(監修:国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院頭頸部内科長 田原 信先生)

2.唾液腺がんの治療について

2-1.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の治療方針

  • 唾液腺がんの治療は手術が中心。
  • 根治性に加え、機能の温存や整容性を考慮して治療が行われる。

唾液腺がんの治療は一般的に放射線感受性が低く、有効な化学療法もないため手術が中心です。

また、耳下腺がんなどは、顔面神経を温存できるかどうかが、重要なポイントです。顔面神経麻痺や、手術後の変形など、機能面と整容性に配慮した治療が必要です。

2-2.喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)の治療

  • 耳下腺がんの手術では、できるだけ顔面神経を温存する手術が行われる。
  • 放射線療法や化学療法はほとんど行われていない。

唾液腺がんの手術は、切除する範囲によって、部分切除術、葉切除術、全摘出術、拡大全摘出術という方法があります。

耳下腺がんの手術では、顔面神経を温存できるかどうかが、重要なポイントになります。片側の顔面神経を切っただけでも、かなり顔が変わってしまいます。そのため、できるだけ顔面神経を温存することを考えて手術が行われます。

放射線療法や化学療法は、唾液腺がんにはあまり効かないため、ほとんど行われていません。あくまで手術が治療の中心です。

(図) 「唾液腺がんの治療アルゴリズム」

「唾液腺がんの治療アルゴリズム」

(表)「唾液腺がんの病期」

①「T分類(がんの大きさ、浸潤の状態など)」

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
T1 最大径が2㎝以下の腫瘍で、実質外進展* なし
T2 最大径が2㎝をこえるが4㎝以下の腫瘍で、実質外進展* なし
T3 最大径が4㎝をこえる腫瘍、および/または実質外進展* を伴う腫瘍
T4a 皮膚、下顎骨、外耳道、および/または顔面神経に浸潤する腫瘍
T4b 頭蓋底、翼状突起に浸潤する腫瘍、または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

*:実質外進展とは、臨床的または肉眼的に軟部組織または神経に浸潤しているものをいう。ただし、T4a およびT4b に定義された組織への浸潤は除く。顕微鏡的証拠のみでは臨床分類上、実質外進展とはならない。

②「N分類(リンパ節への転移の状態)

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3㎝をこえるが6㎝以下
N2b 同側の単発性リンパ節転移で最大径が6㎝以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6㎝以下
N3 最大径が6㎝をこえるリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

③「M分類(遠隔転移の状態)

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

④「病気分類」

N0 N1 N2a,N2b,N2c N3
Tis 0
T1 ⅣA ⅣB
T2 ⅣA ⅣB
T3 ⅣA ⅣB
T4a ⅣA ⅣA ⅣA ⅣB
T4b ⅣB ⅣB ⅣB ⅣB
M1 ⅣC ⅣC ⅣC ⅣC

「頭頸部癌診療ガイドライン」2013年版、日本頭頸部癌学会編(金原出版)を参考に編集部にて作成。

2-3.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の治療で使われる薬剤

唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の治療では、主に次のような抗がん剤が使用されます。

(表) 唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の治療で用いられる主な抗がん剤

一般名 商品名 特徴 主な有害事象
シスプラチン ブリプラチン、ランダなど プラチナ(白金)製剤の一種。高い抗腫瘍効果を発揮するが、副作用も強い。 腎機能障害、白血球減少、貧血、血小板減少、悪心・嘔吐、口内炎など。
フルオロウラシル 5-FUなど 代謝拮抗薬の一種。DNAの合成を阻害して抗腫瘍効果を発揮する。 悪心・嘔吐、下痢、食欲不振、白血球減少など。
ドセタキセル タキソテールなど タキサン系抗がん剤の一種。がん細胞の分裂を妨げる働きがある。 白血球減少、貧血、血小板減少、ショック症状、浮腫など。
セツキシマブ アービタックスなど 分子標的治療薬の一種。がんの増殖などに関係する体内の特定の分子を狙い撃ちする。 高血圧、皮膚障害、消化管穿孔、血栓症など。

2-4.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)治療の合併症と副作用

手術で顔面神経が障害されると、顔が変わったように見えることや、神経麻痺を伴うこともあります。皮膚は知覚がなくなり、しびれが生じる場合もあります。

また、Frey(フライ)症候群※という症状が起こる場合もあります。

※Frey(フライ)症候群:食事をしていると、耳下腺上の皮膚に発汗・発赤といった症状が出た状態

2-5.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の治療終了後の定期検診

  • 治療後の経過観察ではCTやMRIなどの画像検査を受けることが大切。
  • 再発の可能性が高い3年間は3~4ヵ月毎に受診し、画像検査を受ける。

治療が終了し、がんがなくなったとしても、再発してくる可能性はあります。そこで、治療終了後は定期的に受診し、経過観察を続けることが大切です。治療終了から1年間は、3ヵ月ごとに受診し、診察を受け、さらにCT検査あるいはMRI検査を受けます。
再発の可能性が高いのは、治療終了後3年間なので、そこまでは3~4ヵ月ごとに画像検査を受けます。3年を過ぎたら半年に1回、5年を過ぎたら1年に1回にします。

治療後の経過観察では、再発のチェックだけでなく、新たながんの出現にも注意を払う必要があります。

2-6.唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がんなど)の患者さんがよく気にしたり悩んだりすることQ&A

Qセカンドオピニオンは、すべき?
A
担当医の意見が第一の意見であるのに対し、他の医師の意見をセカンドオピニオンと呼びます。すべての患者さんがセカンドオピニオンを聞きに行ったほうがよいわけではありません。担当医の説明を聞き、自分で納得できれば、それで十分である場合も多いでしょう。しかし、納得がいかない場合には、これまでの治療経過・検査結果・今後の予定などを担当医に記載してもらい、別の医師の意見を聞くのもよいでしょう。そして、その結果を担当医に持ち帰って相談するのがベストです。

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