静岡県立静岡がんセンター 全国初の多職種専門外来「支持医療科」を新設 4月1日より診療を開始
2026年09月15日
全国初 がん治療に伴う副作用・合併症などに応じる多職種の専門外来「支持医療科」を新設 4月1日より診療を開始
静岡がんセンター(上坂克彦総長、小野裕之病院長)は、患者・家族へのさまざまな支援を行うため〝包括的患者家族支援体制〟を整備し「治し支えるがん医療」に取り組んでいる。支持療法センター、患者家族支援センター、化学療法センターなどで‶支持医療〟を提供してきたが、本年4月から「支持医療科」を院内に新設することとなった。院内だけでなく、静岡がんセンター以外でがんの診療を受けている患者さんの診療も行うという。現在受診している医療機関でがんの診療を継続しながら、医療連携を通して支持医療の診療を進めていくという。
がん治療に伴う副作用・合併症などを専門的に診療する多職種の専門外来「支持医療科」を新設したのは、がんセンターとして全国で初めてである。これまでの医療では十分対応しきれていない病態や治療ニーズに対して積極的に応えていく方針と聞く。3月26日には静岡がんセンター研究所 大会議室において報道関係者向けの説明会が行われ、4月1日より外来診療が開始されている。
各分野の専門家により「科学に基づく高度な専門外来」を目指し、最先端の治療とケアを提供する
がん治療に伴う副作用や合併症の病態は、有効な治療法が確立していない、もしくは治療法が存在しないケースが多くあり、薬物療法、栄養療法、運動療法、心理療法などといった複数のアプローチが必要とされている。このような、‶アンメットニーズ〟の高い支持医療に特化するため「支持医療科」は開設された。多分野の専門家が外来的診療を行い、医師のみならず、看護師、薬剤師、栄養士を含む多職種が外来診療とセルフケア指導を行う。支持医療科は、「科学に基づく高度な専門外来」を目指し、各分野の専門家が結集し、最先端の治療とケアを提供するという。
支持医療科設立の背景と使命について、静岡がんセンターは次のように説明している。
医学の進歩により、がん医療はより精密になり、分子標的治療や免疫療法などの革新的な薬物療法が登場しました。これにより、治癒が困難な進行がんでも、長くがんと共存することが可能になっています。しかし、これは同時に「新たな課題」を生み出しました。生存期間が延びる一方で、患者さんとご家族は長期間にわたり、食欲不振や体重減少(カヘキシア)、しびれ、皮膚炎、口腔粘膜炎といった身体的苦痛と向き合い続けることになります。「病を抑え込むこと」だけに注力すれば、患者さんの体力は消耗し、生活の質は著しく損なわれます。
治療の進歩は同時に、その治療を完遂するための「支え」が不可欠です。患者さんが直面する治療の副作用や見通しを読み解き、最適な道筋を示して最善の医療を提供する。それが当センターの「支持医療科」の使命です。
(当日、配布された資料より。一部要約)
支持医療科には、セルフケア支援外来、リンパ浮腫外来、漢方外来、皮膚・爪障害外来、カヘキシア外来、口腔ケア外来といった専門外来が設けられている。
3月26日、報道関係者を前に支持医療科の説明にあたったのは、カヘキシア(食欲不振や体重減少)外来の内藤立暁医師(支持医療科部長)、再建・形成外科部長の安永能周医師、歯科口腔外科副部長・岡久美子歯科医師、皮膚・爪障害外来の清原祥夫医師、化学療法・支持医療センターの横山弘一看護師であった。

支持医療科診察室「カヘキシア外来」の前で:左より岡久美子歯科医師、安永能周医師、横山弘一看護師、内藤立暁医師、清原祥夫医師(写真提供:静岡がんセンター)
【セルフケア支援外来】(横山弘一看護師)
多職種をつなげるセルフケア支援外来は、医師の専門外来とのハブの役割を果たす。がん薬物療法の看護に関する高度な専門知識を有するがん専門看護師や認定看護師が常駐し、電話相談から対面による指導まで、様々な副作用に対する患者さん自身のケア力を高めるよう「セルフケア」の技術を指導する。代表的な副作用として皮膚のトラブルがあるが、セルフケア(例えば、保湿剤の塗り方、顔の洗い方、履物の選び方など、自分でケアする習慣)ができれば、より長く高い治療効果が期待できる。本外来は「がん治療に患者さんがより主体的に取り組む」ための新たな基盤となる外来であるという。
【リンパ浮腫外来】(安永能周医師)
がん治療の後遺症として発症するリンパ浮腫(手足のむくみ)は、適切な治療拠点が見つからず「リンパ浮腫難民」が課題となっている。本外来では、画像検査(リンパシンチグラフィ、ICG〈インドシアニン・グリーン〉リンパ管造影)による診断と、体組成分析を用いた客観的な重症度評価に基づき、保存的治療(圧迫療法:進行を予防するための標準治療)から形成外科医による高度な顕微鏡下手術(リンパ管を静脈につなぐリンパ管静脈吻合術:LVA)まで、シームレスな治療を提供する。
【カヘキシア(悪液質)外来】(内藤立暁医師)
「がん悪液質(カヘキシア)」は、食欲不振や急激な体重減少を引き起こす。栄養素が豊富にあっても活用できない。代謝障害(悪液質)がブロックしているからである。日本では、年間17万人が「がんによるカヘキシア」を経験しているという。本外来では、握力や体組成の精密評価を行い、原因を特定。複数の薬物療法(アナモレリン、漢方など)の処方や栄養指導に加え、理学療法士や看護師と連携した運動療法など、集学的なアプローチを提案するという。「がんだから痩せる」という常識を覆し、患者の栄養状態と身体機能を維持する方法を提供するのが「カヘキシア外来」である。
【口腔ケア外来】(岡 久美子歯科医師)
がん薬物療法・放射線治療に伴う重篤な口腔粘膜炎などの口腔有害事象は、治療を継続するうえで影響を及ぼす。口腔ケア外来で対応する口腔トラブルは口腔粘膜炎のほか、味覚障害、口腔乾燥症、口腔カンジダ症・ウイルス感染症、放射線性う蝕・放射線性口腔乾燥症、顎骨壊死(薬剤関連性、放射線性)などがあるが、これまで口腔に特化した相談窓口は十分ではなかった。本外来では重症化してからの‶治療〟ではなく、ごく軽微な段階からの「予防的介入」を徹底するという。
【皮膚・爪障害外来】(清原祥夫医師)
革新的な新規のがん薬物療法(分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など)は高い効果を示す一方、特有の皮膚障害をもたらすことがある。脱毛だけではない、近年のがん治療薬の主な皮膚障害としては、ニキビ様皮疹、毛(まつ毛)の異常、頭皮の異常、爪囲炎、乾燥性皮膚炎、さざ波上皮疹、などがある(紹介した症例は臨床症例の一部であり、すべての症例が同様の結果を示すわけではない)。また、がん薬物療法中の爪のトラブルとしては、割れる、変色する、デコボコになる、爪の周りが痛い、出血する、剝がれる、などがある(同上)。本外来では、がん薬物療法による皮膚・爪障害の豊富な経験を持つ皮膚科医師ならびに専門看護師が、治療初期から先手で予防的スキンケアについて指導。患者さんの苦痛を未然に防ぎ、早期治療も行いながら、「最新のがん薬物療法を安全に受けていただく医療」を提供するという。
【漢方外来】
がん支持医療の多領域における漢方処方の研究エビデンスを実践する外来である。
安達勇医師(静岡がんセンター参与、日本東洋医学会専門医)が本外来を担当する。
◇静岡がんセンターの支持医療科は4月1日より診療が開始され、これまでのところ受診する患者さんが最も多いのは「皮膚・爪障害外来」であるという(医療広報担当)。
「がん支持医療(サポーティブケア)」は、《がんと診断された時からがんのすべての軌跡における、がんに伴う症状や治療に伴う合併症に対応する医療》であると、国際的な定義がなされている。静岡がんセンターの支持医療科は、「当院以外の病院でがんの診療を受けている患者さんの診療も行う」という。がん治療による副作用、合併症、後遺症に悩まされている患者さんにとっては、待ち望んでいた診療科だといえる。支持医療科は今後、全国のがん診療連携拠点病院に漸次、開設されていくのではないか……。
(文・基 佐江里)
■支持医療科:静岡がんセンター 病院本棟3階 支持療法センターエリア内「支持医療科」
予約方法:地域医療連携室、予約センター 電話:055-989-5680 午前8時30分~午後5時(土・日・祝日、年末年始を除く)







