皮膚がんとは

  • 皮膚がんには多くの種類があり、表皮のどの細胞が悪性化したのかによる。
  • 皮膚がんを発症しても、それによって死亡する人は多くはない。

皮膚を構成する細胞が悪性化したものを「皮膚がん」と総称しています。皮膚は外側から、表皮、真皮、皮下組織という部分に分かれています。そして、表皮はさらに、角質層、顆粒層、有棘(ゆうきょく)層、基底層に分かれています。皮膚がんの多くは、表皮の細胞から発生し、増殖していきます。皮膚のどの細胞が悪性化して発生したかによって、皮膚がんにはいろいろな種類があります。

主なものは、悪性黒色腫(メラノーマ)、有棘細胞がん、基底細胞がん、乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病の4つです。ここでは、この4種類の皮膚がんについて解説していきます。それぞれのがんの発生割合は、悪性黒色腫が2割程度、有棘細胞がんが3割程度、基底細胞がんが3割程度、乳房外パジェット病とその他の皮膚がんが2割程度です。

国立がん研究センターの「最新がん統計」によれば、皮膚がんの年間の罹患数(その年に新たに皮膚がんと診断された人数)は、男性が9160人、女性が8501人で、計1万7661人となっています。人口10万人あたり1年間に何人が皮膚がんと診断されるかを示す部位別がん罹患率は、男性が14.8人、女性が13.0人です(2012年部位別がん罹患数全国推計値)。

皮膚がんによる年間の死亡数は、男性が797人、女性が860人で、計1657人です。人口10万人あたり1年間に何人が皮膚がんで死亡するかを示す部位別がん死亡率は、男性が1.3人、女性が1.3人です(2014年部位別がん死亡数)。

皮膚がんの5年相対生存率(皮膚がんと診断された人のうち、5年後に生存している人の割合が、日本全体で5年後に生存している人に割合に比べ、どの程度かを表す)は、男性で92.2%、女性で92.5%でした(2006~2008年診断例)。他の多くのがんに比べ、非常に高い5年相対生存率となっています。

(図) 「皮膚を構成する組織」

「皮膚を構成する組織 その1」

「皮膚を構成する組織 その2」

悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫は、表皮に存在するメラノサイトという色素細胞が、がん化することで発生します。メラノサイトは皮膚の色に関係するメラニンという色素を作る細胞です。基本的には皮膚に発生するがんですが、口腔粘膜や鼻粘膜など、粘膜にできることもあります。

悪性黒色腫には、表在拡大型、末端黒子型、悪性黒子型、結節型という4つのタイプがあり、日本人と欧米人では、できやすいタイプが違っています。

日本人に多いのは末端黒子型で、手や足などによくできます。爪にできることもあります。高齢者に多いのですが、若年者にも発症するのが特徴です。

欧米人に多いのは表在拡大型で、これは主に体幹部にできます。日光に当たらない部位にできるため、このタイプの発生には紫外線が関係していないと考えられています。

悪性黒色腫は、ほくろと見分けがつきにくいことが多いので、中年以降に露出部の皮膚に黒いしみができた場合には、自己判断せずに皮膚科を受診すべきです。

悪性黒色腫は表皮で発生しますが、増殖して真皮に入り込むと転移が起きるようになります。真皮にはリンパ管や血管が通っているため、そこからがん細胞が流れて行ってしまうのです。悪性黒色腫の転移は、約8割はリンパ行性転移※で、血行性転移は2割程度です。

※リンパ行性転移:リンパ液の流れにのって起こる転移

有棘(ゆうきょく)細胞がん

有棘細胞がんは、表皮の有棘層を構成している細胞が悪性化したものです。細胞が傷つけられることが原因となることがよくあります。そのため、やけど、外傷、放射線照射による炎症など、皮膚の細胞が傷つけられた部位から発生することが多いのが特徴です。因果関係がはっきりしていることが多いがんなのです。やけどやけがをした後、30年も40年もたってから出てくることもよくあります。このがんには、特徴的な症状はありません。結節※ができることもあれば、潰瘍化※することもあります。

※結節:皮膚や臓器組織にエンドウ豆・クルミ程度の大きさでできる隆起物
※潰瘍化:皮膚上または臓器表面上に欠損部が形成されること

基底細胞がん

基底細胞がんは、表皮の基底層の細胞ががん化したものではありません。がん細胞が基底細胞に似ているため、基底細胞がんと呼ばれています。黒光りしたような小さな結節を作るため、最もほくろと間違われやすい皮膚がんです。大きくなると表面が崩れて潰瘍化することがあります。

基底細胞がんは、できている部位と大きさから、高リスクと低リスクに分類されます。大部分が低リスクです。低リスクの場合、局所で大きくなることはありますが、転移することはほとんどありません。そのため、このがんで死亡する人はほとんどいません。

乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病

乳頭部に発症する乳房パジェット病と、それ以外の部位にできる乳房外パジェット病があります。この2つはまったく別の病気で、乳房パジェット病は乳がんの一種、乳房外パジェット病は皮膚がんの一種です。

乳房外パジェット病が発症するのは、アポクリン腺の多い部位で、腋(わき)、陰部、肛門周囲などです。それ以外の部位にできることもありますが、ごくまれです。基本的にはアポクリン腺のある部位で発生し、表皮内で増殖します。それが進行し、基底膜を越えて真皮に入ると、主にリンパ液の流れに乗って転移していきます。血行性の転移は少なく、8割以上がリンパ行性転移です。

現れる症状は、湿疹や真菌症とまぎらわしい皮膚症状で、赤くてカサカサした感じになります。色素沈着する場合と色素が抜ける場合があります。進行すると、結節や腫瘤※を呈する部分が現れてきます。また、かゆみがあります。

※腫瘤:いわゆる「はれ」「こぶ」の総称

(監修:木沢記念病院皮膚科          
皮膚がんセンター部長 神谷秀喜 先生)

皮膚がん関連ページ

皮膚がんに関する主な公開記事

がん治療(標準治療)の基礎知識 治療の流れを理解し、より適切な治療を受けるために 第18回 皮膚がん

皮膚がん(悪性黒色腫、有棘細胞がん、基底細胞がん、乳房外パジェット病) 治療の基礎知識について、木沢記念病院皮膚科・皮膚がんセンター部長の神谷秀喜先生に解説していただきました。

第52回日本癌治療学会学術集会レポート がん治療の効果を高める「免疫抑制の解除」の最前線

免疫力を高める方法が変わる,世界的に注目を集める話題を取材。最新医薬品開発から患者にやさしい方法まで。

第19回日本補完代替医療学会学術集会レポート 免疫やがん領域に関わるキノコの菌糸体や発酵成分の発表が注目を集める

免疫の状態をよくすることでがんの闘病を支える。補完代替医療の特別講演を取材レポート。