(監修:医療法人湘和会 湘南記念病院 かまくら乳がんセンター長 土井卓子先生)

2.乳がんの治療について

2-1.乳がんの治療

  • 遠隔転移(他の臓器への転移)がない場合は治癒を目指した治療、遠隔転移がある場合は悪化させないことを目指した治療が行われる。
  • その上で、具体的にどのような治療をするかは、「患者さんが今後どう生きたいかの治療方針」を考慮して選ぶ。
  • 乳がんは治療法が多く、新薬の開発スピードも非常に速いので、生存期間を引き延ばしてご自身に合う治療が出るのを待つ努力には、大きな意味がある。

治療法を決めるためには、その前に治療方針を考える必要があります。「がんの状態から選択可能な医学上の治療(方針)」はある程度決まっていますが、「患者さんが今後どう生きたいかの治療方針」は、患者さん次第です。

治療の多くは後戻りできません。多くのがんは数週間の違いで大きく結果は変わらないので、闇雲に治療を急ぐよりも、しっかり病状を把握して、情報を集め、よく考えて治療方針を決めることが大事です。

医師と相談しながら、適した治療法を選び出し、それぞれの治療法の効果とリスクをしっかり理解して、最も納得の行く治療法を決めてください。

乳がんの治療は、その目的によって、次のように大きく2つに分けられます。

img_standard_01_01

A.遠隔転移がない場合の治療

1つは遠隔転移(他の臓器への転移)がない患者さんの治療です。この場合には、がんを完全に治すことを目的に、根治的な治療が行われます。乳がんの治癒を目指すためには、基本的には手術が必要になります。また、手術後の再発を防ぐ目的で、薬物治療や放射線治療が加えられる場合もあります。

B.遠隔転移がある場合の治療

もう1つは、遠隔転移がある患者さんの治療です。この場合には、治癒を目指すのではなく、悪化させないことを目指した治療が行われます。手術後に再発して遠隔転移した場合も、このような治療になります。

薬物治療が中心ですが、できるだけQOL(生活の質)を低下させないようにし、副作用の軽い治療から行うようにします。

乳がんは、遠隔転移がある場合でも、適切な治療をすることで生存期間が数年~数十年単位で延び得るので、延命の意義が高いがん種です。治療法も多く、新薬の開発も非常に速くて次々出ています。今完治できなくても、効く薬がすぐに出るかもしれないので、生存期間を引き延ばす努力には、大きな意味があります。

もし進行した状態であってもあきらめないで、医師と充分なコミュニケーションを取りながら、がんに立ち向かってください。

2-2.遠隔転移がない乳がんの治療-1.手術

  • 乳房を一部切除する「乳房温存術」と、乳房全体を切除する「乳房切除術」がある。
  • 乳房を切除した後で再建する「乳房再建術」では、人工物を入れるインプラント再建が主流である。
  • 「自分にとって最も重要なことは何か」をよく考えた上で、それに沿った手術方法を選ぶことが大切。

完全に治すことを目指すために、基本的に手術が行われます。手術には、次のようにいろいろな方法があります。がんの大きさや周囲への広がり、さらに治療後の見た目も考えて、患者さんが何を重要視しているかを考慮しながら、手術法を選択することになります。

乳がんの手術は、大きく「乳房温存術」と「乳房切除術」に分けられます。乳房を切除した後、乳房を再建する「乳房再建術」も行われるようになっています。

乳房再建には、自分の体の組織(腹部や背中の皮膚・脂肪・筋肉)を使う「自家再建」と、人工物を利用する「インプラント再建」があります。自家再建だけでなく、インプラント再建も、最近保険適用になりました。
リンパ節への転移がある場合には、手術時に「腋下廓清」(えきかかくせい)が行われます。

自分にとって何が最も重要なのか(ふくらみの形にこだわりたい、変形してもいいから自分の臓器を残したい、手術の時間やお金が最優先など)について、その理由とともに突き詰めて考えてみてください。その答えを医師に伝えて、手術方針を決めることが大切です。

種類名 内容 向いている人
乳房温存術
(部分切除)
・がんと共に乳房の一部だけを切除し、乳房を残す手術。手術後、再発を防ぐために、残した乳房に対して放射線療法を行う。
・乳房を一部切除するため、どうしても乳房の変形が起こる。
・あまり大きくなく、多発や乳管の中を進展していない場合です。
・変形しても自分の乳房を残したい場合。
乳房切除術
(全摘出)
・がんを含めて乳房を切除する手術。(標準的な手術では、乳輪、乳頭を含め、乳房全体が失われる。)
・インプラント再建する場合は、「皮下乳腺全摘術」(乳房の皮膚・乳輪・乳頭を残して、がんと乳房の中身を切除)を行うと、整容性が最も優れ、傷あとも目立たない。
がんが大きい場合や多発する場合。
乳房再建術 ・乳房切除術後、乳房を再建。乳房の形を維持するのに優れる。
・乳房再建には、自分の体の組織(腹部や背中の皮膚・脂肪・筋肉)を使う「自家再建」と、人工物を利用する「インプラント再建」がある。いずれも保険適用。
乳房の形を重視する場合。
<自家再建>
大掛かりな手術が必要となるため、患者さんの身体的負担は大きくなる。
自分の組織で乳房をつくりたい人
<インプラント再建>
・組織拡張器(エキスパンダー)を胸の筋肉の下に入れ、少しずつ膨らませ、乳房の形をつくる。最終的にシリコン製のインプラントに入れ替える。
・「ラウンド型(丸型)」と「アナトミカル型(しずく型)」がある。
・ラウンド型は、お椀型の乳房の人であれば自然に見えるが、やや垂れた乳房や大きな乳房の人では、不自然に見えることがある。
・アナトミカル型は、やや垂れた乳房や大きな乳房でも自然に見える。
腋下郭清
(えきかかくせい)
・手術時にリンパ節を切除する手術。センチネルリンパ節(がん細胞が最初に運ばれていくリンパ節)に転移がある場合に行う。
・画像検査などでリンパ節転移の有無がはっきりしない場合には、「センチルリンパ節生検」を行って確認する。
また、センチネルリンパ節生検の結果は、その後の治療選択のための重要な情報となる。
わきの下のリンパ節に転移がある場合。

2-3.遠隔転移がない乳がんの治療-2.手術後の補助療法

  • 再発を予防する目的で手術の前か後に薬物療法を行うことがある。
  • 使用する薬は、サブタイプ、がんの広がり、リンパ節転移の状況などから判断する。
  • 術前でも術後でも生存期間などの治療成績に差はない。

遠隔転移がないと診断され、手術によって乳房のがんを取り除くことができても、画像検査でわからないほど小さな転移が、すでに起きている可能性があります。それを放置すると再発につながるので、再発予防のために薬物による全身療法を行うことがあります。

薬物(抗がん剤やホルモン剤など)を使う治療を、薬物療法といいます。治療を行うタイミングによって、「術後薬物療法」と「術前薬物療法」に分かれます。

がん細胞が乳管内にとどまっている「非浸潤がん」の場合は、転移する可能性がないので、手術に薬物療法を加える必要はありません。

サブタイプがトリプルネガティブやHER2タイプで、がんが5ミリ以上の場合は、早期がんでも化学療法、分子標的治療薬を行います。術前に施行すると薬の効きや、手術後の化学療法の必要性が判断できます。

術後薬物療法

使用する薬剤は、サブタイプ(表1)や再発危険因子(がんの広がり、リンパ節転移の有無と個数など)から、総合的に判断します(表2)。

表1 サブタイプ分類

HER2 増殖能 ホルモン受容体
陽性 陰性
陰性 低い ①ルミナールA ④トリプルネガティブ
高い ②ルミナールB(HER2陰性)
陽性 問わず ③ルミナールB(HER2陽性) ⑤HER2タイプ

表2 サブタイプ別の推奨治療法

サブタイプ 推奨治療法 治療期間の目安
①ルミナールA ホルモン療法
*閉経前の方は「抗エストロゲン薬」(注1)中心。「LH-RHアゴニスト(注2)」を併用する場合もある。
*閉経後の方は「アロマターゼ阻害薬(注3)」が第1選択。再発危険因子が多い場合には、抗がん剤を加えることもある。
5~7年位
②ルミナールB
(HER2陰性)
ホルモン療法
(再発危険因子などを考慮する場合、抗がん剤・抗HER2療法(注4)を追加)
5~7年位
③ルミナールB
(HER2陽性)
④トリプル
ネガティブ
抗がん剤 FEC療法(3週毎 計4回)とタキサン系抗がん剤(3週毎 計4回)のいずれかを先に行い、合計6ヵ月位
⑤HER2タイプ 抗HER2療法に、抗がん剤を併用 抗HER2療法:3週毎 計18回(1年間)
抗がん剤:3週毎 計4~8回
注1) 抗エストロゲン薬
エストロゲン受容体をもった乳がん細胞は、エストロゲンと結合することで増殖が高まる。
抗エストロゲン薬は、この受容体と結合し、エストロゲンが結合するのを阻止する働きがある。
注2) LH-RHアゴニスト
卵巣を刺激するホルモンの分泌を抑えることで、卵巣でエストロゲンが作られないようにする。
注3) アロマターゼ阻害薬
副腎から分泌されたアンドロゲンは、アロマターゼという酵素の働きでエストロゲンになる。閉経で卵巣からのエストロゲン分泌がなくなった後も、この経路でわずかなエストロゲンが作られている。アロマターゼ阻害薬は、この酵素の働きを阻害することで、エストロゲンができるのを防ぐ。
注4) 抗HER2薬
分子標的薬。細胞表面にあるHER2の働きを抑え込むことで、がん細胞が増殖するのを抑える。

術前薬物療法

薬物療法を手術前に行うのが、術前薬物療法です。再発予防やがんの縮小のために行うもので、期間は6ヵ月間です。手術時期が6ヵ月ほど遅れますが、薬物療法をしているので、がんは進行しません。

使用される薬剤は、基本的に術後薬物療法と同じです。ただし、閉経前の患者さんに対する術前ホルモン療法は、ガイドラインでは推奨されていません。

薬物療法を術後に行っても、術前に行っても、治療後の生存期間などには差がありません。ただ、術前治療には次のような利点があり、そのために術前治療を受ける患者さんが増えています。

術前薬物療法の利点
・がんが縮小することで、手術の切除範囲が少なくなる。
それにより、乳房温存術が可能になったり、温存した場合の乳房の変形が少なくなったりする。
・薬剤が効くかどうかを、術前に判定できる。
(術後薬物療法は、しこりをつくっているがんがなくなった状態で行うため、薬が効いているかどうかを判定できないので。)

2-4.遠隔転移がある乳がんの治療

  • がんの縮小ではなく、悪化させないことを治療の目標とする。
  • できるだけ長く治療を続けられるように、QOL(生活の質)をよい状態に保つことを目指して、薬剤を選ぶ。

治すことではなく、悪化させないことを目指すために、基本的に薬物療法を行います。サブタイプや現在の病状などから、使用する薬剤を選びます。

サブタイプ 薬物療法の内容
ホルモン受容体陽性
(ルミナールA/B)
・ホルモン療法が基本。使っている薬剤が効かなくなったら、別のホルモン治療薬に変え、ホルモン療法を続ける。ホルモン療法は副作用が軽いため、治療を行いながら普通の日常生活を送ることができる。
・ホルモン療法を使い切った場合や、病状が悪化して生命の危険があるような場合には、抗がん剤治療に移る。
HER2タイプ ハーセプチンと化学療法が基本。それで効かなくなったら、次に、ペルツズマブ(パージェタ)、ハーセプチン、ドセタキセル。その次に効かなくなったら、化学療法を変えるか、カドサイラに行く。
トリプルネガティブ 抗がん剤による治療が基本。なるべくQOLを低下させないことを考える必要がある。ある抗がん剤を使用していて、効果がなくなれば、抗がん剤を変えて治療を続ける。

隔転移がある場合は、強い薬を使っても、がんは小さくなりにくかったり、つらい副作用で薬をやめたら元に戻ったりします。できるだけQOL(生活の質)をよい状態に保ちながら長く生きられるように、副作用の軽い薬剤から使用するようにします。

どの薬剤を使用するにしても、できるだけ長く治療を継続できるようにするのが、大切です。

先程の説明でも書きましたが、乳がんは治療法も多く、新薬の開発も非常に速くて次々出ています。今完治できなくても、効く薬がすぐに出るかもしれないので、生存期間を引き延ばす努力には、大きな意味があります。新しい治療法で適切な治療ができれば、生存期間が数年~数十年単位で延びる可能性もあります。遠隔転移があってもあきらめないで、医師と充分なコミュニケーションを取りながら、がんに立ち向かってください。

2-5.乳がん治療で使われる薬剤

  • 乳がん治療に使われる薬には、ホルモン治療薬、分子標的薬、抗がん剤がある。
  • 多くの薬剤の中から、患者さんに適した薬が選択される。

乳がんの治療で使用される薬剤は、「ホルモン治療薬」「分子標的薬」「抗がん剤」が主なものです。この他に、骨転移に対する治療薬、副作用を抑えるための薬などが、必要に応じて使われます。

ホルモン治療薬

女性特有のがんに働き、がん細胞の増殖を防ぎます。ホルモン量を変化させるため、副作用として更年期のような症状が出る場合があります。

働きによって分類すると、エストロゲンが乳がん細胞に作用するのを防ぐ「抗エストロゲン薬」、エストロゲンの分泌を抑える「LH-RHアゴニスト」、アンドロゲンをエストロゲンに変える酵素の働きを阻害する「アロマターゼ阻害薬」などがあります。

主なホルモン治療薬には、次のものがあります。

薬剤名(一般名) 主な商品名 適応 投与法
リュープロリン リュープリンなど 閉経前 皮下
ゴセレリン ゾラデックスなど 閉経前 皮下
タモキシフェン ノルバテックスなど 閉経前後 経口
メドロキシプロゲステロン ヒスロンHなど 閉経前後 経口
トレミフェン フェアストンなど 閉経後 経口
アナストロゾール アリミデックスなど 閉経後 経口
エキセメスタン アロマシンなど 閉経後 経口
レトロゾール フェマーラなど 閉経 経口

分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞特有の分子を標的にするので、他の細胞を傷つけるリスクが低く、副作用が比較的少ないのが特徴です。

HER2陽性の人に効果的で、抗HER2薬はいずれも分子標的薬です。

主な分子標的薬には、次のものがあります。

【分子標的治療薬+抗がん剤の併用治療方法】

*身長160cm体重50kgの方で3割負担とした場合の概算です(2015年1月時点)。化学療法加算費や診察料等は含みません。薬剤の価格は、ジェネリック薬の使用や薬価の変更等により変化するので、予めご了承ください。

【分子標的治療薬】

治療法 一般名 主な商品名 適応 投与方法 概算費用
ペルツズマブ・トラスツズマブ・ドセタキセル併用 ペルツズマブ パージェタ HER2陽性の手術不能又は再発乳癌 個別の薬剤の投与方法による 初回約21.8万円,2回目以降約13.2万円
トラスツズマブ ハーセプチン
ドセタキセル タキソテール
ペルツズマブ・トラスツズマブ併用 ペルツズマブ パージェタ HER2陽性の手術不能又は再発乳癌 個別の薬剤の投与方法による 初回約19.5万円,2回目以降約10.9万円
トラスツズマブ ハーセプチン
パクリタキセル・ベバシズマブ併用 パクリタキセル タキソール 手術不能又は再発乳癌 個別の薬剤の投与方法による 1回約8.2万円

*身長160cm体重50kgの方で3割負担とした場合の概算です(2015年1月時点)。化学療法加算費や診察料等は含みません。薬剤の価格は、ジェネリック薬の使用や薬価の変更等により変化するので、予めご了承ください。

抗がん剤

細胞に対して毒性を発揮する薬です。多くの薬剤を使うことができます。

乳がん治療に使える主な抗がん剤には、次のものがあります。

【複数薬の併用治療方法】

治療法 一般名 適応 投与方法 概算費用
トラスツズマブ ハーセプチン HER2過剰発現が確認された乳癌癌 点滴
ペルツズマブ パージェタ HER2陽性の手術不能又は再発乳癌 点滴
ベバシズマブ アバスチン 手術不能、再発乳がん 点滴
ラパチニブ タイケルブ 手術不能または再発乳癌 経口
エベロリムス アフィニトール 手術不能または再発乳癌癌 経口
T-DM1 カドサイラ HER2陽性の手術不能又は再発乳癌 点滴 1回約14.4万円
治療法 一般名 主な商品名 投与方法 概算費用
FEC療法 エピルビシン ファルモルビシンなど 3週間を1コースとして4コース実施 1コースあたり約3.2万円
シクロフォスファミド エンドキサンなど
フルオロウラシル 5-FUなど
TC療法 ドセタキセル タキソテールなど 3週間を1コースとして4コース実施 1コースあたり約2.8万円
シクロフォスファミド エンドキサンなど
CMF療法 シクロフォスファミド エンドキサンなど 4週間を1コースとして6コース実施 1コースあたり約0.7万円
メソトレキサート メソトレキセートなど
フルオロウラシル 5-FUなど
EC療法 エピルビシン ファルモルビシンなど 3週間を1コースとして4コース実施
シクロフォスファミド エンドキサンなど
AC療法 ドキソルビシン アドリアシンなど 3週間を1コースとして4コース実施
シクロフォスファミド エンドキサンなど
CAF療法 シクロフォスファミド エンドキサンなど 3週間を1コースとして6コース実施
ドキソルビシン アドリアシンなど
フルオロウラシル 5-FUなど
CEF療法 シクロフォスファミド エンドキサンなど 4週間を1コースとして6コース実施
エピルビシン ファルモルビシンなど
フルオロウラシル 5-FUなど

*身長160cm体重50kgの方で3割負担とした場合の概算です(2015年1月時点)。化学療法加算費や診察料等は含みません。薬剤の価格は、ジェネリック薬の使用や薬価の変更等により変化するので、予めご了承ください。

【主な抗がん剤】

薬剤名(一般名) 主な商品名 投与法 概算費用
テガフール・ウラシル ユーエフティなど 経口
カペシタビン ゼローダなど 経口
テガフール・ギメラシル・オテラシル ティーエスワンなど 経口
ゲムシタビン ジェムザールなど 点滴 1回約1.4万円
メトトレキサート メソトレキセートなど 経口
ビノレルビン ナベルビン、ロゼウスなど 点滴 1回約0.9万円
ドセタキセル タキソテールなど 点滴 1回約2.6万円
パクリタキセル タキソール、パクリタキセルなど 点滴 1回約1.4万円(ジェネリックの場合)
ナブパクリタキセル アブラキサンなど 点滴 1回約7.3万円
カルボプラチン パラプラチンなど 点滴
イリノテカン カンプト、トポテシンなど 点滴
エリブリン ハラヴェンなど 点滴

*身長160cm体重50kgの方で3割負担とした場合の概算です(2015年1月時点)。化学療法加算費や診察料等は含みません。薬剤の価格は、ジェネリック薬の使用や薬価の変更等により変化するので、予めご了承ください。

骨転移に対する治療では、「ビスフォスフォネート製剤」や、分子標的薬のデノスマブが使われています。

2-6.乳がん治療の副作用

  • 副作用は、予防可能なものや、適切に治療することで改善可能なものがある。
  • 開発技術が急速に進歩しているため、今治療できない副作用でも、じきに治療可能になる可能性が高い。
  • 副作用についてよく理解し、どうしても嫌なことは避けて、できるだけ長く治療を継続して効果を上げられるようにすることが大切。

乳がんの治療を受けることによって、副作用として、好ましくない症状が現れることがあります。ただし、これらの症状の多くは、適切に治療することで改善可能です。昔は強い副作用があっても対処できなかったものでも、今は対処できるものがたくさんあります。

副作用の不安を軽減するには、自分が受ける治療の副作用をよく理解することが大切です(いつ頃・どのように出て・どの位続いて・どう対処したらよいかなど)。そして、自分にとって「絶対に嫌なこと」が何かを自覚してそれだけは避ける選択をしましょう。確実に治療を継続して効果を上げるためには、つらいことを少しでも減らすことが重要です。医師や看護師に、判らないことは質問したり、不安な気持ちを素直に伝えるとよいでしょう。

副作用は人によっても差があるものなので、自分の体の変化をきちんと把握して、何かあれば医師に相談してください。

1.手術の後遺症

手術時にリンパ節を切除する「腋下郭清」(えきかかくせい)を行うと、リンパ浮腫(腕からのリンパ液の流れが滞ることによる腕の浮腫)が起こることがあります。現在は6%の人にしかリンパ浮腫が起きませんし、適切な治療を受けることでよくなります。
また、浮腫を予防したり、悪化するのを防いだりするために、スキンケアやセルフマッサージが勧められています。

腋下リンパ節に転移が起き、それによって腕に浮腫が起きた場合には、重症化することがありますし、通常のリンパ浮腫に対する治療ではよくなりません。

2.薬の副作用

抗がん剤、ホルモン治療薬、分子標的薬を使用すると、それぞれ特徴的な副作用が現れてきます。

(1)抗がん剤による副作用

抗がん剤の種類により、吐き気・嘔吐、下痢、口内炎、倦怠感、白血球減少、貧血、血小板減少、肝障害、腎障害、末梢神経障害、脱毛など、さまざまな副作用があります。それぞれに適切な対処法や治療法があります。抗がん剤の投与で免疫が低下するため、感染などに注意することも重要です。

吐き気や嘔吐に対しては、制吐薬が使われます。制吐薬が進歩したため、実際に嘔吐してしまうようなことはほとんどなくなっています。

深刻な白血球減少に対しては、G-CSF製剤が使われることがあります。

(2)ホルモン治療薬による副作用

抗エストロゲン薬では、重い副作用はほとんどなく、QOLを低下させずに治療を受けることができます。ただし、長期にわたって治療した場合には、子宮体部の増殖や、子宮体がんが起きるリスクがあります。

LH-RHアゴニストを使うと、閉経前の人が閉経状態になるため、ホットフラッシュなど、更年期障害のような症状が現れます。

アロマターゼ阻害薬では、骨密度が減少したり、関節が痛んだりすることがあります。骨を守るビスフォスフォネート製剤やデノスマブなどによる治療が行われることもあります。

(3)分子標的薬による副作用

トラスツズマブでは、発熱、悪寒、全身倦怠感、心不全などの副作用が現れることがあります。

ラパチニブでは、下痢、悪心、食欲不振、疲労感などの副作用が現れることがあります。

3.放射線の副作用

乳房温存術後の放射線療法では、副作用として皮膚炎が起こることがありますが、重篤なものではありません。適切なスキンケアで改善します。全身的な副作用はほとんどありません。

乳房切除術でも、局所再発の危険性が高い場合には、放射線療法が行われます。この場合は、胸壁に加えて周囲のリンパ節にも照射するため、照射される線量が多く、副作用もやや増加します。

2-7.乳がん治療の治療費

乳がんの治療は、一人ひとりの病状に応じて治療を組み合わせるので、その内容によって費用も大きく異なります。事前に医師に確認して、月単位もしくは年単位で、だいたいの治療費を把握しておくと安心です。

手術・入院で、いくら位かかるのか?

医療機関や手術の内容、入院期間などによって、費用は異なる。
手術費だけでなく、入院から退院までの大体の費用を、事前に病院に確認しておくことが大事。

例)<入院7日間・センチネルリンパ節生検・温存手術郭清なしの場合>
総額約80万円(保険3割負担の場合は約24万円)

手術以外の治療で、いくら位かかるのか?

放射線療法 温存術の場合は、術後に1~2カ月放射線照射を行うのが標準治療。必要な照射回数などを、医師に確認しておくことが大事。
例)<温存手術後に放射線療法25回照射の場合>
総額約50~70万円(保険3割負担の場合は約15~21万円)
ホルモン療法 ・閉経前か閉経後でも治療に使うホルモン剤が異なる場合があり、治療費の幅が広い。
・長期(2~5年以上)の治療が多いので、月単位または1年単位の費用を医師に確認しておくことが大事。
抗がん薬や分子標的薬などの薬物療法 使用する薬剤の種類や身長・体重により、費用が大きく変わる。分子標的薬は、副作用の出方などを確認するために、初回は入院して行うのが一般的であるため、3日程度の入院費が必要。
1回の費用と必要な期間などを医師に確認しておくことが大事。
例)<3週毎トラスツズマブを計18回行なった場合(体重50kg)>
総額約220万円(保険3割負担の場合は約66万円)

2-8.乳がんの患者さんがよく気にしたり悩んだりすることQ&A

Qセカンドオピニオンは、すべき?
A
担当医の意見が第一の意見であるのに対し、他の医師の意見をセカンドオピニオンと呼びます。すべての患者さんがセカンドオピニオンを聞きに行ったほうがよいわけではありません。担当医の説明を聞き、自分で納得できればそれで十分である場合も多いでしょう。
しかし納得がいかない場合には、これまでの治療経過・検査結果・今後の予定などを主治医に記載してもらい、別の医師の意見を聞くのもよいでしょう。そして、その結果を主治医に持ち帰って相談するのがベストです。
Q将来、妊娠・出産を考えているのですが?
A

妊娠や出産が、がんの予後を悪くはしません。
治療によっては、卵巣機能や胎児に影響を与える場合がありますが、妊娠や出産を重視する希望を治療前に医師に伝えていれば、対処方法はあります。

妊娠・出産の具体的な希望があってもなくても、治療方法を決定する前に、今後どんな人生を送りたいのかをしっかり考えて、その人生設計の中で乳がん治療をどう位置付けるかが大事です。
それに沿う形で、医師と相談しながら、長い目で見た治療計画を立てましょう。

Q治療の副作用で、脱毛や肌荒れなど、胸以外の見た目も変わるのでは?
A
副作用で、肌荒れやシミが出来たり、爪が割れたり、脱毛後に生えてきた髪質が変わったりするなど、外見に影響することもあります。それらに対しては色々なケアの仕方があるので、事前に不安を感じている時や症状が出てきた段階で、医師や看護士に相談してみてください。
治療だからと無理に我慢することは、治療を続ける意欲の低下にもつながるので、望ましくありません。
Q仕事は続けられますか?
A
仕事は続けられます。気持ちの切り替えのことを考えても、続けた方が良いと思います。
しかし、治療後数日は吐き気、だるさが出る場合があります。つらい時は休めるように職場の手配をしておく方が安心です。
また治療後白血球が減る時期は感染に弱くなり、口内炎を起こしたり風邪や肺炎にかかりやすかったりします。無理がきかないので、楽な勤務体制にした方が良いでしょう。
同僚や上司に理解してもらうことがポイントです。

乳がんの最新ニュース

乳がんに関する主な公開記事

がん治療(標準治療)の基礎知識 第1回 乳がん

湘南記念病院かまくら乳がんセンター長 土井卓子先生が、乳がん治療の基礎知識を解説しています

がん治療における補完代替医療研究の最前線

金沢大学大学院医学系研究科 臨床研究開発補完代替医療講座特任教授 鈴木信孝先生が、乳がんホルモン療法施行患者におけるシイタケ菌糸体の有用性について総説的に解説されています。

第23回乳癌学会リポート

厳選口演演題を取材し、仕事・余暇を楽しめる 乳がんの新しい薬物治療のあり方について報告しています。

あなたにおススメの記事はこちら

がんと免疫力のはなし

<Web公開記事>
がんと闘うには誰もが持つ「免疫力」がキーワードになります。
素朴な疑問から、体の中の免疫の働き方、免疫力を高める方法について分かりやすく説明していきましょう。

がん温熱療法 ハイパーサーミア「サーモトロンRF−8」

<Web公開記事>
ハイパーサーミア(がん温熱療法)装置「サーモトロンRF – 8」、改良型電磁波加温装置「ASKI RF–8」を開発した、元株式会社山本ビニター専務取締役、現株式会社ピー・エイチ・ジェイ取締役最高技術部長・山本 五郎(いつお)氏にお話を伺いました。

がん種別・治療状況別の研究成果比較

<Web公開記事>
免疫力改善成分ごとに、ヒト臨床試験の論文について、紹介しています。

【特集】「新連載」山田邦子の がんとのやさしい付き合い方・人気の記事

山田邦子のがんとのやさしい付き合い方:耐える治療から、やさしい治療やケアへ(インタビュアー:乳がんを経験された山田邦子さん)

乳がんを経験された山田邦子さんが、がん患者さんが安心して治療に臨める情報を発信

【小林製薬】「シイタケ菌糸体」患者の低下しやすい免疫力に作用!

<Web公開記事>
がん患者さんのQOL(生活の質)をいかに維持していくか、小林製薬株式会社中央研究所でがんの免疫研究を続けている松井保公さんにお話を伺いました。

【南雲吉則】がん予防のための がんを寄せつけない「命の食事」 

<Web公開記事>
テレビでおなじみの南雲吉則先生が提唱する「がんから救う命の食事」を中心に、がん患者さんとそのご家族にも役立つ、がん予防のための「食の在り方」について、話を伺った。