(監修:日本大学医学部長・大学院医学研究科長・消化器外科教授 高山忠利先生)
1.肝臓がんとは
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1-1.肝臓がんとは
- 肝臓がんの原因の多くが、C型、B型の肝炎ウイルスの感染によるもので、なりやすい人が明らかになっているがんである。
- 他のがん腫と比べても生存率は高くない。ただし、肝臓に限局する段階で発見できれば、生存率の向上につながる。
肝臓に発生するがんには、主に2種類のがんがあります。1つは肝臓の細胞から発生する「肝細胞がん」、もう1つは肝臓に張りめぐらされている胆管から発生する「胆管細胞がん」です。ここでは、肝臓にできるがんの大部分を占めている肝細胞がんを、「肝臓がん」として解説します。
日本では、肝臓がんの多くは、ウイルス性の慢性肝炎や肝硬変の患者さんに発生します。従来は、C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎、肝硬変からが65%程度、B型肝炎ウイルスによる慢性肝炎、肝硬変からが25%程度を占めると言われていました。肝臓がんの約90%は、C型かB型の慢性肝炎や肝硬変の人に発生していたのです。
ところが、最近の5~6年ほどで、この状況が大きく変わりました。肝臓がんを発症させた人の中で、C型とB型の肝炎ウイルスに感染している人は、60%程度になっています。はっきりした理由はわかっていませんが、抗ウイルス治療が進歩し、ウイルス性肝炎が治せるようになったことが、関係している可能性があります。肝臓がんの発生数は、ずっと増加を続けていましたが、数年前から減少に転じ、死亡率も低下してきました。
肝臓がんは、多くのがん腫の中でも、比較的治りにくいがんに入ります。がん研究振興財団がまとめた『がんの統計’13』によれば、肝臓がん全体の5年相対生存率は27.9%となっています。
(引用:全国がん罹患モニタリング集計 2003-2005年生存率報告
独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書)
他のがん腫の5年相対生存率と比較してみると、胃がんの63.3%、結腸がんの70.1%、直腸がんの67.5%、前立腺がんの93.8%、乳がんの89.1%などに比べ、低いことがわかります。肺がんが29.7%で、肝臓がんに近い値になっています。ただし、がんが肝臓に限局している場合に限ると、5年相対生存率は40.8%となります。早い段階で発見することが、生存率の向上につながるのです。
1-2.肝臓がんの検査
- 超音波検査とCT検査(あるいはMRI検査)で、がんを発見、診断し、がんの広がりも調べる。
- 細胞や組織を採取して調べる生検は行わない。
肝臓がんの検査は画像検査が中心です。多くの場合、超音波検査で発見されます。発見された後は、CT検査で詳しく調べます。CT検査の代わりに、MRI検査が行われることもあります。これらの画像検査によって、がんを発見し、がんかどうかの診断をします。また、がんの数や大きさを調べ、肝臓内のどこにできているか、リンパ節転移や遠隔転移の有無も調べます。
検査名 | 検査のやり方 | 検査によってわかること |
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超音波検査 | 体の外側から超音波を発信し、その反射を利用して体内の状態を画像化する。 | がんの有無、大きさ、数、がんの広がり、肝臓の状態、腹水の有無などがわかる。 |
CT検査 | 体の周囲からX線を照射し、それをコンピュータで処理して、断層画像化する。 | がんの性質、分布、リンパ節や他の臓器への転移の状態などがわかる。 |
MRI検査 | 磁気を利用し体内の状態を調べ、それをコンピュータで処理して、断層磁石の力と電波を使って身体の内部の様子を画像化する。 | がんの性質、分布、リンパ節は他の臓器への転移の状態などがわかる。 |
他のがん腫では、がんと確定診断するために、細胞や組織を採取して顕微鏡で調べる生検が行われますが、肝臓がんでは行いません。肝臓がんは風船を膨らませたような構造なので、針を刺すと、がん細胞が周囲に漏れ出してしまうことがあります。そのリスクが大きいため、生検は行われないのです。
1-3.肝臓がんの状態を知るための基礎知識
患者さんが本当に納得できる治療を受けるためには、治療法の大きな流れと判断ポイント、ご自身の体の状態について、しっかり理解しておくことが大切です。その上で、ご自身がこれからどのように生きたいかを考え、医師とより良いコミュニケーションをはかりながら、治療法を選んでください。
受診の前後に、次のようなチェックリストを用意して記載していくと、現状の把握や今後の治療法の検討に便利です。
チェックリスト | |
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チェック項目 | それを知る意義 |
がんの個数 | 病期(ステージ)分類のために必要な情報。これらの情報により、治療方針がほぼ決定する。 |
がんの大きさ(cm)(全体/浸潤径) | |
脈管侵襲の有無(Vp、Vv、Va、B) (がん周囲の血管や胆管の中に、がん細胞が見られること) |
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リンパ節転移の有無 (センチネルリンパ節) |
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遠隔転移の有無 | |
肝障害度(A、B、C) | 治療を選択するために必要な情報。 |