(監修:国立がん研究センター中央病院 泌尿器・後腹膜腫瘍科外来医長 込山元清先生)

1.腎臓がんとは

1-1.腎臓がんとは

  • 腎臓がんには、進行の遅いものから速いものまで、幅広い性質のがんが含まれる。
  • 早期には自覚症状がないため、症状から腎臓がんを早期発見することはできない。
  • 他の病期の精密検査などで腎臓がんが偶然見つかることが増えている。

腎臓は腹部の後ろ側に位置する左右一対の臓器で、主に血液から老廃物を濾過(ろか)して尿を作る働きをしています。その他、ホルモンを分泌して血圧や尿量を調節したり、ビタミンDを活性化したりする役割を担っています。

一般に「腎臓がん」という場合には、腎細胞がんのことを指します。腎細胞がんは、尿を生成する機構の一部である近位尿細管の細胞が、がん化した病気です。

図:腎臓がん

がん研究振興財団がまとめた『がんの統計’14』によれば、「腎・尿路(膀胱を除く)がん」の5年相対生存率(腎・尿路(膀胱を除くがんと診断された人で5年後に生存している人の割合が、日本全体で5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかを表す)は、65.7%となっています。

他のがんの5年相対生存率と比較してみると、胃がんの63.3%や直腸がんの67.5%と近く、治りにくいとされる肺がんの29.8%、肝臓がんの27.9%などに比べると、高い割合になっています。ただし、腎臓がんの中には、進行が比較的遅いおとなしいものから、進行が速く転移しやすい悪性度の高いものまで、かなり性質の異なるがんが含まれています。それが腎臓がんの特徴でもあります。

図:がん種別5年相対生存率

(引用:全国がん罹患モニタリング集計 2003-2005年生存率報告
独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書)

腎臓がんは早期の段階では、自覚症状が現れることはほとんどありません。そのため、症状から腎臓がんを早期に発見することはできません。しかし、最近は早期に見つかる腎臓がんが増えています。CTやMRIなどの画像検査が進歩したことや、健康診断を受ける機会が増えたことで、他の病気の精密検査などを行ったときに、腎臓がんが小さなうちに、偶然見るかることが増えているのです。また、がんの進行や転移に伴って、貧血、倦怠感、発熱、食欲不振などの症状や、肺転移、骨転移による骨折、脳転移に伴うけいれんなどの症状が現れ、腎臓がんが発見されることもあります。

1-2.腎臓がんの検査

  • 腎臓がんの診断には、ダイナミックCT検査と腹部超音波検査の組み合わせが有効。
  • 画像検査で腎臓がんと判断できれば、手術前に組織を調べる病理診断は行われない。
  • 病期診断のために、転移の有無を調べる検査が必要になる。

腎臓がんの検査は画像検査が中心となっています。腎臓がんの疑いがある場合、まず行われる検査は、「ダイナミックCT検査」と「腹部超音波検査」です。
ダイナミックCT検査は、CT検査の際に造影剤を急速静注*し、動脈相、平衡相、遅延相と時間をずらして撮影します。それによって、腫瘍が腎臓がんであるかどうかを診断します。典型的な腎臓がんの画像は、動脈相では腎皮質と同様に腫瘍も強く染まりますが、平衡相~遅延相にかけては、腎実質よりも早く造影剤が排泄されるため、腫瘍の部分が暗く見えるのが特徴的です。

*急速静注:短時間で投与すること

腹部超音波検査は、健康診断の際にもよく行われる検査ですが、腎臓の腫瘍に対しては、超音波による見え方の特徴により、腫瘍の性質を診断するのに使われています。また、超音波検査では臓器の動きも観察できるため、手術に向けて周辺の臓器と腫瘍との関係を診断するという目的もあります。

以上の2つの検査によって、典型的な腎臓がんであれば、診断に必要な情報を得ることができます。腎臓がんであると判断できた場合には、腫瘍の組織を採取し顕微鏡で調べる病理診断*は、手術前には行われません。

*病理診断:患部から採取された組織の一部を顕微鏡で観察し、病変の有無、種類、性質などを見分けること

ダイナミックCT検査と腹部超音波検査で診断がつかない場合には、必要に応じて「MRI検査」が行われます。それでも判断がつかなければ、体の外から腫瘍に針を刺し、組織を採取する生検行われることがあります。

腎がんであると診断がついたら、治療方針を決めるために、病期(がんのステージ)診断と全身状態の確認が行われます。

病期診断のためには、転移の有無を調べる必要があります。腎臓がんが転移しやすいのは、肺、リンパ節、肝臓、膵臓、骨などです。これらの転移を調べるのに有用なのは「CT検査」です。これに、脳の転移を調べる「脳MRI検査」や、骨の転移を調べる「骨シンチグラフィ」などの検査が追加されることもあります。

さらに、「血液検査」「尿一般検査」「尿細胞診検査」を行います。血液検査では、腎機能の評価や、予後を占う因子として、血清カルシウム値、貧血の有無、CRPやLDHの異常などが調べられます。

(表)「腎臓がん診断のための主な検査」

検査名 検査のやり方 検査でわかること
ダイナミックCT検査 CTを撮影するときに造影剤を急速静注し、時間をずらして、動脈相、平衡相、遅延相を撮影する。血行状態などから、がんかどうかを判断する。 典型的な腎臓がんであれば、腎臓がんであることがわかる。
また、腎臓がんの転移の有無。
腹部超音波検査 体の外側から超音波を発信し、その反射を利用して体内を画像化する。 腫瘍の性質を診断することができる。臓器の動きも見えるため、周辺の臓器との関係もわかる。それが手術に役立つ情報となる。
MRI検査 磁気を利用して体内を断層画像として描き出す。 腫瘍が腎臓がんかどうかを診断できる。ダイナミックCT検査と腹部超音波検査で診断がつかない場合に行われる。
脳MRI検査 磁気を利用して脳を断層画像として描き出す。 脳転移の有無。
骨シンチグラフィ 放射性同位元素(アイソトープ)を利用し、骨への転移巣を画像化する。 骨転移の有無。
血液検査 血液を採取し、血球の数や機能を調べたり、生化学的に腎臓や肝臓などの機能を調べたりする。

腎機能や全身状態。

尿一般検査 尿を採取し、試験紙で尿の状態を調べたり、尿を遠心分離器にかけて沈殿物を顕微鏡で調べたりする。 腎臓の障害の有無、全身状態。
尿細胞診検査 尿を採取し、尿中の細胞を顕微鏡で調べる。 膀胱、尿管、腎盂、腎臓など尿路のがんの有無。ただし、陰性でもがんの存在を否定できない。

1-3.腎臓がんの状態を理解するための基礎知識

  • 病期は、原発巣の広がり、リンパ節転移の有無と数、遠隔転移の有無によって判定する。

腎臓がんの病期(ステージ)は、原発巣の広がり(T1~T4)、所属リンパ節転移の有無と個数(N0~N2)、遠隔転移の有無(M0、M1)によって判定します。

図:「腎がんの病期分類」

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