(監修:木沢記念病院皮膚科          
皮膚がんセンター部長 神谷秀喜 先生)

1.皮膚がんとは

1-1.皮膚がんとは

  • 皮膚がんには多くの種類があり、表皮のどの細胞が悪性化したのかによる。
  • 皮膚がんを発症しても、それによって死亡する人は多くはない。

皮膚を構成する細胞が悪性化したものを「皮膚がん」と総称しています。皮膚は外側から、表皮、真皮、皮下組織という部分に分かれています。そして、表皮はさらに、角質層、顆粒層、有棘(ゆうきょく)層、基底層に分かれています。皮膚がんの多くは、表皮の細胞から発生し、増殖していきます。皮膚のどの細胞が悪性化して発生したかによって、皮膚がんにはいろいろな種類があります。

主なものは、悪性黒色腫(メラノーマ)、有棘細胞がん、基底細胞がん、乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病の4つです。ここでは、この4種類の皮膚がんについて解説していきます。それぞれのがんの発生割合は、悪性黒色腫が2割程度、有棘細胞がんが3割程度、基底細胞がんが3割程度、乳房外パジェット病とその他の皮膚がんが2割程度です。

国立がん研究センターの「最新がん統計」によれば、皮膚がんの年間の罹患数(その年に新たに皮膚がんと診断された人数)は、男性が9160人、女性が8501人で、計1万7661人となっています。人口10万人あたり1年間に何人が皮膚がんと診断されるかを示す部位別がん罹患率は、男性が14.8人、女性が13.0人です(2012年部位別がん罹患数全国推計値)。

皮膚がんによる年間の死亡数は、男性が797人、女性が860人で、計1657人です。人口10万人あたり1年間に何人が皮膚がんで死亡するかを示す部位別がん死亡率は、男性が1.3人、女性が1.3人です(2014年部位別がん死亡数)。

皮膚がんの5年相対生存率(皮膚がんと診断された人のうち、5年後に生存している人の割合が、日本全体で5年後に生存している人に割合に比べ、どの程度かを表す)は、男性で92.2%、女性で92.5%でした(2006~2008年診断例)。他の多くのがんに比べ、非常に高い5年相対生存率となっています。

(図) 「皮膚を構成する組織」

「皮膚を構成する組織 その1」

「皮膚を構成する組織 その2」

悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫は、表皮に存在するメラノサイトという色素細胞が、がん化することで発生します。メラノサイトは皮膚の色に関係するメラニンという色素を作る細胞です。基本的には皮膚に発生するがんですが、口腔粘膜や鼻粘膜など、粘膜にできることもあります。

悪性黒色腫には、表在拡大型、末端黒子型、悪性黒子型、結節型という4つのタイプがあり、日本人と欧米人では、できやすいタイプが違っています。

日本人に多いのは末端黒子型で、手や足などによくできます。爪にできることもあります。高齢者に多いのですが、若年者にも発症するのが特徴です。

欧米人に多いのは表在拡大型で、これは主に体幹部にできます。日光に当たらない部位にできるため、このタイプの発生には紫外線が関係していないと考えられています。

悪性黒色腫は、ほくろと見分けがつきにくいことが多いので、中年以降に露出部の皮膚に黒いしみができた場合には、自己判断せずに皮膚科を受診すべきです。

悪性黒色腫は表皮で発生しますが、増殖して真皮に入り込むと転移が起きるようになります。真皮にはリンパ管や血管が通っているため、そこからがん細胞が流れて行ってしまうのです。悪性黒色腫の転移は、約8割はリンパ行性転移※で、血行性転移は2割程度です。

※リンパ行性転移:リンパ液の流れにのって起こる転移

有棘(ゆうきょく)細胞がん

有棘細胞がんは、表皮の有棘層を構成している細胞が悪性化したものです。細胞が傷つけられることが原因となることがよくあります。そのため、やけど、外傷、放射線照射による炎症など、皮膚の細胞が傷つけられた部位から発生することが多いのが特徴です。因果関係がはっきりしていることが多いがんなのです。やけどやけがをした後、30年も40年もたってから出てくることもよくあります。このがんには、特徴的な症状はありません。結節※ができることもあれば、潰瘍化※することもあります。

※結節:皮膚や臓器組織にエンドウ豆・クルミ程度の大きさでできる隆起物
※潰瘍化:皮膚上または臓器表面上に欠損部が形成されること

基底細胞がん

基底細胞がんは、表皮の基底層の細胞ががん化したものではありません。がん細胞が基底細胞に似ているため、基底細胞がんと呼ばれています。黒光りしたような小さな結節を作るため、最もほくろと間違われやすい皮膚がんです。大きくなると表面が崩れて潰瘍化することがあります。

基底細胞がんは、できている部位と大きさから、高リスクと低リスクに分類されます。大部分が低リスクです。低リスクの場合、局所で大きくなることはありますが、転移することはほとんどありません。そのため、このがんで死亡する人はほとんどいません。

乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病

乳頭部に発症する乳房パジェット病と、それ以外の部位にできる乳房外パジェット病があります。この2つはまったく別の病気で、乳房パジェット病は乳がんの一種、乳房外パジェット病は皮膚がんの一種です。

乳房外パジェット病が発症するのは、アポクリン腺の多い部位で、腋(わき)、陰部、肛門周囲などです。それ以外の部位にできることもありますが、ごくまれです。基本的にはアポクリン腺のある部位で発生し、表皮内で増殖します。それが進行し、基底膜を越えて真皮に入ると、主にリンパ液の流れに乗って転移していきます。血行性の転移は少なく、8割以上がリンパ行性転移です。

現れる症状は、湿疹や真菌症とまぎらわしい皮膚症状で、赤くてカサカサした感じになります。色素沈着する場合と色素が抜ける場合があります。進行すると、結節や腫瘤※を呈する部分が現れてきます。また、かゆみがあります。

※腫瘤:いわゆる「はれ」「こぶ」の総称

1-2.皮膚がんの検査と診断

  • 悪性黒色腫や基底細胞がんの診断にはダーモスコピー検査が大切。
  • 確定診断のために生検が必要になる場合がある。
  • 悪性黒色腫ではセンチネルリンパ節生検が行われることがある。

悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫が疑われる場合に、まず行われる検査はダーモスコピー検査です。皮膚に超音波検査のときに用いるゼリーを塗り、特殊な皮膚用の拡大鏡を押し付けるようにして患部を観察します。10倍くらいに拡大できるのに加え、表皮の中の構造まである程度見ることができます。メラニンも見えますし、血管があればその状態までわかります。それによって、悪性黒色腫かどうかをほぼ判定することができます。

ダーモスコピー検査ではっきりしない場合には、生検が行われます。組織の一部を採取し、それを顕微鏡で調べる病理検査を行うのです。局所の麻酔をした後、パンチバイオプシーという患部を小さくくり抜く機械を使用し、組織を採取します。直径4㎜程度あれば十分に調べることができます。悪性黒色腫は生検のために腫瘍に切り込むと、転移を誘発すると言われてきました。しかし現在では、生検を行って悪性黒色腫と診断がついた場合でも、1ヵ月以内に手術をすれば問題ないことが明らかになっています。悪性黒色腫である可能性が高い場合には、手術の予定を組んでおいてから生検を行います。生検をしてはいけないケースはほぼありません。

がんと診断がついた場合は、進行の程度を調べる必要があります。それを知るために、がんの厚さを調べます。生検を行うときに、できるだけ深くまで達していそうな部分を採取します。しかし、全体を調べないとわからないこともよくあります。

転移している可能性がある場合には、CT検査、PET検査を行い、転移があるかどうかを調べます。リンパ節や離れた臓器に転移巣が見つかることがあります。ただし、これらの画像検査で転移巣が見つからなくても、微小ながんが転移している可能性はあります。

それを見逃さないために、センチネルリンパ節生検が行われます。がんが原発巣からリンパ流に乗って出ていくとき、最初にたどり着くリンパ節をセンチネルリンパ節といいます。手術時にこのリンパ節を探し出して採取し、病理検査を行います。ここに転移がなければ、転移の可能性は低いと判断できるのです。センチネルリンパ節を特定するため、手術前日に放射性同位元素を原発巣周囲に注入し、手術時には色素を注入します。これらがどこに流れていくかを調べることで、センチネルリンパ節を特定するのです。採取したリンパ節の病理検査に数日を要するため、検査結果は手術後に明らかになります。

有棘(ゆうきょく)細胞がん

有棘細胞がんは潰瘍化※したり、表面が崩れたりしている場合は、ダーモスコピー検査は行いません。肉眼で観察し、すぐに生検が行われます。それによって診断を確定します。リンパ節転移や遠隔転移を調べるために、CT検査やMRIなどの画像検査を行うことがあります。

※潰瘍化:皮膚表面が炎症を起こしてできた傷が深くえぐれたような状態

基底細胞がん

基底細胞がんの検査で重要なのは、ダーモスコピー検査です。表皮内のメラニンの状態を見ることができ、悪性黒色腫との鑑別が可能です。ダーモスコピー検査で基底細胞がんと診断がつけば、生検を行わずにすみます。ダーモスコピー検査ではっきりしない場合のみ、生検を行います。ダーモスコピー検査が行われるようになる前は、基底細胞がんの全例で生検が行われていましたが、現在は生検を行うほうが少なくなっているほどです。

乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病

乳房外パジェット病では、ダーモスコピー検査を行っても、あまりよくわかりません。乳房外パジェット病であると診断するためには、生検が行われます。

(表) 「皮膚がんの主な検査」

検査の目的 検査名 検査のやり方 検査でわかること
がんの診断を下す ダーモスコピー検査 皮膚にゼリーを塗り、特殊な皮膚用拡大鏡を押し付けるようにして、皮膚の様子を観察する。 悪性黒色腫や基底細胞がんでは、がんであるかどうかの診断に役立つ。
生検 患部の組織を採取し、それを顕微鏡で観察する。 がんであるかどうか、どの種類の皮膚がんであるかがわかる。
がんの広がりを調べる CT(コンピュータ断層撮影)検査 X線を利用して体内を断層画像として描き出す。 転移や浸潤の有無や程度がわかる。
MRI(磁気共鳴画像)検査 磁気を利用して体内を断層画像として描き出す。 転移や浸潤の有無や程度がわかる。
センチネルリンパ節生検 手術前日に放射性同位元素を、当日に色素を、原発巣周囲に注入し、それが最初に流れていくリンパ節(センチネルリンパ節)に、転移が起きているかどうかを調べる。 センチネルリンパ節に転移がなければ、転移の可能性が低いと判定できる。悪性黒色腫に対して行われることがある。

1-3.皮膚がんの状態を理解するための基礎知識

患者さんが本当に納得できる治療を受けるためには、治療法の大きな流れと診断のポイント、ご自身の体の状態について、しっかり理解しておくことが大切です。そのうえで、ご自身がこれからどのように生きたいかを考え、医師とよいコミュニケーションをとりながら、治療法を選んでください。

次のような点についてチェックすると、現状の把握や今後の治療法の検討に便利です。

(表)「悪性黒色腫(メラノーマ)のチェックリスト」

チェック項目 それを知る意義
がんの厚さ 病期分類や治療法の選択に必要。
潰瘍の有無
リンパ節転移の有無と程度
遠隔転移の有無
BRAF遺伝子変異の有無

(表)「有棘(ゆうきょく)細胞がんのチェックリスト」

チェック項目 それを知る意義
がんの大きさ 病期分類や治療法の選択に必要。
浸潤の程度
リンパ節転移の有無と程度
遠隔転移の有無

(表)「基底細胞がんのチェックリスト」

チェック項目 それを知る意義
がんのできている部位 病期分類や治療法の選択に必要。
がんの大きさ
浸潤の程度
リンパ節転移の有無と程度
遠隔転移の有無

(表)「乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病のチェックリスト」

チェック項目 それを知る意義
リンパ節転移の有無と程度 治療法の選択に必要。
遠隔転移の有無

1-4.皮膚がんの進行度

  • 悪性黒色腫(メラノーマ)では原発巣の厚さやがんの広がりで病期が決まる。
  • 有棘(ゆうきょく)細胞がん、基底細胞がんでは腫瘍の大きさと広がりが重要。

悪性黒色腫

原発巣のみの場合、潰瘍なしなら、がんの厚さ2㎜以下がⅠ期、2㎜を超えている場合がⅡ期です。潰瘍※ありなら、がんの厚さ1㎜以下がⅠ期、1㎜を超えている場合がⅡ期です。リンパ節転移がある場合がⅢ期、遠隔臓器への転移がある場合がⅣ期です。

※潰瘍化:皮膚表面が炎症を起こしてできた傷が深くえぐれたような状態

(表) 「悪性黒色腫の病期分類」

厚さ・潰瘍→
部位・転移↓
がんの厚さ 潰瘍なし 潰瘍あり
がんは原発巣のみ 1㎜以下 ⅠA ⅠB
1㎜を超えているが2㎜以下 ⅠB ⅡA
2㎜を超えているが4㎜以下 ⅡA ⅡB
4㎜を超えている ⅡB ⅡC
1個のリンパ節転移がある
2~3個のリンパ節転移または、リンパ節転移を伴わない皮膚や皮下の転移がある
4個以上のリンパ節転移または、リンパ節転移を伴う皮膚や皮下の転移がある
別の臓器へ転移している Ⅳ期

0期:上皮内がん

日本皮膚悪性腫瘍取扱い規約 2010年8月(第2版)(金原出版)より作成

有棘(ゆうきょく)細胞がん

がんが2㎝以下で、真皮から皮下組織までにとどまっていればⅠ期。2㎝を超えているが、真皮から皮下組織までにとどまっている場合はⅡ期です。がんの大きさに関わらず、がんの深さが皮下組織を超えている場合、あるいは所属リンパ節(首・わきの下・脚の付け根のリンパ節)に転移している場合はⅢ期です。6㎝以上のリンパ節転移があるか、所属リンパ節を超えて遠隔転移をしている場合がⅣ期です。

(表) 「有棘細胞がんの病期分類」

0期 悪性化した細胞(がん細胞)は出現しているものの表皮の中にとどまっている。この時期を表皮内がんと呼ぶが、これはがんの一歩手前の状態。本物のがんではない。
Ⅰ期 腫瘍の大きさが2㎝以下で、真皮だけ、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。
Ⅱ期 腫瘍の大きさは2㎝を越えているが、真皮、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。
Ⅲ期 腫瘍の大きさにかかわらず、腫瘍の深さが皮下組織を越えて、さらに深い筋肉、軟骨、骨などにおよんでいる。
または腫瘍の大きさにかかわらず、所属リンパ節と呼ばれる首、わきの下、太もものつけ根のリンパ節に転移がある。
(注:同時にいくつもの腫瘍が発生している場合は、その中の最も進行した状態のものを代表と考えて病期分類を行う。)
Ⅳ期 最大径が6㎝以上のリンパ節転移がある。
または所属リンパ節を越えて遠隔転移をしている。

基底細胞がん

がんが2㎝以下で、真皮から皮下組織までにとどまっていればⅠ期。2㎝を超えているが、真皮から皮下組織までにとどまっている場合はⅡ期です。がんの大きさに関わらず、がんの深さが皮下組織を超えている場合、あるいは所属リンパ節(首・わきの下・脚の付け根のリンパ節)に転移している場合はⅢ期です。所属リンパ節を超えて遠隔転移をしている場合がⅣ期です。

(表) 「基底細胞がんの病期分類」

0期 悪性化した細胞(がん細胞)は出現しているものの表皮の中にとどまっている。この時期を表皮内がんと呼ぶが、これはがんの一歩手前の状態。本物のがんではない。
Ⅰ期 腫瘍の大きさが2㎝以下で、真皮だけ、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。
Ⅱ期 腫瘍の大きさは2㎝を超えているが、真皮、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。
Ⅲ期 腫瘍の大きさにかかわらず、腫瘍の深さが皮下組織を越えて、さらに深い筋肉、軟骨、骨などにおよんでいる。
または腫瘍の大きさにかかわらず、所属リンパ節と呼ばれる首、わきの下、太もものつけ根のリンパ節に転移がある。
(注:同時にいくつもの腫瘍が発生している場合は、その中の最も進行した状態のものを代表と考えて病期分類を行う。)
Ⅳ期 所属リンパ節を越えて遠隔転移(内臓に転移)をしている。

乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病

病期分類に関しては、確立したものはありません。

1-5.皮膚がんの再発

  • 手術などでがんを取り除いても再発が起きることがある。
  • 再発は局所に起きることも離れた部位に起きることもある。

皮膚がんは、手術などで取り除くことができても、その後に再発することがあります。がんを取り除けたように見えても、肉眼では見えないがんが残っていることがあります。それが時間の経過とともに増殖してくることで再発が起こるのです。再発はがんがあった周囲の組織に起こることもありますし、リンパ節や離れた臓器への転移という形で現れてくることもあります。ただし、基底細胞がんで低リスクの場合は、転移することはほとんどないので、局所のがんを取り除けば、再発することはほとんどありません。


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