(監修:国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科 科長 奥坂拓志先生)

1.膵臓がんとは

1-1.膵臓がんとは

  • 膵臓がんは、罹患数と死亡数がほぼ同数である難治性がんの代表格である。
  • 日本人における膵臓がんの死亡数が、肺がん・胃がん・大腸がんに続き、4番目になるなど、罹患者数を少しずつ増やしている。

日本人におけるがん種別の死亡数は、順に肺がん・胃がん・大腸がん・膵臓がん・・・となっています。2015年の統計では、膵臓がんが肝臓がんと逆転しました。膵臓がんは罹患者数を少しずつ増やしているのです。

「膵臓がん」と呼ばれるがんのうちの90%以上は、膵管の細胞にできます。それを「膵管がん」と言い、一般に言うところの膵臓がんは「膵管がん」のことを指します。その他、膵臓がんに組み込まれるものとしては、膵神経内分泌腫瘍(がん)・膵管内乳頭粘液性腫瘍(がん)・粘液嚢胞性腫瘍(がん)などがあります。

膵臓は、食物の消化を助ける膵液をつくるほか、血糖値の調節に必要なインスリンやグルカゴンといったホルモンを産生する役割を担っています。この臓器は胃と十二指腸に囲まれていて、胃の後ろに隠れる位置にあります。長さ20㎝ほどの洋ナシ型をしていて、その膨らんでいる部分が「膵頭部」、真ん中が「膵体部」、幅が狭くなっている部分が「膵尾部」と呼ばれています。また、それぞれの部位にできたがんは、膵頭部がん、膵体部がん、膵尾部がんと称されています(図1)。

図1:膵臓

膵臓は腹部の深いところに位置しているため異変を発見しにくい臓器です。したがって、その多くで特有の症状が見られず、早期での発見は容易ではありません。膵臓がんは発見されたときにはすでに進行しているケースが少なくないのです。さらに、かなり早い時期から遠隔転移を起こしやすく、また、周囲の組織に浸潤しやすい性質を持ち合わせています。ですから、発見時には手術が不可能な状態に陥っていることが多いのです。

そのなかで、手術が可能な状態で見つかるのは、膵頭部がんが最も多く、次いで膵体部・膵尾部がんとなっています。というのは、膵頭部には胆管があり、そこが閉じられると黄疸という症状が現れ、早い段階で見つかる可能性があるからです。

手術が可能となる状態で見つかるのは2~3割です。そのうち、根治できるのがその10~20%。膵臓がん全体の5年生存率は2%程度と言われています。

膵臓がんの患者さんが病院を受診した理由としては、黄疸以外では腹痛、腰・背部痛などが挙げられます。それらの症状の他にも、食欲の減退や体重の減少などが見られます。

膵臓がんを引き起こすリスクファクター(危険因子)としては、糖尿病・慢性膵炎・喫煙・肥満……などが挙げられています。とりわけ、喫煙は膵臓がんの確実なリスクファクターであることがわかっていますし、糖尿病は膵臓がんのリスクを約2倍にするとされています。

膵臓がんは、40歳代より急激に罹患数が増加します。(図2)。

図2:膵臓がんステージ別生存率

(引用:全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2015年8月集計)による)

1-2.膵臓がんの検査

  • 患者さんが検査で何を調べるかを理解することが、その先の治療方針や治療法を決める手助けにもなる。
  • 診断のファーストステップの検査で異常所見を認めた場合、セカンドステップの検査を受ける。

患者さんが検査で何を調べるのかを理解することは、自分の病状を把握しやすくし、治療方針や治療法を決める手助けにもなります。

診断のファーストステップとして、血液生化学検査、腫瘍マーカー検査、腹部超音波検査を行います(表1)。異常所見を認めた場合、診断のセカンドステップとして、CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査、内視鏡的逆行性胆管膵管造影、MR胆管膵管撮影、PET検査、血管造影検査、経皮経肝胆道造影を受けます(表2)。

表1:発見するための検査

検査名 検査のやり方 検査でわかること
血液生化学検査 血中膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エタスターゼⅠなど)を測定する がんが潜んでいる有無を調べる。
腫瘍マーカー 血液検査によって、 CEA、CA19-9、Span-1、DUPAN-2、CA50などの濃度を測定する。 がんが潜んでいる有無を調べる。
腹部超音波
(エコー)検査
腹腔内臓器を超音波で検査する。 がんの有無を調べる。

表2:確定診断のための検査

検査名 検査のやり方 検査でわかること
CT検査 X線を使って体の断面を撮影する。 病変の状態や周辺の臓器へのがんの広がり、転移の有無を調べる。
MRI検査 強力な磁石でできた筒の中に入り、磁気の力を利用し、体の臓器や血管を撮影する 病変の状態や周辺の臓器へのがんの広がり、転移の有無を調べる。
超音波内視鏡
検査(EUS)
超音波装置の付いた内視鏡を入れ、胃や十二指腸の中から膵臓などの臓器に超音波を当てる。 病変の状態や周囲への広がりなどを調べる。体外からの超音波検査に比べ、より詳細な観察が可能になる。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影
(ERCP)
内視鏡を口から十二指腸まで送り込み、その中にカテーテルを入れて膵管まで通し、そこに造影剤を入れてX線撮影を行う。 内視鏡的所見、胆管像、膵管像など各種の情報を得ることができる。膵臓や胆道系に隣接した他の臓器の病変も見つけられる。
MR胆管膵管撮影(MRCP) MRIを使って膵管や胆管の状態を調べる。体への負担が少ないため、内視鏡的逆行性胆管膵管造影の代用として用いられることが多くなってきている。 膵管や胆管の閉塞、狭窄、拡張などの有無を確認して、がんの存在や広がりを調べる。
PET検査 放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影する。 全身のがん細胞を検出する。ただ、PETを用いても膵臓がんを早期に診断することは困難で、膵炎との鑑別や、膵臓がん手術後の再発診断に用いられることがある。
血管造影検査 膵臓やその周辺に向かう動脈に造影剤を入れ、撮影する。 血管の状態や病気による変化を調べる。
経皮経肝胆道
造影(PTC)
黄疸があるときに、皮膚の上から直に肝臓を貫いて胆管内に針を刺し、その針を通してチューブを胆管に挿入。そこから造影剤を入れ、撮影する。 胆管のどこで詰まっているのかを調べる。

1-3.膵臓がんの状態を理解するための基礎知識

患者さんが本当に納得できる治療を受けるためには、治療法の大きな流れと判断ポイント、ご自身の体の状態について、しっかり理解しておくことが大切です。その上で、ご自身がこれからどのように生きたいかを考え、医師とより良いコミュニケーションをはかりながら、治療法を選んでください。

受診の前後に、チェックリストを用意して記録して行くと、現状の把握や今後の治療法の検討に便利です。

チェックリスト
チェック項目 それを知る意義
がんの大きさ(cm) 病期(ステージ)分類のために必要な情報。これらの情報により、治療方針がほぼ決定する。
治療を選択するために必要な情報。
膵局所進展度(Tis、T1、T2、T3、T4)
リンパ節転移(N0、N1、N2、N3)
遠隔転移の有無(M0、M1)
  • 「がんの大きさ」「浸潤の有無」「リンパ節転移の程度」「遠隔転移の有無」の4つの条件によってステージを決定する。

膵臓がんの病期(ステージ)は、がんの大きさ、浸潤の有無、リンパ節・他の臓器への転移の有無によって、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期(IVa・IVb)に分類されます。また、膵臓がんの病期は、日本の膵臓学会が定めたものと国際的に使われているもの(UICC分類)があり、内容が多少異なっています。現在は両方とも使われていますが、本稿では前者について説明します。

図1:膵臓がんのステージ

1~3群リンパ節:リンパ節をがんのある場所からどのくらい離れているかによって分類しており、
近いものから1群、2群、3群と呼ぶ。
(膵癌取扱い規約を一部参照して作成)

それぞれの病期は、次のような状態を示します。

0期
  • がんが膵管の上皮内に留まっている非浸潤がん。
Ⅰ期
がんの大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局しており、リンパ節転移を認めないもの。
Ⅱ期
  • がんの大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局しているが、第1群のリンパ節(リンパ節を腫瘍のある場所からの解剖学的な距離により分類したもので、近いほうから順に第1群、第2群、第3群と呼ぶ)に転移を認めるもの。あるいは、大きさが2cm以上で膵臓の内部に限局しており、リンパ節転移を認めないもの。
Ⅲ期
  • がんが膵臓の内部に限局しているが、第2群(のリンパ節)に転移を認めないもの。
  • がんが膵臓の外へ少し出ているが、リンパ節への転移がない、あるいは第1群までに留まっているもの。
Ⅳa期
  • がんが膵臓の外へ少し出ているが、第2群までに留まっているもの。
  • がんが膵臓の周囲の主要な血管や隣接する臓器に広がっているが、リンパ節への転移がない、あるいは第1群までに留まっているもの。
Ⅳb期
  • がんの大きさが2㎝以下で膵臓内に留まっているものの第3群までの転移があるもの、遠隔転移しているもの。
  • がんが膵臓の外へ少し出ていて、第3群までの転移があるもの、遠隔転移しているもの。
  • がんが膵臓の周囲の主要な血管や隣接する臓器に広がっていて、第2群までに転移があるもの。
    第3群までに転移があるもの。遠隔転移しているもの。

1-4.膵臓がんの再発

  • 多くの血管が取り巻いている膵臓では、がん細胞が血管を通して拡散しやすい性質がある。そのため、摘出手術を行っても再発が起きることが多い。
  • 再発といってもそれぞれの患者さんで状態が異なるので、個々の状況に応じ、治療法やその後のケアを決定していく。

再発、あるいは転移してしまった場合は、患者さんの体調に応じ、①~⑤の中から治療法を選択します(表1)。その際、すでに受けた抗がん剤治療がある場合は、それ以外のものに切り替えます。ちなみに、再発しやすい部位としては、膵臓への局所再発の他に、肝臓・腹膜・肺・リンパ節などが挙げられます。

表1:再発膵臓がんの治療方法

治療方法
①ゲムシタビン単体療法
②Sー1単体療法
③ゲムシタビン+エルロティニブ併用療法
④FOLFIRINOX療法
⑤ゲムシタビン+ナブ・パクリタキセル併用療法

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