山田邦子のがんとのやさしい付き合い方(第3回 )
小林製薬 そこが知りたい「シイタケ菌糸体」
患者の低下しやすい免疫力が上がったまま維持できたことに注目!

 今や日本国民の二人に一人ががんに罹り、「5年生存率」が50%を超えるといわれています。しかし治療が終わってもなお、多くのがん患者さんは、「いつまでたってもがんを意識して生活している」と感じているようです。
 そこでがん患者さんのQOL(生活の質)をいかに維持していくか……。がんとのやさしい付き合い方を求めて、連載第3回目は小林製薬株式会社中央研究所でがんの免疫研究を続けている松井保公さんにお話を伺いました。

松井保公(まつい・やすのり)
小林製薬株式会社中央研究所 研究開発部 研究開発第2 グループ課長。
2001年京都大学大学院生命科学研究科修士課程修了後、小林製薬株式会社入社。
小林製薬中央研究所にて、一貫してがん免疫分野に従事し、基礎研究から臨床研究まで幅広い領域で研究活動を続けている。

松井保公(まつい・やすのり)
小林製薬株式会社中央研究所 研究開発部 研究開発第2 グループ課長。
2001年京都大学大学院生命科学研究科修士課程修了後、小林製薬株式会社入社。
小林製薬中央研究所にて、一貫してがん免疫分野に従事し、基礎研究から臨床研究まで幅広い領域で研究活動を続けている。

構成●宮西ナオ子
撮影●早坂 明

がん患者さんの抱く不安を少しでも減らすことができればと、20年前に研究に着手

山田
 私もがんになって11年が経過しますが、今では健康についての講演会や勉強会で話す機会も多くなりました。「免疫力を高めましょう」という内容がメインなのですが、そのためには笑う、ストレスをためない、大きな声で話す、身体を温かくするというような生活習慣の改善に加えて、栄養士の資格を持っていることもあり、食品についても有効だと思われるものを紹介しています。キノコ類、海藻類、ミカンなどの柑橘系などがよいと伝えていますが、今回は御社で取り組んでいらっしゃるシイタケ菌糸体についてお話を聞けるというので、とても興味深く思って来ました。まずは御社のがん免疫研究の特徴について教えてくださいますか?

大会議室において行われた。手前に写っているのがシイタケ菌糸体

インタビューは2 月13 日(火)、太田プロダクション大会議室において行われた。手前に写っているのがシイタケ菌糸体

松井
 弊社は創立100周年の大阪の会社です。社員は約3000人いますが、古くから医薬品をはじめとして、衛生雑貨品や家庭雑貨品など多数の製品を世に出してきました。がんの研究を始めたのはアガリクスや霊芝などのキノコ類がよいといわれはじめた20年前からです。

山田
 もう20年も研究をされているのですか? 本当にありがたいことです。

NHK の「好きなタレント調査」で8年連続1 位を記録した山田邦子さん。2007年、乳がん
になり手術をする。以後、「がん」についての講演などを精力的に行い、2008年には〝がん撲滅〟を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、以後団長を務めている。2008年〜2010年には厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」メンバーとして活躍

NHK の「好きなタレント調査」で8年連続1 位を記録した山田邦子さん。2007年、乳がん
になり手術をする。以後、「がん」についての講演などを精力的に行い、2008年には〝がん撲滅〟を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、以後団長を務めている。2008年〜2010年には厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」メンバーとして活躍

松井
 研究を続けながら、がん患者さんやご家族の方たちとさまざまな話をしてきました。そしてがんと向き合う生活の中で、みなさんの抱く不安を少しでも減らすことが重要だと考えるようになったのです。
 研究当初、がん患者さんの免疫を上げる努力をしても、また下がってしまうことが多いことに気が付きました。そこで免疫関係の研究を続けていくうちに、シイタケ菌糸体のエキスを使った場合、患者さんの免疫の数値が上がったまま維持されることに注目しました。しかもシイタケ菌糸体が「がん細胞によって人間の免疫力を抑え込んでしまう状態(免疫抑制)」を回復させるのではないかということがわかってきたのです。

「がんの免疫抑制細胞解除の研究成果のほかにも、抗がん剤治療中やホルモン療法中の免疫力/ QOL(体力など)の研究成果、再発予防に関する研究成果などもあります」

「がんの免疫抑制細胞解除の研究成果のほかにも、抗がん剤治療中やホルモン療法中の免疫力/ QOL(体力など)の研究成果、再発予防に関する研究成果などもあります」

山田
 なるほど……。私もがん細胞の周りには、何か、がんを保護するような、がん細胞を守るようなものがついているような気がしていました。それが、がん細胞と一緒に成長しているように思っていたのですが……。その「何か」がわかってきたのですね。

松井
 そうですね。がん周辺の細胞については非常に複雑で難しいのですが、がんを守っている細胞のひとつに「免疫抑制細胞」があります。この細胞が人間の持つ免疫力を無力化してしまうわけです(図1参照)

図1 免疫抑制のメカニズム(提供:小林製薬)

図1 免疫抑制のメカニズム(提供:小林製薬)

松井
 そこでこの免疫抑制細胞とシイタケ菌糸体エキスの関係について研究することになり、2001年から大阪大学、福岡大学、金沢大学をはじめとして数多くの研究機関とともに進めています。

風邪菌が体に入れば免疫が働くように、シイタケの菌糸体にも免疫が反応する

山田
 シイタケといえば、実は私も縁があるのです。東日本大震災のとき、何か私にできることがあればと思って調べたところ、陸前高田のほうに山田町という町がありました。私は東京生まれで田舎がないので、以後、故郷だと思って支援させていただいています。「復興ふるさと大使」にも選んでいただきましたが、なんと、ここはシイタケの産地なのです。山田町の人はシイタケを食べているから免疫力もあるのでしょうか(笑)。とても元気です。もちろん辛いことも多々あったと思うのですが、力強く復興を遂げている最中です。

松井
 そうですか! 知りませんでした。私もシイタケの研究をしていると愛着がわいてきますから、たぶん、他の人よりもたくさん食べているのではないかと思います。今度山田町から取り寄せてみましょう。

山田
 大変おいしいですよ。私はいつも大量に購入しています。

松井
 シイタケは低カロリーなのに必須栄養素を豊富に含み、しかも美味ですからね。ところで私たちが普段食べているのは「子実体」という実の部分ですが、われわれが研究しているのはこの部分ではなくシイタケの根の部分にある菌糸体で子実体の母体のような存在です(図2参照)。

図2 根の部分にあるシイタケ菌糸体

図2 根の部分にあるシイタケ菌糸体

(菌糸体の株を見せながら(写真1参照))

写真1 シイタケ菌糸体

写真1 シイタケ菌糸体

この白いものが菌糸体で、栄養をため込み、生長がピークを迎えたとき、ある刺激を与えるとシイタケが生えてくるわけです。β-グルカン(ベータグルカン)のほか、シイタケ菌糸体に特徴的といわれる有用成分として、αグルカン(アルファグルカン)、シリンガ酸、バニリン酸、アラビノキシラン、リグニンなどの複数の有用な栄養成分が知られています。

山田
 (目の前にある菌糸体を見て)ほお。初めて拝見しました。キノコの栽培は山中で見たことがありますが、そのおおもとのようなものですか? カビとは違うのですか?

松井
 そうですね。「おおもと」の「おおもと」といった存在ですね。大きなくくりで生物学的にい
えばカビもキノコ類も、「菌類」という分類になります。菌類にはほかには、麹菌や乳酸菌など古くから健康に良いとされているものが多くありますよね。

山田
 ふーむ。今までカビや菌については考えたことがなかったですが、確かに乳酸菌や納豆菌など「菌」といわれるものは、昔から身体によいといわれて食べられていますね。

松井
 菌は生きていますからね。私たちは自分の身体とは異なる生物を身体に入れることになります。たとえば風邪の菌が入れば、免疫が発動して、その菌をやっつけますね。同様に食事として菌を摂取する場合でも、菌の種類によっては、身体が反応し、低下した免疫力が回復するトリガー的な役割をするともいえるでしょうね。

二重盲検法により免疫の低下・抑制を改善することを立証

山田
 ほかにも研究の成果はありますか?

松井
 天然物由来のものを研究するのはとても難しいですが、免疫の低下・抑制を改善することや過剰な免疫反応を抑制すること、そして、がんの免疫抑制を解除する研究成果のほかにも、抗がん剤治療中やホルモン療法中の免疫力/QOL(体力など)の研究成果などがあります。また再発予防に関する研究にも取り組んでいます。シイタケ菌糸体の安全性の確認や健康な肝臓の機能の維持に関する研究についても論文や学会で多数発表しています(表1参照)。

No. 報告概要 主要実施
施設
引用
1. 二重盲検試験 *

QOL、免疫低下のモデルにおいて、プラセボ群に比べシイタケ菌糸体摂取群では有意にQOL(QOL-ACD)、免疫抑制状態(Tregの増加)が改善された。

山口大学 Nagashima Y. Molecular and Clinical Oncology. 7(3) 359-66. 2017
2. 疲労に対するシイタケ菌糸体の効果を調べたところ、摂取1ヶ月で有意に疲労が改善された。 多施設
共同研究
Kyo H. 日本補完代替医療学会誌 14. 57-64. 2017
3. 免疫抑制の状態において、観察期間に比べ、シイタケ菌糸体の摂取によりQOL(EORTC QLQ-C30)や免疫抑制状態(Tregの増加)が改善された。 ビオセラCL Tanigawa K. Altern Ther Health Med 22:36-42. 2016
4. 免疫低下状態において、観察期間に比べ、シイタケ菌糸体の摂取によりQOL(SF-36)、免疫能(IFN-γ)が改善された。 金沢大学 Suzuki N. Asian Pac J Cancer Prev 14:3469-72 2013.
5. QOLや免疫低下の状態において、観察期間に比べ、シイタケ菌糸体の摂取によりQOL(QOL-ACD)や免疫能(NK活性)が維持された。 山口大学 Nagashima Y. Onco Targets Ther 6: 853-9. 2013
6. 免疫低下の状態において、観察期間に比べ、シイタケ菌糸体の摂取によりQOL(QOL-ACD)や免疫能(NK活性)、免疫抑制指標(IAP)が改善された。 川崎医大 Yamaguchi Y. Am J Clin Med 39. 451-9. 2011.
7. 免疫低下の状態において、観察期間に比べ、シイタケ菌糸体の摂取によりQOL(副作用の発生)の低下が改善された。 近畿大学 Okuno K. Asian Pac J Cancer Prev 12:1671-4. 2011.
8. 二重盲検試験 *

軽度肝機能異常者がシイタケ菌糸体を長期摂取すると肝機能AST, ALTが改善した。

大阪大学 Kajimoto O.日本臨床栄養学会雑誌 22. 22-31. 2000

表1 シイタケ菌糸体の主な臨床研究一覧(提供:NPO 法人代替医療科学研究センター)
*二重盲検試験:患者を2グループに分け、どちらのグループに試験薬と偽薬のどちらを与えたのか、医師も患者も分からないようにして行う試験

山田
 今後の研究では、どのようになっていくのでしょうか?

松井
 一言でがんといってもいろいろな種類があり、患者さんも多数いらっしゃいますので免疫の状態も異なってきますから、今後もより多くの方を対象にし、有用性が明らかになるように研究をしていきたいと思います。

山田
 すでに総合病院やクリニックなど全国の研究機関での臨床研究実績が多数あり、報告概要が出されていますね。このなかで「二重盲検(にじゅうもうけん)」と書かれた研究がありますが、これは、どのような臨床研究なのですか?

松井
 「二重盲検法」とは、医学の試験や研究で実施している薬や治療法などを医師からも患者さんからも秘密にして行う方法です。この盲検化を含んだランダム化二重盲検比較試験は客観的な評価を得るために用いられているので、かなりエビデンスレベルが高く、最もしっかりした研究方法ともいえるでしょう。

山田
 具体的にはどのようにするのですか?

松井
 プラセボ効果を知っていますか? 患者さんに薬を飲んでもらうとき、偽薬を飲んでもらう人たちと、本当の薬を飲んでもらう人たちとに選定します。そしてどのような結果が出るのかを測定するわけです。これは患者さんにも医師にも知らせずに行います。患者さんによっては「医者から勧められたから体調がよくなる」と信じ込んでいる方もいらっしゃり、それは「病は気から」的に、その方の意識が作用する部分もあるわけです。
 そこで試験の結果、もし偽薬と本当の薬が同じような効果にすぎないならば、その薬はあまり意味がないことになります。もちろん標準治療を行っていらっしゃる患者さんが対象ですし、倫理的にも配慮されて行っているもので、きわめて信頼性が高いものです。

がんの暴走を防ぎ、 うまく付き合っていくのを助けてくれるのが免疫の働きである

山田
 私も乳がんになって11年の間に考え方が変わってきました。やっと理解できたのは、がんは完治する病気ではないということです。もちろん治療は終わっており、定期的な検診だけになっていますが、それでもどこかに「がん患者」という意識が残っており、気が抜けません。いつまでもがんと付き合っていかねばならないわけです。
 でも考えてみれば、自分の身体や健康に気を付けるようになりますから、何も考えずに暴飲暴食をしている方よりもむしろ健康的な生活をし、元気でいられるのかもしれませんけれどね。

「がんとは長い付き合いになりますが、自分の身体や健康に気を付けるようになりますから、何も考えずに暴飲暴食をされている方よりも健康的な生活をし、元気でいられるのかもしれませんね」

「がんとは長い付き合いになりますが、自分の身体や健康に気を付けるようになりますから、何も考えずに暴飲暴食をされている方よりも健康的な生活をし、元気でいられるのかもしれませんね」

松井
 そうですね。一般的にがん治療の考え方としては、がん細胞の根絶が目的ではなく、たとえがん細胞が体内にあっても、がん細胞が暴れるのを防ぎ、免疫のバランスが保たれた状態が続けば、がんが再発するのを防げるのではないかということです。つまりがんの暴走を防ぎ、うまく付き合っていくのを助けてくれるのが免疫の働きと考えられますね。

山田
 おっしゃる通りですね。シイタケ菌糸体エキスがよいということはよくわかりました。

松井
 今後も免疫への作用をさらに研究しQOL(生活の質)の改善などを目指して、がんばっていきたいと思います。

山田
 それにしても不思議ですね。もともと元気印だった私が、人生のあるとき突然、がんという病気になり、後半の人生は健康について話していく……。何らかの使命があったのだとは思いますが、しかしまさか今日という日、「シイタケの菌糸体」について対談する日が訪れようとは!(笑)今、生まれて初めて菌糸体について考えていますが、あまりに奥が深く、興味津々になりました(笑)。
 そしてもうひとつ、今まで知らなかった分野で、このような研究を地道にしてくださる方たちがいらっしゃることを知り、がん患者の生活や健康が支えられているのがよくわかりました。大変だとは思いますが、これからもぜひ私たちのために研究を続けてください。
 本日は、本当にありがとうございました。

対談を終えたあと、大会議室で記念撮影

対談を終えたあと、大会議室で記念撮影

本記事の関連リンク

より詳しい研究内容は「小林製薬の癌免疫研究」まで
小林製薬の癌免疫研究>>

山田 邦子●やまだ・くにこ●
1960年東京生まれ。1981年芸能界デビュー。以後、司会・ドラマ・舞台・講演・執筆などマルチな才能を発揮、自身の名前が番組名につく冠番組を多数持つ。NHK「好きなタレント調査」では8年連続第1位を記録した。2007年、健康番組出演がきっかけで乳がんが見つかり、手術をする。その後は「がん」についての講演なども精力的に行い、2008年には〝がん撲滅〟を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、以後団長を務めている。特技は三味線・イラスト・ウクレレ・ジュエリーデザインなど。栄養士の資格を持ち、趣味は釣り・リサイクル工芸・料理・プロレス観戦。将来の夢は農業に従事すること。沼津市観光大使、とかち観光大使、岩手県山田町復興ふるさと大使、北海道陸別町友好町民の会親善大使、東京都青少年名誉健全育成協力員。2008~2010年には厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」メンバーとなる。

山田 邦子●やまだ・くにこ●
1960年東京生まれ。1981年芸能界デビュー。以後、司会・ドラマ・舞台・講演・執筆などマルチな才能を発揮、自身の名前が番組名につく冠番組を多数持つ。NHK「好きなタレント調査」では8年連続第1位を記録した。2007年、健康番組出演がきっかけで乳がんが見つかり、手術をする。その後は「がん」についての講演なども精力的に行い、2008年には〝がん撲滅〟を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、以後団長を務めている。特技は三味線・イラスト・ウクレレ・ジュエリーデザインなど。栄養士の資格を持ち、趣味は釣り・リサイクル工芸・料理・プロレス観戦。将来の夢は農業に従事すること。沼津市観光大使、とかち観光大使、岩手県山田町復興ふるさと大使、北海道陸別町友好町民の会親善大使、東京都青少年名誉健全育成協力員。2008~2010年には厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」メンバーとなる。

山田邦子のがんとのやさしい付き合い方

【特集】「新連載」山田邦子の がんとのやさしい付き合い方・人気の記事

山田邦子のがんとのやさしい付き合い方:耐える治療から、やさしい治療やケアへ(インタビュアー:乳がんを経験された山田邦子さん)

乳がんを経験された山田邦子さんが、がん患者さんが安心して治療に臨める情報を発信

[小林製薬] 「シイタケ菌糸体」 患者の低下しやすい免疫力が上がったまま維持!

<Web公開記事>
がん患者さんのQOL(生活の質)をいかに維持していくか、小林製薬株式会社中央研究所でがんの免疫研究を続けている松井保公さんにお話を伺いました。

[ピー・エイチ・ジェイ]がん温熱療法 ハイパーサーミア「サーモトロンRF−8」

<Web公開記事>
ハイパーサーミア装置「サーモトロンRF – 8」、改良型電磁波加温装置「ASKI RF–8」を開発した、現株式会社ピー・エイチ・ジェイ取締役最高技術部長・山本五郎氏にお話を伺いました。