(監修:国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院頭頸部内科長 田原 信先生)

1.唾液腺がんとは

1-1.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)とは

  • 唾液腺がんの中で、最も発生頻度が高いのは耳下腺がん。

唾液腺は唾液を分泌する器官で、大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)と小唾液腺に分けられます。その唾液腺にできるがんが唾液腺がんです。
その中で、最も発生頻度が高いのは耳下腺がんで、次いで顎下腺がんです。

再発はがんがあった周囲の組織に起こることもありますし、転移という形で現れてくることもあります。再発が起こりやすいのは、治療終了後から3年間、リンパ節転移が起こりやすいとされています。

(図) 「唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がん)の位置」

唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がん)の位置

1-2.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の検査

  • CT検査やMRI検査などの画像検査が行われる。
  • 治療法を選択するため悪性度について詳しく調べる。

唾液腺がんの疑いがある場合には、CT検査やMRI検査などの画像検査が行われます。それにより、腫瘍の有無や大きさ、周囲への浸潤の程度、リンパ節転移や遠隔転移の有無などを調べます。

唾液腺にできる腫瘍には良性のものも多いので、良性の腫瘍か唾液腺がんかを診断する必要があります。また、唾液腺がんには、いろいろな種類のがんが含まれています。そこで、唾液腺の腫瘍が見つかった場合には、その組織を採取して病理検査を行い、がん細胞の種類をつきとめておきます。

唾液腺がんは、がん細胞の種類によって、「低悪性度群」「中悪性度群」「高悪性度群」の3つに分類されます。どのような進行を見せるがんなのかを明らかにしてから、治療法を選択します。

(表)唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の検査

検査名 検査のやり方 検査でわかること
CT検査 エックス線を利用して体内を断層画像として描き出す。 がんの浸潤の程度、リンパ節転移や遠隔転移の有無などがわかる。
MRI検査 磁気を利用して体内を断層画像として描き出す。 がんの浸潤の程度、リンパ節転移や遠隔転移の有無などがわかる。
生検 腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で調べる。 がんであるかどうかがわかる。がん細胞の種類がわかり、悪性度分類が可能になる。

1-3.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の状態を理解するための基礎知識

患者さんが本当に納得できる治療を受けるためには、治療法の大きな流れと診断のポイント、ご自身の体の状態について、しっかり理解しておくことが大切です。そのうえで、ご自身がこれからどのように生きたいかを考え、医師とよいコミュニケーションをとりながら、治療法を選んでください。

次のような点についてチェックすると、現状の把握や今後の治療法の検討に便利です。
悪性度は、「低悪性度群」、「中悪性度群」、「高悪性度群」の3つに分類されます。

(表)喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)のチェックリスト

チェック項目 それを知る意義
がんのできている部位 病期分類や治療法の選択に必要
がんの大きさ
がんの広がり(浸潤の程度)
リンパ節転移の有無と程度
遠隔転移の有無

(表) 「唾液腺がんの悪性度」

悪性度 唾液腺がん
低悪性度群 腺房細胞がん、粘表皮がん(低悪性度)、多型低悪性度腺がん、明細胞がん、基底細胞腺がん、嚢胞腺がん、低悪性度篩状嚢胞腺がん、粘液腺がん、腺がんNOS(低悪性度)、多形腺腫由来がん(非・微小浸潤型)、転移性多形腺腫、唾液腺芽腫
中悪性度群 粘表皮がん(中悪性度)、腺様嚢胞がん(篩状、管状型)、上皮筋上皮がん、悪性脂腺腫瘍(脂腺がん、脂腺リンパ腺がん)、リンパ上皮がん
高悪性度群 粘表皮がん(高悪性度)、腺様嚢胞がん(充実型)、オンコサイトがん、唾液腺導管がん、腺がんNOS(高悪性度)、筋上皮がん*、多形腺腫由来がん(浸潤型)、がん肉腫、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がん

*:一部低〜中悪性

1-4.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の進行度

  • 唾液腺がんでは悪性度分類も重要。

唾液腺がんは、がんの大きさ、浸潤や転移の状態など、以下の3つの分類を掛け合わせて病期を判断します。

①「T分類(がんの大きさ、浸潤の状態など)」、②「N分類(リンパ節への転移の状態)、③「M分類(遠隔転移の状態)

さらに、唾液腺がんには、いろいろな種類のがんがあるので、生検を行ってがんの種類をはっきりさせます。それにより、低悪性度、中悪性度、高悪性度に分類することができます。その病期と悪性度を組み合わせることで、治療方針を決めていきます。

(表)「唾液腺がんの病期」

①「T分類(がんの大きさ、浸潤の状態など)」

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
T1 最大径が2㎝以下の腫瘍で、実質外進展* なし
T2 最大径が2㎝をこえるが4㎝以下の腫瘍で、実質外進展* なし
T3 最大径が4㎝をこえる腫瘍、および/または実質外進展* を伴う腫瘍
T4a 皮膚、下顎骨、外耳道、および/または顔面神経に浸潤する腫瘍
T4b 頭蓋底、翼状突起に浸潤する腫瘍、または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

*:実質外進展とは、臨床的または肉眼的に軟部組織または神経に浸潤しているものをいう。ただし、T4a およびT4b に定義された組織への浸潤は除く。顕微鏡的証拠のみでは臨床分類上、実質外進展とはならない。

②「N分類(リンパ節への転移の状態)

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝をこえるが6㎝以下
N2b 同側の単発性リンパ節転移で最大径が6㎝以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6㎝以下
N3 最大径が6㎝をこえるリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

③「M分類(遠隔転移の状態)

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

④「病気分類」

N0 N1 N2a,N2b,N2c N3
Tis 0
T1 ⅣA ⅣB
T2 ⅣA ⅣB
T3 ⅣA ⅣB
T4a ⅣA ⅣA ⅣA ⅣB
T4b ⅣB ⅣB ⅣB ⅣB
M1 ⅣC ⅣC ⅣC ⅣC

「頭頸部癌診療ガイドライン」2013年版、日本頭頸部癌学会編(金原出版)を参考に編集部にて作成。

(表) 「唾液腺がんの悪性度」

悪性度 唾液腺がん
低悪性度群 腺房細胞がん、粘表皮がん(低悪性度)、多型低悪性度腺がん、明細胞がん、基底細胞腺がん、嚢胞腺がん、低悪性度篩状嚢胞腺がん、粘液腺がん、腺がんNOS(低悪性度)、多形腺腫由来がん(非・微小浸潤型)、転移性多形腺腫、唾液腺芽腫
中悪性度群 粘表皮がん(中悪性度)、腺様嚢胞がん(篩状、管状型)、上皮筋上皮がん、悪性脂腺腫瘍(脂腺がん、脂腺リンパ腺がん)、リンパ上皮がん
高悪性度群 粘表皮がん(高悪性度)、腺様嚢胞がん(充実型)、オンコサイトがん、唾液腺導管がん、腺がんNOS(高悪性度)、筋上皮がん*、多形腺腫由来がん(浸潤型)、がん肉腫、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がん

*:一部低〜中悪性

1-5.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の再発

  • 手術でがんを取り除いても再発が起きることがある。
  • 再発は局所に起きることも離れた部位に起きることもある。

唾液腺がんは、手術で取り除くことができても、その後に再発することがあります。手術でがんが消失したように見えても、肉眼では見えないがんが残っていることがあります。それが時間の経過とともに増殖してくることで再発が起こるのです。再発はがんがあった周囲の組織に起こることもありますし、リンパ節や離れた臓器への転移という形で現れてくることもあります。特に再発が起こりやすいのは、治療終了から3年間です。

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