(監修:国立がん研究センター東病院 呼吸器外科科長 坪井正博先生)

1.肺がんとは

1-1.肺がんとは

  • 肺がんは、日本人のがん種別の罹患者が3番目に多い。
  • 肺がんの5年生存率は、がん全体のなかでは低い部類。

肺は、上部が細く、下が広がった半円錐形をしています。上端は鎖骨の上に飛び出し、下は横隔膜に接してします。肋骨に接している面にある切れ込みによって、右肺は上葉、中葉、下葉の3つの部分に、左肺は上葉と下葉の2つの部分に分かれています(図1)

図1

その肺にできる肺がんは、日本人のがん種別の罹患数では3番目に多いがんです。また、肺がんの5年相対生存率(図2)は、がん全体のなかでは低い部類に入ります。

図2

引用:全国がん罹患モニタリング集計 2003-2005年生存率報告
独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書)

肺がんは、小細胞肺がんと非小細胞肺がんに大別できます。非小細胞肺がんはさらに細かく分類され、そのなかで発生頻度の高いのは、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの3種類です(図3)

図3

1-2.肺がんの検査

  • 肺がんの検査は、「発見するための検査」、「確定診断のための検査」、「治療を進めるための検査」の3つの検査がある。

肺がんの検査には、「発見するための検査」、「確定診断のための検査」、「治療方針を決めるための検査」があります。

肺がんを発見するためのスクリーニング検査としては、単純胸部X線検査や喀痰細胞診、CT検査が挙げられます。

発見するための検査

検査名 検査のやり方 検査によってわかること
単純胸部X線検査 背中側あるいは前方から直にX線を撮影する。 肺全体を診ることができる。主に「肺野型(末梢型)肺がん」という、肺の奥にできたがんを発見するのに有効である。(骨や血管、心臓に影が重なる場所では分かりにくい)

喀痰細胞診

かくたんさいぼうしん

摂取した痰を顕微鏡によって調べる。 「肺門型(中心型)肺がん」という、肺の入り口に近い部分にできるがんの発見に適している
CT検査 X線とコンピュータを組み合わせた装置によって、人体を輪切りの状態にして、その断面を画像にする。 単純胸部X線検査より精度が高く、2㎝以下のがんを見つけることが可能である。

また、肺がんか否かを確定診断のための検査としては、気管支鏡検査、蛍光気管支鏡検査、穿刺吸引細胞診、透視下針生検、胸腔鏡検査、胸腔穿刺、病理学的検査などがあります。

確定診断のための検査

検査名 検査のやり方 検査によってわかること

気管支鏡検査

きかんしきょうけんさ

先端に電子カメラが内蔵された、太さ5~6㎜程度のファイバースコープを気管支の中に入れる。 肺の入り口に発生する肺門型肺がんの観察診断や、直接見えない場所ではX線透視を使って、鉗子といわれる器具を気管支鏡の先端から出して、肺の奥のがんの観察や診断に用いられる。
蛍光気管支鏡検査 気管支の内部をよりはっきりと観察するため、ファイバースコープの先端に、ある特定の光を発する器具を付けて行う。この光が正常な粘膜だけが自家発生し、がん細胞を認識できる。 早期の肺門型がんや前がん病変を発見するのに有効である。また、がんの気管支内の広がりを調べるのにも有用である。

穿刺吸引細胞診

せんしきゅういんさいぼうしん


(針細胞診)
皮膚の上から細い針を刺し、異常が疑われる部分の細胞を採取する。 がん細胞の有無を調べる。
透視下針生検 局所麻酔後、X線透視下やCTガイド下で、針を刺す方向・深さを確認し、肋骨の間から針を入れ、異常が疑われる部位に針を刺す。 がん細胞の有無を調べる。
胸腔鏡検査 胸部専用の内視鏡を胸の中に挿入し、肺を見ながら、肺・胸膜・リンパ節などの組織を採取する。 採取した組織からがん細胞が発見されないものの、画像検査の陰影の状況などから、がんの疑いが捨てきれないとき、希望する人に行う。

胸腔穿刺

きょうくうせんし

局所麻酔をして、胸に針を刺し、胸水を抜き取る。 がん細胞の有無を調べる。
病理学的検査
(細胞診)
表面を擦ったり、吸引したりして細胞を採取し、顕微鏡で細胞の形の異型度を調べる がん細胞の有無を調べる。
病理学的検査
(生検)
鉗子などで切り取って、顕微鏡で細胞の異型度や細胞集団の構造を調べる がん細胞の有無を調べる。

肺がんの治療方針を決めるには、まず、がんの進み具合である病期を診断しなくてはなりません。そのような治療方針を決めるための検査としては、CT検査、MRI検査、PET・PET/CT、超音波検査、骨シンチグラフィー、縦隔鏡検査、気管支鏡検査、腫瘍マーカーがあります。

治療方針を決めるための検査

検査名 検査のやり方 検査によってわかること
MRI検査 CTと同様に、横になっているところを、磁器を使った機械が上下に動いて体を調べる。 がんの広がり・遠隔転移の有無、特に脳、骨、副腎の転移を評価する。
PET・PET/CT 1回の検査で脳を除いた全身を画像化する。 がんが体のどこに転移しているのか、どこのリンパ節に転移しているのか、他にがんを疑うところがないかどうかを調べる。
超音波検査 皮膚にゼリーを塗り、その上から超音波の発振機であるプローブ(探触子)を当て、体内の様子を画像化する。 とくに肝転移の有無を調べるのに有効である。胸水のたまり具合を調べることもある。
骨シンチグラフィー 体内に注入した放射性物質から発する放射線の分布を画像にする。 全身の骨への転移を調べる。

縦隔鏡検査

じゅうかくきょうけんさ

全身麻酔をした後で、頸部(胸骨の一番上より2~3cm上の皮膚)を小さく切開し縦隔鏡という内視鏡を縦隔(左右の肺の間のスペース、気管の前)の中に入れる。 縦隔(左右の肺の真ん中にある部位)を観察したり、縦隔リンパ節(気管の周囲のリンパ節)を採取して転移の有無を調べたりする。
超音波
気管支鏡検査
超音波気管支鏡を使って縦隔リンパ節に針を刺して組織を吸引する。 転移の有無を調べる。
腫瘍マーカー がん細胞やがん細胞に反応した細胞が産生して血中・尿中に放出された物質を調べる。 がんの有無を調べる。
(感度は高くない)

1-3.肺がんの状態を理解するための基礎知識

患者さんが本当に納得できる治療を受けるためには、治療法の大きな流れと判断ポイント、自身の体の状態をしっかりと理解しておくことが大切です。そのうえで、これから自分がどのように生きたいのかを考え、医師とより良いコミュニケーションを図りながら、治療法を選んでください。

肺がんの進行度

  • 肺がんは、治療法を決めるうえで病期(ステージ)をはっきりさせておかなければならない
  • 病期(ステージ)を決める要素は、がんの広がり具合、リンパ転移の状態、遠隔転移の有無の3つ。

肺がんの治療法を決めるうえで組織型とともにはっきりさせておかなければならないのが、がんの進行度である病期(ステージ)です。

最初に発生したがん(原発腫瘍)は、一般に組織内で育った後、周囲の組織に浸潤(がんが周りに広がっていくこと)していきます。その一方で、がん細胞が血液やリンパ節の流れに乗って、あちこちの臓器やリンパ節に転移していきます。

そのため、病期を決める要素は、がんの広がり具合、リンパ節転移の状態、遠隔転移の有無の3つがあります。こうした肺がんの病期分類は、その3要素である腫瘍(Tumor)、リンパ節(Lymph Node)、転移(Metastasis)の頭文字をとって「TNM分類」と呼ばれています。これは、主に非小細胞肺がんに用いられます(図1)。

図1:非小細胞肺がんの病期分類(ステージ)

小細胞肺がんは治療内容の違いから、別の分類法が用いられることがあります(図2)。

図2:小細胞肺がんの病期分類(ステージ)

病期 状態 非小細胞肺がんの病期との対応
早期限局型 リンパ節転移も遠隔転移も、ない状態。 Ⅰ期に相当。
限局型(LD) がんが、発生した肺と近くのリンパ節にある。 Ⅰ期とⅡ期に相当で、悪性胸水がない場合に相当。
進展型(ED) がんが、肺の外に広がっているか、他の部位への転移がある。 悪性胸水M1aの場合、Ⅳ期に相当

1-4.肺がんの再発

  • 再発した肺がんは、手術(根治治療)が難しく、緩和療法と抗がん剤治療が行われることが多い。
  • また、場所や症状などにより、放射線治療が用いられるケースがある。

手術などの治療によって肉眼では捉えられる大きさのがんがなくなった後、再びがんが出現することを「再発」と言います。再発は、自覚症状や単純胸部X線検査やCT検査といった画像検査、腫瘍マーカーの上昇などをきっかけに発見されます。

一般に、再発した肺がんは、がんが広がっている範囲をすべて手術で切除する根治治療が難しく、緩和療法と抗がん剤治療が行われることが多いです。また、場所や症状などにより、放射線治療が用いられるケースもあります。

最初に発生したがん(原発腫瘍)は、一般に組織内で育った後、周囲の組織に浸潤(がんが周りに広がっていくこと)していきます。肺がんは、主気管支や臓側胸膜に浸潤しやすく、次いで胸壁、横隔膜、縦隔胸膜、壁側胸膜などに、そして縦隔、心臓、大血管、気管分岐部、気管、食道などへ広がっていきます(図1)。

図1

一方で、がん細胞は、血液やリンパ節の流れに乗って、あちこちの臓器やリンパ節に転移していきます。

肺がんは、主にリンパ節、肺葉※(がんが発生した肺葉とは別の肺葉に広がったものも転移という)、もう一方の肺、脳、骨、肝臓、副腎などに転移します。

リンパ節では、肺の中にある肺内リンパ節に早いうちから転移しやすく、次いで肺門リンパ節、縦隔リンパ節、鎖骨上窩リンパ節、前斜角筋リンパ節などへ転移します。その他、小細胞がんは骨髄にも転移しやすいことがわかっています。

転移しても、がんが小さいうちは症状も出ませんし、画像検査で捉えられるのも一定の大きさになってからです。症状もなく、画像検査で転移が発見されていなくても、急に腫瘍マーカーの値が増えてきたときは転移が疑われます。

※肺葉:肺には深い切れ込みがあり、これにより各肺葉に分かれる。

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