がん治療(標準治療)の基礎知識
治療の流れを理解し、より適切な治療を受けるために
第15回 頭頸部がん(鼻腔・副鼻腔がん、、唾液腺がん)

田原 信 国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院頭頸部内科長

1968年広島県に生まれる。1996年広島大学医学部卒業。医学博士。国立研究開発法人国立がん研究センター東病院頭頸部内科長。日本で数少ない頭頸部がんの薬物療法に精通した医師。患者の価値観(希望)や治療後のQOL(生活の質)を重視したうえで、科学的根拠に基づいた最適な治療の提供を目指す。頭頸部がんの治療成績向上を目指して臨床試験を立案し、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)、がん臨床研究支援事業( CSPOR ) などで、多施設共同臨床試験を活発に行っている。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、指導医。日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本内科学会認定内科医。
頭頸部がん(鼻腔・副鼻腔がん、喉頭がん、口腔がん、唾液腺がん)治療の基礎知識について、国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院頭頸部内科長 田原 信先生に解説していただきました。

頭頸部がんには多くの種類のがんが含まれる

頭頸部がん(とうけいぶがん)とは、一般的に脳の下側から喉までの範囲にできたがんを指します。耳鼻咽喉科が治療対象とする範囲のがんです。

頭頸部がんという1種類のがんがあるのではなく、鼻腔・副鼻腔がん、口腔がん、喉頭がん、咽頭がん、唾液腺がん、甲状腺がんなどを総称して頭頸部がんと呼んでいます。

発生した部位が近いというだけで、これらのがんはまったく別の病気です。したがって、がんの性質も違いますし、治療法も異なっています。

、膵臓がんなどを、消化器がんとまとめることはできますが、その治療法はそれぞれのがんでまったく異なっています。頭頸部がんについても、それぞれのがんについて解説する必要があります。

頭頸部がんは、日本では患者数は決して多くありませんが、世界的に6~7番目に多いがんとされています。地域によって発生頻度が大きく異なり、インド、パキスタン、台湾などでは、男性で最も多いがんが頭頸部がんとなっています。

男性も女性もなりますが、男性に多いのが特徴です。これは、男性に喫煙者が多いためと考えられています。口腔がん、喉頭がん、咽頭がんなどが代表的ですが、喫煙は頭頸部がんの重要な原因となっています。また、多量飲酒も頭頸部がんの発生に大きく関わっています。

がんは基本的に高齢者に多い病気で、頭頸部がんも高齢者に多いのですが、若い人に発生することもあります。頭頸部がんが発生する部位は、目、鼻、口、舌、耳、喉などから近いため、治療が難しくなります。これらの器官の機能を失うことになれば、生活の質が大幅に低下してしまうからです。根治性を低下させず、できるだけ機能も温存する治療法が求められることになります。また、顔の周辺にできるがんなので、治療に際しては整容性* も求められます。

次に、それぞれのがんについて解説していきます。今回は、鼻腔・副鼻腔がん、喉頭がん、口腔がん、唾液腺がんについてです(「甲状腺がんの標準治療」については前号で、「咽頭がん」については次号で紹介)。
*整容性:姿・形を整えること。

鼻腔・副鼻腔がん

大きくなるまで気づかれないことが多い

鼻腔や副鼻腔の粘膜から発生するがんです。がんができても、なかなか気づかれません。鼻がつまるような症状が出ることがありますが、日常的によく起こる症状なので、それをがんによる症状だとは思わない人が多いのです。

鼻腔には「鼻たけ」と呼ばれるポリープができることがありますが、これと間違われることもあります。耳鼻科医が診察しても、がんを専門としていない医師の場合には、がんを鼻たけと診断していることがあるくらいです。

副鼻腔には、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(し こつどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、蝶形洞(ちょうけいどう)があります。副鼻腔がんはどこにでも発生しますが、最も多いのは上顎洞です。上顎洞は、上顎から目の下あたりにある空洞で、鼻腔につながっています。大きな空洞なので、がんがかなり大きくならないと気づかれません。また、副鼻腔炎がある人は、いつも詰まっているので、がんに気づくのが遅くなりがちです。

鼻腔・副鼻腔がんの疑いがある場合には、鼻鏡(びきょう)や内視鏡を使って鼻腔内を観察します。確定診断のためには、組織の一部を切除して生検が行われます。

CT検査などの画像検査も大切です。CT検査を行うことで腫瘍と骨の関係が明らかになります。どこまで進展しているかを調べるのにも、リンパ節転移や遠隔転移を見つけるのにも役立ちます。

表1に示すのは鼻腔・副鼻腔がん()の病期分類です。

表1 鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がん)の病期
[T分類]
TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内がん
T1 上顎洞粘膜に限局する腫瘍、骨吸収または骨破壊を認めない
T2 骨呼吸または骨破壊のある腫瘍、硬口蓋および/または中鼻道に進展する腫瘍を含むが、上顎洞後壁および翼状突起に進展する腫瘍を除く
T3 上顎洞後壁の骨、皮下組織、眼窩底または眼窩内側壁、翼突窩、篩骨洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4a 眼窩内容前部、頬部皮膚、翼状突起、側頭下窩、篩板、蝶形洞、前頭洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4b 眼窩尖端、硬膜、脳、中頭蓋窩、三叉神経第二枝以外の脳神経、上咽頭、斜台のいずれかに浸潤する腫瘍
[N 分類]
NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝をこえるが
6㎝以下
N2b 同側の単発性リンパ節転移で最大径が6㎝以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6㎝以下
N3 最大径が6㎝をこえるリンパ節転移
注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

表1 鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がん)の病期
[M 分類]
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり
[病期分類]
0 期Tis N0 M0
Ⅰ期T1 N0 M0
Ⅱ期T2 N0 M0
Ⅲ期T1 / 2 N1 M0
T3 N0 / 1 M0
Ⅳ A 期T1 / 2 / 3 N2 M0
T4a N0 / 1 / 2 M0
Ⅳ B 期T4b N に関係なくM0
T に関係なくN3 M0
Ⅳ C 期T、N に関係なくM1
『頭頸部癌診療ガイドライン』2013 年版、日本頭頸部癌学会編(金原出版刊)を参考に編集部にて作成。以下、同。

放射線療法、手術、化学療法を組み合わせる

鼻腔・副鼻腔がんの治療では、機能面と整容性に配慮した治療が必要になります。そのため、手術も行われますが、放射線療法や化学療法を組み合わせることで、なるべく機能や整容性を残す治療が行われます。

たとえば、上顎洞がんでは、眼球近くまでがんが浸潤していることがあります。そのような場合でも、できるだけ眼球を温存する治療が行われます。ただ、眼球に浸潤しているなど、どうしても眼球を温存できないケースもあります。

上顎洞がんの放射線治療は、60~70Gy/30~35回/6~7週が一般的で、手術、化学療法と併用されることが多いです。十分な減量が可能な症例では放射線治療の併用により良好な局所制御が期待できます。晩期毒性軽減のために強度変調放射線治療(intensitymodulatedradiotherapy:IMRT )なども行われます。

また、根治切除が困難な鼻腔・副鼻腔がんに対して粒子線治療(陽子線治療ならびに炭素イオン線治療)は、IMRTなどの線量集中制の高い照射法とともに治療選択肢となり得ます。特にX線による放射線治療では根治線量が照射できない場合にも、粒子線治療は有効な治療選択肢です。当院でも鼻腔・副鼻腔がんに対し陽子線治療(+ 化学療法)を行い良好な成績を収めており、粒子線治療は有用な治療選択肢と考えられます。

化学療法も行われます。導入化学療法が行われることもあります。根治的な放射線治療の前に化学療法を行うのです。

導入化学療法によって、がんを小さくすることができると、放射線治療の際に、正常組織にかかる放射線量を減らすことができます。これが導入化学療法を行う目的です。導入化学療法でどの程度がんが小さくなるかは、かなり個人差があります。

化学療法で使用されるのは、シスプラチン、タキサン系抗がん剤、5FUの併用です。さらに、分子標的薬のセツキシマブが使われることもあります(図1)。

図1 鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がん)の治療アルゴリズム

喉頭がん

声がかれるので比較的早期に発見されやすい

喉頭とは喉の奥の「のどぼとけ」に囲まれた部分で、気管につながっています。喉頭の内側は粘膜でおおわれていて、喉頭がんはこの粘膜から発生します。

喉頭には声帯があり、これが振動することで声が出ます。また、食べ物などを飲み込むときには、喉こうとうがい頭蓋という蓋を閉じることで、食べ物などが気管に入らないようにしています。

頭頸部がんは男性に多いのですが、なかでも喉頭がんは男性に多い傾向があります。喫煙が重要な危険因子となっているので、喫煙者の多い男性の発生率が高くなるのです。

喉頭がんになると、多くの場合、声がかすれるので、割と早く気づきます。ただ、喫煙者のなかには、声がかすれるのをタバコのせいだと考え、受診が遅れてしまうことがあります。

喉頭がんが疑われる場合、まず喉頭鏡を用いた視診が行われます。これでがんが見つかることもあります。

喉頭用の内視鏡を使用すると、ライトに照らし出された内部をモニターに映し出せるため、喉頭の奥まで観察することができます。

確定診断のためには、内視鏡を使って組織の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検が必要です。

がんの広がりや転移を調べるためには、画像検査が行われます。頸部の超音波検査の他、CT検査やMRI検査が行われることもあります(表2)。

表2 喉頭がんの病期
[T分類]
TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内がん
声門がん
T1 声帯運動が正常で、(一側)声帯に限局する腫瘍(前または後連合に達してもよい)
T1a 一側声帯に限局する腫瘍
T1b 両側声帯に浸潤する腫瘍
T2 声門上部、および/または声門下部に進展するもの、および/または声帯運動の制限を伴う腫瘍
T3 声帯が固定し喉頭内に限局する腫瘍、および/または傍声帯間隙および/または甲状軟骨の内側に浸潤する腫瘍
T4a 甲状軟骨の外側を破って浸潤する腫瘍、および/または喉頭外、すなわち気官、舌深層の筋肉/外
舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋、口蓋舌筋、茎突舌筋)を含む頸部軟部組織、前頸筋群、甲状腺、
食道に浸潤する腫瘍
T4b 椎前間隙、縦隔に浸潤する腫瘍、および/または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

表2 喉頭がんの病期
[T分類]
声門上がん
T1 声帯運動が正常で、声門上部の1 亜部位に限局する腫瘍
T2 咽頭の固定がなく、声門上部の他の亜部位、声門または声門上部の外側域(たとえば舌根粘膜、咽頭蓋谷、梨状陥凹の内壁など)の粘膜に浸潤する腫瘍
T3 声帯が固定し喉頭に限局するもの、および/または輪状後部、咽頭蓋前間隙に浸潤する腫瘍、傍声
帯間隙浸潤、および/または甲状軟骨の内側に浸潤する腫瘍
T4a 甲状軟骨を破って浸潤する腫瘍、および/または喉頭外、すなわち気管、舌深層の筋肉/外舌筋(オ
トガイ舌筋、舌骨舌筋、口蓋舌筋、茎突舌筋)を含む頸部軟部組織、前頸筋群、甲状腺、食道に浸潤する腫瘍
T4b 椎前間隙、縦隔に浸潤する腫瘍、および/または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍声門下がん
T1 声門下部に限局する腫瘍
T2 声門に進展し、その運動が正常か制限されている
腫瘍
T3 声帯が固定し、喉頭内に限局する腫瘍
T4a 輪状軟骨あるいは甲状軟骨に浸潤する腫瘍、および/または喉頭外、すなわち気管、舌深層の筋肉
/外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋、口蓋舌筋、茎突舌筋)を含む頸部軟部組織、前頸筋群、甲状腺、食道に浸潤する腫瘍
T4b 椎前間隙、縦隔に浸潤する腫瘍、および/または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍
[N 分類]
NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝をこえるが6㎝以下
N2b 同側の単発性リンパ節転移で最大径が6㎝以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6㎝
以下
N3 最大径が6㎝をこえるリンパ節転移
注:正中リンパ節は同側リンパ節である。
[M 分類]
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり
[病期分類]
0 期Tis N0 M0
Ⅰ期T1 N0 M0
Ⅱ期T2 N0 M0
Ⅲ期T1 / 2 N1 M0
T3 N0 / 1 M0
Ⅳ A 期T1 / 2 / 3 N2 M0
T4a N0 / 1 / 2 M0
Ⅳ B 期T4b N に関係なくM0
T に関係なくN3 M0
Ⅳ C 期T、N に関係なくM1

早期なら放射線療法だけで治療することも

喉頭がんは、できた部位によって3つに分類されています。声帯のある部分にできたのが「声門がん」、声門より上にできたのが「」、声門より下にできたのが「声門下がん」です。

喉頭がんの治療でも、機能を温存することが重要なテーマになります。喉頭の治療は、声を出す機能のほかに、飲み込み機能にも関わっています。

早期に発見されたがんは、放射線療法だけで治療することもあります。Ⅰ期であれば、多くが放射線療法だけで治りますし、喉頭も温存されます。なるべく機能を温存するため、放射線療法で治せる場合には放射線療法が選択されるのです。

放射線療法の代表的な治療法がIMRT(強度変調放射線治療)です。従来の放射線療法に比べ、放射線をよりがんに集中させることができるため、周囲の正常組織にかかる放射線量が少ないのが特徴です。かつては喉頭がんで放射線療法を行うと、唾液腺にも放射線がかかるため、治療に伴う合併症として、唾液が出なくなるという症状が起きていました。常に水を口に含んでいないと、口の中がカラカラの状態になるため、生活の質が低下します。IMRTが普及することで、このような後遺症が残ることは少なくなっています。

がんが進行している場合には、手術が必要となります。手術には、喉頭温存手術(喉頭部分切除)と喉頭全摘出術があります。

比較的早期の小さながんであれば、喉頭温存手術が可能ですが、進行している場合には、喉頭全摘出術が必要になります。

喉頭全摘出術が必要と考えられるケースでは、化学療法と放射線療法を同時に行う化学放射線同時併用療法が行われることがあります。あるいは、導入化学療法を先に行い、次に放射線療法を行うこともあります。

放射線療法だけであれば、外来で治療を行うことができます。しかし、化学放射線療法の場合は入院が必要となります。抗がん剤のシスプラチンを使用するには、輸液が必要になるのと、吐き気や口内炎などの副作用が起こるため、どうしても入院が必要なのです。

化学放射線療法では、かなりひどい口内炎が起こります。放射線療法だけの場合、それほどひどくなることはありませんが、抗がん剤を同時併用すると、食べられない、痛くて飲み込めない、水も飲めない、味がわからない、という状態になります。

栄養を摂れないと、口内炎の治りも遅くなってしまいます。そこで、国立がん研究センター東病院では、化学放射線療法を始める前に胃瘻をつくり、口内炎がひどい間はここから栄養を摂れるようにしています。それにより治療を完遂できる人が増えるため、治療成績の向上につながると考えられます。治療が終了し、口内炎が回復したら、胃い ろ瘻う * はなくし、口で食事を摂るようにします。

がんのできている部位や進行度によっては、喉頭全摘出術が避けられない場合もあります(図2)。

図2 喉頭がんの治療アルゴリズム

図2 喉頭がんの治療アルゴリズム

喉頭を摘出した場合でも、食事はふつうに食べられます。ただ、気管は喉の前にあいた穴につながるので、呼吸はここで行います。

喉頭全摘出術を受けると、声が失われます。しかし、食道を使って声を出す食道発声法や、「電気喉頭」と呼ばれる機械を使う方法によって、声によるコミュニケーションは可能です。
*胃瘻:胃に直接、管を通し栄養を流し込む処置。

口腔がん

舌や歯肉にできるがんで進行が速い

口腔がんは口の中にできるがんです。最も多いのは舌がんで、その他に歯肉がんなどもあります。

これらのがんは、外から加わる刺激が原因となって発症すると言われています。舌がんが多いのは、舌が口の中で最も刺激を受けやすい部分だからなのでしょう。

インド、パキスタン、台湾などでは、檳びんろうじゅ榔樹の実を噛む習慣があり、それが口腔がんの原因となっています。

日本では、高齢者だけでなく、幅広い年代に発症しています。特に舌がんは、若い人にも見られ、特に顎が小さい人に目立ちます。これは、顎が小さいために舌が歯に当たりやすく、その刺激が原因になっているのではないかと言われています。

口腔がんは本人にも見える場所にできるので、発見しやすいがんです。早期に気づくことが多いのですが、それが早期発見・早期治療に結びつかないこともあります。本人がたぶん口内炎だろうと考えてしまったり、医療機関を受診しても、がんと診断されないまま2~3カ月たってしまったりすることがあるのです。

口腔がんは比較的進行が速いがんなので、回り道して専門医にたどり着く頃には、かなり進行してしまっていることもあります。

確定診断のためには生検が必要です。組織を採取し、病理検査が行われます。がんの大きさ、周囲への浸潤の程度、リンパ節転移の有無などを調べるために、CT検査やMRI検査などが行われます(表3)。

表3 口腔がん(舌がん)の病期
[T分類]
TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内がん
T1 最大径が2㎝以下の腫瘍
T2 最大径が2㎝をこえるが4㎝以下の腫瘍
T3 最大径が4㎝をこえる腫瘍
T4a 内質骨、下深層の筋肉/外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋、口蓋舌筋、茎突舌筋)、上顎洞、顔面の皮膚に侵潤する腫瘍
T4b 咀嚼筋間隙、翼状突起、または頭蓋底に侵潤する腫瘍、または内頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍
注:歯肉を原発巣とし、骨および歯槽のみに表在性びらんが認められる症例はT4 としない。
[N 分類]
NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝をこえるが6㎝以下
N2b 同側の多発性リンパ節転移で最大径が6㎝以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6㎝以下
N3 最大径が6㎝をこえるリンパ節転移
注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

表3 口腔がん(舌がん)の病期
[M 分類]
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり
[病期分類]
0 期Tis N0 M0
Ⅰ期T1 N0 M0
Ⅱ期T2 N0 M0
Ⅲ期T1 / 2 N1 M0
T3 N0 / 1 M0
Ⅳ A 期T1 / 2 / 3 N2 M0
T4a N0 / 1 / 2 M0
Ⅳ B 期T4b N に関係なくM0
T に関係なくN3 M0
Ⅳ C 期T、N に関係なくM1

手術が中心となり舌の再建手術も行われる

口腔がんの治療は手術が中心です。舌がんの手術には、切除する範囲によって、舌部分切除術、舌半側切除術、舌全摘手術などがあります。舌を切除してしまうと、話す機能が損なわれます。そのほか、飲み込む能力が低下しますし、味も感じ取れなくなります。

部分切除であれば、大きな影響はありませんが、切除する範囲が広くなれば、それに伴って失われる機能も大きくなります。そこで、大きく切除する場合には、舌の再建手術が行われることがあります。

歯肉がんでも、治療の中心は手術です。顎の骨に浸潤している場合には、顎の骨を切り取る手術が行われます。骨を取った後には、金属のプレートを入れて補強したりします。

放射線療法は、かつては組織内照射が行われていました。舌がんの部分に針状の線源を刺し、内側から放射線を照射する治療です。しかし、この治療は患者さんにとっても苦痛ですし、医療者が放射線を浴びてしまうなど、線源の管理に関しても問題がありました。そうしたことで、この治療を行っている医療機関は、現在ではかなり少なくなっています。

治療はあくまで手術が中心で、手術後の補助療法として、化学放射線療法* を加えることはあります。これは舌がんでも歯肉がんでも同じです。使われる抗がん剤は、プラチナ製剤(シスプラチンなど)を含む多剤併用療法です。
*化学放射線療法:化学療法と放射線療法を併用する治療法。

唾液腺がん

組織を採取して調べ悪性度を判断する

唾液腺は唾液を分泌する器官で、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がくかせん)、舌下腺(ぜっかせん)があります。どの唾液腺にもがんはできますが、最も発生頻度が高いのは耳下腺がんです。

唾液腺がんには、いろいろな種類のがんが含まれています。唾液腺の腫瘍が見つかったら、その組織を採取して病理検査を行い、がん細胞の種類をはっきりさせておきます。唾液腺がんは、悪性度によって、「低悪性度群」「中悪性度群」「高悪性度群」の3つに分類されます。どのような進行を見せるがんなのかを明らかにしてから、治療法を選択します(表4・表5)。

表4 唾液腺がんの病期
[T分類]
TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
T1 最大径が2㎝以下の腫瘍で、実質外進展* なし
T2 最大径が2㎝をこえるが4㎝以下の腫瘍で、実質外進展* なし
T3 最大径が4㎝をこえる腫瘍、および/または実質外進展* を伴う腫瘍
T4a 皮膚、下顎骨、外耳道、および/または顔面神経に浸潤する腫瘍
T4b 頭蓋底、翼状突起に浸潤する腫瘍、または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍
*:実質外進展とは、臨床的または肉眼的に軟部組織または神経に浸潤しているものをいう。ただし、T4a およびT4b に定義された組織への浸潤は除く。顕微鏡的証拠のみでは臨床分類上、実質外進展とはならない。
[N 分類]
NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝をこえるが6㎝以下
N2b 同側の単発性リンパ節転移で最大径が6㎝以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6㎝以下
N3 最大径が6㎝をこえるリンパ節転移
  注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

表4 唾液腺がんの病期
[M 分類]
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり
[病期分類]
Ⅰ期T1 N0 M0
Ⅱ期T2 N0 M0
Ⅲ期T1 / 2 N1 M0
T3 N0 / 1 M0
Ⅳ A 期T1 / 2 / 3 N2 M0
T4a N0 / 1 / 2 M0
Ⅳ B 期T4b N に関係なくM0
T に関係なくN3 M0
Ⅳ C 期T、N に関係なくM1

表5 唾液腺がんの悪性度
<低悪性度群>
腺房細胞がん、粘表皮がん(低悪性度)、多型低悪性度腺がん、明細胞がん、基底細胞腺がん、嚢胞腺がん、低悪性度篩状嚢胞腺がん、粘液腺がん、腺がんNOS(低悪性度)、多形腺腫由来がん(非・微小浸潤型)、転移性多形腺腫、唾液腺芽腫
<中悪性度群>
粘表皮がん(中悪性度)、腺様嚢胞がん(篩状、管状型)、上皮筋上皮がん、悪性脂腺腫瘍(脂腺がん、脂腺リンパ腺がん)、リンパ上皮がん
<高悪性度群>
粘表皮がん(高悪性度)、腺様嚢胞がん(充実型)、オンコサイトがん、唾液腺導管がん、腺がんNOS(高悪性度)、筋上皮がん*、多形腺腫由来がん(浸潤型)、がん肉腫、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がん

治療は手術が中心で顔面神経を温存する

治療の中心となるのは手術です。唾液腺の手術では、切除する範囲によって、部分切除術、葉切除術、全摘出術、拡大全摘出術という方法があります。

耳下腺がんの手術では、顔面神経を温存できるかどうかが、重要なポイントになります。片側の顔面神経を切っただけでも、かなり顔が変わってしまいます。そのため、できるだけ顔面神経を温存することを考えて手術が行われます。

放射線療法や化学療法は、唾液腺がんにはあまり効かないため、ほとんど行われていません。あくまで手術が中心です。

治療終了後の経過観察はしっかり続ける

治療が終了し、がんがなくなったとしても、再発してくる可能性はあります。そこで、治療終了後は定期的に受診し、経過観察を続けることが大切です。

治療終了から1年間は、3カ月ごとに受診し、診察を受け、さらにCT検査あるいはMRI検査を受けます。口腔がんは、CT検査だと歯が邪魔をして鮮明に映らないので、MRI検査が適しています。その他のがんはCT検査でいいでしょう。

小さな再発は診察しただけではわからないので、必ず画像検査を受ける必要があります。放射線療法の副作用などが出て、毎月のように受診している場合でも、3カ月に1回は画像を撮ります。

再発の可能性が高いのは治療終了後3年間なので、そこまでは3~4カ月ごとに画像検査を受けます。3年を過ぎたら半年に1回、5年を過ぎたら1年に1回にします。

化学放射線療法などで腫瘍が瘢はんこんか痕化* した場合には、PET ?CT検査が適しています。CT検査で瘢痕化した部分が映っても、そこに生きたがん細胞が残っているかどうかはわかりません。その点、PET ? CTを撮れば、生きた組織か死んだ組織なのかがはっきりします。

また、治療後の経過観察では、再発のチェックだけでなく、新たながんの出現にも注意を払う必要があります。頭頸部がんは、喫煙や多量飲酒が原因になっていることが多いので、それらがリスクとなる肺がんや食道がんが発症してくる危険性もあるからです。
*瘢痕:治った状態の傷跡。

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