離れた臓器への転移がなければ手術が行われます。がんを取り残さないために、がんの辺縁(へんえん)※から距離をとって切除する必要があります。その距離は1~2㎝で、がんの厚さによって判断します。指にできている場合、指は脂肪層が少ないため皮膚と骨が近く、一部を切断しなければならないこともあります。骨に浸潤しているケースもあるからです。そのような場合、多くは関節から先を切断する関節離断術が行われます。切除した部位には、基本的に植皮※が行われます。植皮には、鼠蹊(そけい)部や鎖骨上部から採った皮膚が使われます。

※辺縁:その周りにある部分。
※植皮:他の部位の皮膚を採ってきて貼り付ける方法

リンパ節への転移がなければ、手術は原発巣を切除して終わりです。手術前に画像検査などでリンパ節転移が見つかっていたる場合には、原発巣の切除に加えてリンパ節の切除も行われます。原発巣の手術時にセンチネルリンパ節※生検を行い、その結果、リンパ節転移がある判定された場合には、リンパ節を切除するための手術が改めて行われます。切除するリンパ節は、がんのできている部位によって異なります。足のがんなら鼠蹊部のリンパ節、手のがんなら腋(わき)のリンパ節です。背中のがんだと、腋と鼠蹊部のどちらにも転移することがあります。

※センチネルリンパ節:がんが原発巣から最初に辿り着くリンパ節のこと

悪性黒色腫の治療は手術が基本ですが、機能の温存や整容性を考慮して、手術以外の方法が選択されることもあります。たとえば、目にできた悪性黒色腫は、手術をすれば眼球を摘出することになります。鼻の粘膜や口腔粘膜にできた悪性黒色腫は、手術で切除すると顔の形が変わってしまいます。このような場合には、重粒子線治療や陽子線治療などの放射線療法が優先されることもあります。ただし、これらの治療は必ずしも標準治療ではなく、健康保険は適用されません。

手術後の再発を防ぐための補助療法として、化学療法が行われることがあります。抗がん剤のダカルバジンとインターフェロンを併用するDフェロン療法、インターフェロンを続けて投与するインターフェロン維持療法といった方法があります。

離れた臓器に転移がある場合、それが単発なら放射線療法を行うことがあります。悪性黒色腫は放射線に対して感受性が低いのですが、ガンマナイフ※やトモセラピー※のように、がんを焼き尽くすような治療が行われています。

※ガンマナイフ:放射線の一種ガンマ線を用いて、虫めがねの焦点のように病巣部にのみ照射する治療法M
※トモセラピー:放射線の一種エックス線を用いた、CT撮影装置と放射線照射装置とを一体にした医療機械

離れた臓器に転移がある場合、かつては有効な治療法がありませんでした。ところが最近になって、2つの有効な治療法が登場してきました。1つが分子標的薬による治療、もう1つが免疫チェックポイント阻害薬による治療です。

分子標的薬は、特定の遺伝子変異を持つ悪性黒色腫に効果があります。悪性黒色腫の治療に使われているベムラフェニブとダブラフェニブは、BRAF阻害薬というタイプの薬で、BRAFという遺伝子変異がある悪性黒色腫に効果を発揮します。そのため、まず遺伝子の検査が必要です。がんの組織を検査して、BRAF遺伝子変異が見つかれば、これらの薬を使用することができます。

BRAF遺伝子変異が陽性になる確率は、欧米人に多い表在拡大型では高いのですが、日本人に多い末端黒子型では1~2割と低いことがわかっています。多くの患者さんが、この治療の対象とならないのです。この2つの薬以外に、トラメチニブという分子標的薬があります。この薬はダブラフェニブと併用することで有効性を発揮します。

分子標的薬は、使用できた場合には非常によく効きます。短期間のうちにがんが縮小したり、肉眼的に消えてしまったりすることもあります。しかし、その効果はいつまでも続かず、多くは半年から1年ほどで耐性ができ、再びがんが増殖してしまいます。

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫の力を利用する薬です。免疫細胞は、体内のがん細胞を攻撃して死滅させる力を持っていますが、がん細胞はその攻撃を逃れる仕組みを持っています。その仕組みを働かなくさせることで、本来の免疫の力でがんを攻撃させるのが、免疫チェックポイント阻害薬です。現在、日本で悪性黒色腫の治療に使用できる免疫チェックポイント阻害薬は、ニボルマブ、イピリムマブ、ペンブロリズマブの3種類です。これらは、分子標的薬と違い、根治不能な悪性黒色腫であれば誰でも使用できます。

免疫チェックポイント阻害薬も非常によく効きますが、分子標的薬の効き方とは異なっています。がんが急速に縮小したり、消えてしまったりすることは少ないのです。しかし、がんの進行を抑えることが多く、悪くならずに維持するのにはよい薬です。

離れた臓器に転移があり、根治的な手術ができない悪性黒色腫では、まずBRAF遺伝子変異を調べ、陽性なら分子標的薬を使用します。そして、それが効かなくなる前に、免疫チェックポイント阻害薬に切り替えることが推奨されています。

(表) 「悪性黒色腫の厚さに応じた切除マージン」

がんの厚さ 切除マージン
1.0mm以下 1cm
1.01~2.0mm 1~2cm
2.01~4.0mm 2cm
4mmを超える 2cm

参考・皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版

(表) 「悪性黒色腫の治療で用いられる主な薬剤」

がんの種類 治療目的 薬剤名(一般名) 薬の種類
悪性黒色腫(メラノーマ) 手術後の再発予防 ダカルバジン 抗がん剤
インターフェロン
遠隔転移ある場合の治療 ベムラフェニブ 分子標的薬剤
ダブラフェニブ
トラメチニブ
ニボルマブ 免疫チェックポイント阻害剤
イピリムマブ
ペンブロリズマブ

(監修:木沢記念病院皮膚科          
皮膚がんセンター部長 神谷秀喜 先生)

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