(監修:国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院頭頸部内科長 田原 信先生)

2.鼻腔・副鼻腔がんの治療について

2-1.鼻腔・副鼻腔がんの治療方針

  • 根治性に加え、機能の温存や整容性を考慮して治療が行われる。

鼻腔・副鼻腔がんの治療では、機能面と整容性に配慮した治療が必要です。そのため、手術も行われますが、放射線療法や化学療法を組み合わせることで、なるべく機能を残し、整容性にも配慮した治療が行われます。たとえば上顎洞がんでは、眼球近くまでがんが浸潤していることがあります。そのような場合でも、できるだけ眼球を温存する治療が行われます。ただ、眼球に浸潤しているなど、どうしても眼球を温存できないケースもあります。

2-2.鼻腔・副鼻腔がんの治療

  • 上顎洞がんは、放射線療法を中心に手術、化学療法の併用が多い。
  • 晩期毒性を軽減するためIMRTなど線量集中性の高い治療や、先進医療の粒子線治療も有効な治療・放射線治療の前に導入化学療法が行われることもある。

鼻腔・副鼻腔がんの中で最も多い上顎洞がんの放射線療法は、60~70Gyを、30~35回(週5回で6~7週)かけて照射するのが一般的です。多くは手術、化学療法と併用されます。十分ながんの減量が可能な症例では、放射線療法の併用によって、良好な局所制御が期待できます。晩期毒性※を軽減するため、線量集中性の高い照射法であるIMRT(強度変調放射線治療)なども行われます。

※晩期毒性:時間が経過して起こる副作用

根治切除が困難な鼻腔・副鼻腔がんに対しては、IMRTなどと並んで、先進医療として行われている粒子線治療(陽子線治療や重粒子線治療)も治療の選択肢となります。特にX線による放射線療法では根治可能な線量を照射できない場合でも、粒子線治療は有効な治療の選択肢です。

化学療法も行われます。根治的な放射線治療の前に化学療法を行う「導入化学療法」が行われることがあります。導入化学療法でがんを小さくすることができると、放射線治療の際に、正常組織にかかる放射線量を減らすことができます。これが導入化学療法を行う目的です。導入化学療法でどれだけがんが小さくなるかは、かなり個人差があります。

化学療法では、シスプラチン、タキサン系抗がん薬、5FUが併用されます。さらに、分子標的薬のセツキシマブが使われることもあります。

(図) 「鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がん)の治療アルゴリズム」

「鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がん)の治療アルゴリズム」

(表)「鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がん)の病期」

①「T分類(がんの大きさ、浸潤の状態など)」

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
TiS 上皮内がん
T1 上顎洞粘膜に限局する腫瘍、骨吸収または骨破壊を認めない
T2 骨呼吸または骨破壊のある腫瘍、硬口蓋および/または中鼻道に進展する腫瘍を含むが、上顎洞後壁および翼状突起に進展する腫瘍を除く
T3 上顎洞後壁の骨、皮下組織、眼窩底または眼窩内側壁、翼突窩、篩骨洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4a 眼窩内容前部、頬部皮膚、翼状突起、側頭下窩、篩板、蝶形洞、前頭洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4b 眼窩尖端、硬膜、脳、中頭蓋窩、三叉神経第二枝以外の脳神経、上咽頭、斜台のいずれかに浸潤する腫瘍

②「N分類(リンパ節への転移の状態)

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝をこえるが6㎝以下
N2b 同側の単発性リンパ節転移で最大径が6㎝以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6㎝以下
N3 最大径が6㎝をこえるリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

③「M分類(遠隔転移の状態)

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

④「病気分類」

N0 N1 N2a,N2b,N2c N3
Tis 0
T1 ⅣA ⅣB
T2 ⅣA ⅣB
T3 ⅣA ⅣB
T4a ⅣA ⅣA ⅣA ⅣB
T4b ⅣB ⅣB ⅣB ⅣB
M1 ⅣC ⅣC ⅣC ⅣC

「頭頸部癌診療ガイドライン」2013年版、日本頭頸部癌学会編(金原出版)を参考に編集部にて作成。

2-3.鼻腔・副鼻腔がんの治療で使われる薬剤

鼻腔・副鼻腔がんの治療では、主に次のような抗がん剤が使用されます。

(表) 鼻腔・副鼻腔がんの治療で用いられる主な抗がん剤

一般名 商品名 特徴 主な有害事象
シスプラチン ブリプラチン、ランダなど プラチナ(白金)製剤の一種。高い抗腫瘍効果を発揮するが、副作用も強い。 腎機能障害、白血球減少、貧血、血小板減少、悪心・嘔吐、口内炎など。
フルオロウラシル 5-FUなど 代謝拮抗薬の一種。DNAの合成を阻害して抗腫瘍効果を発揮する。 悪心・嘔吐、下痢、食欲不振、白血球減少など。
ドセタキセル タキソテールなど タキサン系抗がん剤の一種。がん細胞の分裂を妨げる働きがある。 白血球減少、貧血、血小板減少、ショック症状、浮腫など。
セツキシマブ アービタックスなど 分子標的治療薬の一種。がんの増殖などに関係する体内の特定の分子を狙い撃ちする。 高血圧、皮膚障害、消化管穿孔、血栓症など。

2-4.鼻腔・副鼻腔がん治療の合併症と副作用

手術では、切除する範囲によって、機能面や整容性に影響が及ぶことがあります。特に上顎洞がんが眼球にまで浸潤している場合など、眼球を摘出せざるを得ないケースもあります。また、上顎洞の前方を切除した場合は、頬がくぼんだ顔貌(がんぼう)になるケースもあります。

2-5.鼻腔・副鼻腔がんの治療終了後の定期検診

  • 治療後の経過観察ではCTやMRIなどの画像検査を受けることが大切。
  • 再発の可能性が高い3年間は3~4ヵ月毎に受診し、画像検査を受ける。

治療が終了し、がんがなくなったとしても、再発してくる可能性はあります。そこで、治療終了後は定期的に受診し、経過観察を続けることが大切です。治療終了から1年間は、3ヵ月ごとに受診し、診察を受け、さらにCT検査あるいはMRI検査を受けます。
再発の可能性が高いのは、治療終了後3年間なので、そこまでは3~4ヵ月ごとに画像検査を受けます。3年を過ぎたら半年に1回、5年を過ぎたら1年に1回にします。

化学放射線療法などで腫瘍が瘢痕化※(はんこんか)した場合には、PET-CT検査が適しています。CT検査で瘢痕化した部分が映った場合、そこに生きたがん細胞が残っているかどうかはわかりません。その点、PET-CT検査なら、生きている組織なのか死んだ組織なのかがはっきりします。

※瘢痕:治った状態の傷跡

治療後の経過観察では、再発のチェックだけでなく、新たながんの出現にも注意を払う必要があります。

2-6.鼻腔・副鼻腔がんの患者さんがよく気にしたり悩んだりすることQ&A

Qセカンドオピニオンは、すべき?
A
担当医の意見が第一の意見であるのに対し、他の医師の意見をセカンドオピニオンと呼びます。すべての患者さんがセカンドオピニオンを聞きに行ったほうがよいわけではありません。担当医の説明を聞き、自分で納得できれば、それで十分である場合も多いでしょう。しかし、納得がいかない場合には、これまでの治療経過・検査結果・今後の予定などを担当医に記載してもらい、別の医師の意見を聞くのもよいでしょう。そして、その結果を担当医に持ち帰って相談するのがベストです。
Q治療法を選択するときに考えるべきことは?
A
鼻腔・副鼻腔がんの治療では、機能が障害されることがあります。そこで、治療法を選択する際には、治療のゴールをはっきりさせておくことが大切です。

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