(がんの先進医療: 2019年4月発売 33号 掲載記事)

山田邦子のがんとのやさしい付き合い方(第7回 )
そこが知りたい:オーソモレキュラー療法に基づいたがん治療

 がんの治療技術が高まる今、さまざまな試みが注目されています。時代の変化とともに幅広い分野で多種多様な研究がなされ、最先端の技術や考え方も紹介されています。そこで、どのような治療方法を取り入れていけばよいのか? 統合医療も含めてより多くの情報を知り、自分の選択肢の中に含めておくのは、がんの闘病、再発・転移や予防においてもきわめて重要なことといえるでしょう。
 連載第7回目はEMI CLINICの半田えみ院長(内科医)にオーソモレキュラー療法について話を聞きました。

半田えみ(はんだ・えみ)
1993年獨協医科大学卒業。獨協医科大学病院アレルギー内科に入局。中医師に漢方、鍼を学ぶ。約15 年前よりウイーン、バンクーバー、オーストリアなどでがん統合医療、オーソモレキュラー医学に基づく栄養療法を学ぶ。ベトナム・ホーチミン、シンガポールなど海外勤務も経験し帰国。2018 年5 月7 日宇都宮市鶴田にEMI CLINIC を開業。
オーソモレキュラー医学(分子整合栄養医学)に基づいた栄養療法にて病気治療、オーダーメイドのがん栄養療法、未病・予防医療を行う。定期的なセミナー開催で国内外の
栄養療法の情報を発信している。

半田えみ(はんだ・えみ)
1993年獨協医科大学卒業。獨協医科大学病院アレルギー内科に入局。中医師に漢方、鍼を学ぶ。約15 年前よりウイーン、バンクーバー、オーストリアなどでがん統合医療、オーソモレキュラー医学に基づく栄養療法を学ぶ。ベトナム・ホーチミン、シンガポールなど海外勤務も経験し帰国。2018年5月7日宇都宮市鶴田にEMI CLINICを開業。
オーソモレキュラー医学(分子整合栄養医学)に基づいた栄養療法にて病気治療、オーダーメイドのがん栄養療法、未病・予防医療を行う。定期的なセミナー開催で国内外の栄養療法の情報を発信している。

構成●宮西ナオ子
撮影●早坂 明

オーソモレキュラー療法とは、栄養を補うことで健康を維持する補完代替医療

山田
 先生はオーソモレキュラー療法をされていらっしゃいますが、これは、いったい、どのようなものなのですか?

半田
 オーソモレキュラー(Orthomolecular)という単語は、もともとノーベル賞受賞者のライナス・ポーリング博士によって提唱されました。ビタミンやミネラルなどの栄養素を分子レベルで一人一人に対して正しい量を与えることを目的としています。
 簡単に言うと栄養素を補うことで、健康維持や病気治療をする基本の栄養療法です。薬による対症療法を極力せず食事、メディカルサプリメント、高濃度のビタミンCなどの点滴などです。一般の保険診療で行われる栄養士が指導する栄養学や食事療法とは異なり、分子栄養学という学問に基づいて分子レベルから考察していくものです。

インタビューは2019 年3 月12 日(火)、太田プロダクション大会議室において行われた

インタビューは2019 年3 月12 日(火)、太田プロダクション大会議室において行われた

山田
 私も栄養士の資格を持っていますが、それとは異なるわけですね?

半田
 カロリー計算をするようなものではなく私たちの身体に必要なビタミン、ミネラル、タンパク質などを分子レベルで測定し、過不足分を調整します。食事指導も一部には入ってきますが、食事だけで限界があればサプリメントなどを使います。

山田
 サプリメントというと最近ではコンビニでも販売しているので、飲んでも仕方がないのではないかと思ったりしますが……。

NHK の「好きなタレント調査」で8年連続1 位を記録した山田邦子さん。2007年、乳がんになり手術をする。以後、「がん」についての講演などを精力的に行い、2008年には〝がん撲滅〟を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、以後団長を務めている。2008 年〜2010 年には厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」メンバーとして活躍。リカちゃんキャッスルアンバサダーとしても活動中
*山田邦子芸能生活40周年記念公演* 山田邦子の 門
東京:5月22日(水)~29日(水)紀伊国屋サザンシアター TAKASHIMAYA
名古屋:6月5日(水)・6日(木)  名古屋市青少年文化センターアートピアホール

NHK の「好きなタレント調査」で8年連続1 位を記録した山田邦子さん。2007年、乳がんになり手術をする。以後、「がん」についての講演などを精力的に行い、2008年には〝がん撲滅〟を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、以後団長を務めている。2008 年〜2010 年には厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」メンバーとして活躍。リカちゃんキャッスルアンバサダーとしても活動中

*山田邦子芸能生活40周年記念公演* 山田邦子の 門
東京:5月22日(水)~29日(水)紀伊国屋サザンシアター TAKASHIMAYA
名古屋:6月5日(水)・6日(木)  名古屋市青少年文化センターアートピアホール

半田
 一般的に使われているサプリとは少し異なります。基本的に海外の医療現場で使用されている医療向けサプリを取り扱います。医師免許証と一緒に薬鑑証明を厚労省に通しているものがほとんどです。

山田
 お墨付きというものですね。

高濃度ビタミンC点滴療法は、欧米では天然の抗がん剤として用いられている

山田
 オーソモレキュラー療法の中で、私がとても興味深く思ったことは高濃度ビタミンC点滴療法です。私は初期の乳がんでしたが、食材の好き嫌いが激しかったのです。その中に柑橘系があります。今は頑張って食べられるようになりましたが、ビタミンの高濃度というのはどのくらい入れるのですか?

半田
 25グラム、50グラムなど、その人のニーズに合った量を入れていますね。

山田
 これって日焼けにもよさそうですね。

半田
 美白効果も強いですからね。美容、健康増進などの効果があります。

山田
 先生もぴちぴちされていますが、これをやられているのでは?

半田
 月に2回くらいやっていますよ。

山田
 結果が出ていますね。がんの患者さんにも使えるのですね?

半田
 欧米では天然の抗がん剤として用いられています。直接血管内に投与することで、ビタミンCの血中濃度を上昇させる効果が期待できます。がんを殺し、免疫力を上げ、抗炎症(炎症の鎮静化)が期待できますし、抗がん剤の影響での脱毛もしにくくなりますね。

山田
 それは朗報ですね。日本全国、どこでもできるのですか?

半田
 最近は多くの医療機関でできます。都内でも高濃度のビタミンC点滴療法やオーソモレキュラー療法をする先生は増えていますよ。

「私たちが行うデトックスは医療的なもので、細胞内の毒素を排出します。体内に蓄積された重金属、添加物、薬、プラスティックなども解毒していきます」

「私たちが行うデトックスは医療的なもので、細胞内の毒素を排出します。体内に蓄積された重金属、添加物、薬、プラスティックなども解毒していきます」

きっかけは、薬のせいで元気が出ない、体調がすぐれないと患者さんに言われたこと

山田
 先生はなぜ、このような療法をするようになったのですか?

半田
 最初は大学病院で糖尿病・高血圧・高脂血症などの数値を下げる薬を出しながら食べ物制限の指導などをしていました。でも患者さんはいっこうに改善しない。そればかりか薬のせいで元気が出ない、体調がすぐれないと言われたことがきっかけです。薬漬けに疑問を抱き、西洋医学だけではだめだと思ったのです。以後、東洋医学や栄養療法に巡り合いました。
 確信したのは、妹が産後うつになったとき、栄養障害だと知り栄養療法で改善しました。母も4年ほど前に口腔のがんになり病院で手術をしたのですが、口が開かずに食べられなくなりました。普通の病院ではがんの種類ごとに栄養管理をしないので、すごい貧血になり、輸血が必要になりました。私たちは輸血を拒んで、栄養療法を行ったところ輸血なしで貧血は改善し、おかげさまで命をとりとめ、今は元気にしています。

山田
 素晴らしいですね。がん患者さんがいらしたときの治療の流れを教えてください。

半田
 当クリニックはすべて自由診療になっていますので、最初にカウンセリングをします。通常の診察の何倍も時間をかけて、生活環境、食事歴、治療歴などを詳しく問診します。クリニックには体内のミネラルを調べる機械もあり総合的に診断を行っています。その後、オーソモレキュラー療法をベースに足りないものを補います。
また、普段の食事についてもカウンセリングします。オーガニックやトランス脂肪酸フリーなどの良い食材を積極的に摂り、精製された主食や甘いものを控えていただきます。またスーパーなどで売られている食品の裏に書かれた成分表記の見方をお伝えし実行してもらいます。さらにオメガ3・6・9脂肪酸などをバランスよく摂取することなど、幅広く指導しています。

CTC検査は、がんの再発、転移、治療の判定などの目安が得られる

山田
 オーソモレキュラー療法をするとき、患者さん一人一人の体内の栄養素は、どのようにして調べるのですか?

半田
 栄養状態の詳細は外見を見ても、レントゲンを見てもわかりません。詳しく確認するためには基本栄養採血をし、体に必要な栄養素が摂れているかどうかを調べます。一般的な採血や検診では正常範囲内とされても、実は栄養バランスがとれていない患者さんを見つけることもできます。
 またがん患者さんには、ギリシャのラボにリキッドバイオプシーと呼ばれる別途採血によるCTC検査を勧めています。これは、初期のがん細胞から遊離したもので離れた器官にがんを広げる可能性がないかを調べる「循環腫瘍細胞」と、再発、転移の大元で、がんの根源といわれている「循環幹細胞」を調べる検査です。これらの検査によって個人個人のがんの循環細胞の性格、病態がわかるため、がんの再発と転移の予防、術後にどれくらいの治療が必要かなどの目安が得られます。さらに抗がん剤、天然成分のサプリメントの感受性、放射線治療の効果判定もできます (図1・図2) 。

図1 抗がん剤の感受性検査

図1 抗がん剤の感受性検査

図2 天然の感受性検査

図2 天然の感受性検査

もちろん食事指導、栄養指導も行いますよ。これは血糖調節にもつながりますが、がんの患者さんの場合は、糖質制限によって、がん細胞のエネルギー源である「ブドウ糖」と、がん細胞の増殖を促進させる「インスリン」を抑制させる方向に導きます。

まず悪いものを体外に出す身体の断捨離をすると、栄養素の吸収率を高め、消化酵素を分泌しやすくなる

山田
 ほかに、デトックスにも力を入れておられるようですが。

半田
 最近では解毒つまりデトックスを推奨しています。必要な栄養素を摂る前に、まず悪いものを体外に出す身体の断捨離をしないと効果も薄いからです。その後、オーソモレキュラー療法に入ると効果的です。
 方法は、毒素を細胞から血中に運び出し肝臓、腎臓、消化管、皮膚などから効果的に排泄できるようにします。ビタミン、ミネラル、ハーブ類を使用し押し出し、そして、デトックスで使う毒素結合剤はチャコール(炭)です。デトックスでサプリメントの吸収率を高め、消化酵素を分泌しやすくする働きがあります。

山田
 デトックスというと、一般的には3日間から4日間かけて行う「断食」という認識がありましたが、それとは異なりますか?

半田
 今、断食、ファスティング、デトックスという言葉が混乱して使われていますが、基本的には「身体を休める」ということでは、それぞれ意味があると思います。ただその期間に食事をせずに単に休ませているだけでは、細胞の中から毒素を出すことができません。大切なのは細胞の中に入ったものを出すことです。
 私たちが行うデトックスは医療的なもので、細胞内の毒素を排出します。解毒は主に肝臓で行うので肝臓を整え、体内に蓄積された重金属、添加物、薬、プラスティックなども解毒していきます。女性ホルモンのエストロゲンもホルモン代謝がうまくいかないと卵巣がんや乳がんの原因になりますからね。

山田
 排水溝がつまっている状態を改善するということですね。やはり排水管からお掃除をしなくては……。

「排水溝がつまっている状態を改善するということですね。やはり排水管からお掃除をしなくては……」

「排水溝がつまっている状態を改善するということですね。やはり排水管からお掃除をしなくては……」

半田
 それ、素晴らしい例えですね。使わせていただいていいですか?(笑)

山田
 もちろんですよ(笑)。がんの患者さんでもデトックスができますか?

半田
 がんの治療中でもできます。たとえば抗がん剤の治療中に栄養状態が悪いと、お薬が効きにくくなります。そのため薬が増量されたり、効果がないと判断され、せっかく合っている薬なのに違う薬に変えられてしまったりします。でもデトックスをすることにより、栄養が身体を巡るようになれば薬も効
いてきます。
それに抗がん剤を用いた治療で薬剤や添加物も体内に残っています。そういうものを断捨離するとよいのです。

山田
 私は今年の年明けにインフルエンザでひどい目に遭い、その後、初めて花粉症になって、今日も目がかゆいのですが……。

半田
 デトックスは花粉症にも効果があります。誰でも加齢に伴い毒素がたまりますから、年間2回くらい医療レベルでの大きな解毒を行い、週末や疲れたときに2、3日のファスティングや断食をするとよいですね。

対談を終えたあと、記念撮影

対談を終えたあと、記念撮影

予防医療として栄養や食事の大切さを理解していただけるよう啓発していきたい

山田
 最後に半田先生の今後の課題や抱負、具体的な活動について教えてください。

半田
 一人でも多くの方に、栄養素が何よりの薬になるという意識改革をしていただきたいと思っています。そのためにはオーソモレキュラー療法を普及させること。そしてストレスをためないようにしながら、予防医療として栄養や食事の大切さを理解していただけるよう啓発していきたいですね。

山田
 普段から健康づくりをすることですね。私も定期的にジビエを食べて元気をもらっています。ジビエを食べた翌日は身体が温かくなりますからね。それと私は栄養バランスのよい餃子が大好きで、宇都宮市の餃子の永世伝道師をやっています。先生のクリニックは宇都宮ですよね。駅前に餃子像がありますが、あれをつくったのは私なんですよ(笑)。

半田
 まあ、すごい! ご縁ですね!

山田
 ぜひとも先生のクリニックにも伺いたいですね。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

山田 邦子●やまだ・くにこ● 1960年東京生まれ。1981年芸能界デビュー。以後、司会・ドラマ・舞台・講演・執筆などマルチな才能を発揮、自身の名前が番組名につく冠番組を多数持つ。NHK「好きなタレント調査」では8年連続第1位を記録した。2007年、健康番組出演がきっかけで乳がんが見つかり、手術をする。その後は「がん」についての講演なども精力的に行い、2008年には〝がん撲滅〟を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、以後団長を務めている。特技は三味線・イラスト・ウクレレ・ジュエリーデザインなど。栄養士の資格を持ち、趣味は釣り・リサイクル工芸・料理・プロレス観戦。 将来の夢は農業に従事すること。沼津市観光大使、とかち観光大使、岩手県山田町復興ふるさと大使、北海道陸別町友好町民の会親善大使、東京都青少年名誉健全育成協力員。2008~2010年には厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」メンバーとなる。リカちゃんキャッスル25周年記念アンバサダー(2018年5月3日〜2019年5月2日)としても活動中。

山田 邦子●やまだ・くにこ●
1960年東京生まれ。1981年芸能界デビュー。以後、司会・ドラマ・舞台・講演・執筆などマルチな才能を発揮、自身の名前が番組名につく冠番組を多数持つ。NHK「好きなタレント調査」では8年連続第1位を記録した。2007年、健康番組出演がきっかけで乳がんが見つかり、手術をする。その後は「がん」についての講演なども精力的に行い、2008年には〝がん撲滅〟を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、以後団長を務めている。特技は三味線・イラスト・ウクレレ・ジュエリーデザインなど。栄養士の資格を持ち、趣味は釣り・リサイクル工芸・料理・プロレス観戦。
将来の夢は農業に従事すること。沼津市観光大使、とかち観光大使、岩手県山田町復興ふるさと大使、北海道陸別町友好町民の会親善大使、東京都青少年名誉健全育成協力員。2008~2010年には厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」メンバーとなる。リカちゃんキャッスル25周年記念アンバサダー(2018年5月3日〜2019年5月2日)としても活動中。

山田邦子のがんとのやさしい付き合い方

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