(監修:虎の門病院消化器外科 部長 宇田川晴司先生、医員 春田周宇介先生)

1.胃がんとは

1-1.胃がんとは

  • 胃がんになる人は多いが、早期に発見できれば治りやすい。

胃がんは、胃の内側を覆っている粘膜から発生するがんです。そして、胃壁の深いほうへと増殖していきます。さらに進行すると、胃壁の外に出て、周囲の臓器に浸潤(がんが周りに広がって行くこと)したり、腹膜に転移したりすることがあります。また、リンパ液や血液に乗って、リンパ節や離れた臓器に転移することもあります。

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胃壁は、内側から「粘膜」「粘膜下層」「筋層」「筋膜下層」「漿膜」という5層構造になっています。粘膜で発生した胃がんが、粘膜と粘膜下層までにとどまっている場合を「早期がん」、粘膜下層を超えて進行している場合を「進行がん」と呼びます。大きながんでも、それが粘膜下層までにとどまっていれば早期がんです。逆に、小さながんでも、それが筋層に達していれば進行がんとなります。早期がん、進行がんという言葉は、あくまで深達度による分類です。

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胃がんは多くの人が罹患するがんとして知られています。男性では多くのがん種の中で最も多く、女性では乳がん、大腸がんに次いで3番目に多くの人が罹患しているがんでした。(国立がん研究センターがん対策情報センター「地域がん登録全国推計値」より。)

胃がんの5年相対生存率は他のがん種と比べてそれほど低くはなく、早い段階で発見できれば、治癒する可能性が高くなります。

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(引用:全国がん罹患モニタリング集計 2003-2005年生存率報告
独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書)

1-2.胃がんの検査

  • 患者さんが検査で何を調べるのかを理解することが、その先の治療方針や治療法を決める手助けにもなる。
  • 「発見するための検査」「確定診断のための検査」「治療を進めるための検査」がある。

患者さんが検査で何を調べるのかを理解することは、自分の病状を把握しやすくし、治療方針や治療法を決める手助けにもなります。

胃がんの検査には、3つの段階があります。まず、検診などで胃がんらしき病変を「発見するための検査」、次に、発見された病変が胃がんであるかどうかを判定する「確定診断のための検査」。そして、胃がんだった場合に「治療を進めるための検査」です。

1.発見するための検査

胃がん検診として「X線検査(バリウム検査)」が広く行われています。ただ、「内視鏡検査」のほうが、小さながんまで発見することができ、さらに「確定診断のための検査」も兼ねられます。

検査名 検査のやり方 検査によってわかること
X線検査 検査を受ける人が造影剤のバリウムと発泡剤を飲み、粘膜面の変化を観察する。 ・比較的大きな病変を見つけることができる。
・胃の中での場所により、診断能力に差がある。
内視鏡検査 口や鼻から胃に内視鏡を入れ、胃の内部を観察する。がんが疑われる病変があれば、内視鏡の先端から器具を出して組織を採取して調べる(生検)。 ・胃の内部を拡大して観察できるため、小さな病変まで見つけることができる。
・X線検査より診断能力が高い。生検により、診断を確定できる。

2.確定診断のための検査

内視鏡検査が行われます。内視鏡検査は、胃がんを発見するための検査としても行われますが、X線検査などで異常が発見された場合、それが胃がんであるかどうかを調べる精密検査として行われることもあります。

超音波検査、CT検査、超音波内視鏡検査によって、がんの状態を調べます。これらの検査の結果、その人に可能な治療(内視鏡治療が可能なのか、手術が必要なのか、手術ができるかどうかなど)が明らかになってきます。

検査名 検査のやり方 検査によってわかること
超音波検査 腹部の外側から超音波を発信して、体内の状態を画像化する。 肝臓などへの転移の有無がわかる。
CT検査 体の周囲からX線を照射し、それをコンピュータで処理して、断層画像化する。 腹部全体の状態がわかる。周囲の臓器への浸潤、リンパ節転移、腹膜への転移などの有無がわかる。
超音波
内視鏡検査
胃に内視鏡を挿入し、内視鏡から超音波を発信して、胃の周囲を画像化する。 胃壁やその周囲の状態を詳しく調べられる。がんの深達度、周囲の臓器への浸潤、リンパ節転移の有無などがわかる。

1-3.胃がんの状態を知るための基礎知識

  • 本当に納得できる治療を受けるには、患者さんが、治療法の考え方やご自身のがんの状態について理解することも大切。

患者さんが本当に納得できる治療を受けるためには、治療法の大きな流れと判断ポイント、ご自身の体の状態について、しっかり理解しておくことが大切です。その上で、ご自身がこれからどのように生きたいかを考え、医師とより良いコミュニケーションをはかりながら、治療法を選んでください。

受診の前後に、次のようなチェックリストを用意して記録して行くと、現状の把握や今後の治療法の検討に便利です。

チェックリスト
チェック項目 それを知る意義
深達度
(T1a、T2b、T2、T3、T4a、T4b)
病期(ステージ)分類のために必要な情報。これらの情報により、治療方針がほぼ決定する
大きさ(㎝)
リンパ節転移
(N0、N1、N2、N3)
遠隔転移
(M0、M1)
悪性度
(分化型、未分化型)
内視鏡的切除を行うかどうかの参考として。
胃の中での部位 手術の術式を選択するための情報として。
HER2
(陽性、陰性)
トラスツズマブを使用するための情報として。

1.胃がんの進行度

胃がんの病期(ステージ)は、胃がんがどこまで達しているかを示す「深達度」の他に、「リンパ節転移」の程度や、「遠隔転移(離れた臓器への転移)」の有無を考慮して分類します。

2.胃がんの悪性度

がんの悪性度(がんの顔つき)は、細胞の成熟度で判断します。成熟度の高いものが「分化型がん」、低いものが「未分化型がん」と呼ばれます。

「分化型がん」は、早期がんの時点では転移の可能性が低く、比較的悪性度は低いといえます。しかし「未分化型がん」は、早期がんの時点でも転移の可能性が比較的あり、スキルス型胃がんへと進行する場合もあるため、悪性度は高いといえます。

1-4.胃がんの再発

  • 胃がんは腹膜や肝臓に再発することが多い。
  • 胃がんの転移が見つかった場合には、再発胃がんと診断されてIV期と同様の治療が行われる。

がんを切除したにも関わらず、その後に再びがんが出てくることを再発といいます。胃がんの再発には、腹膜への再発、肝臓など他の臓器への再発、残っている胃への局所再発、リンパ節への再発などがあります。

再発が起こるのは、検査で見つからないような小さながんが、治療を終えた時点で体のどこかに潜んでいるためです。その小さながんが、徐々に増殖し、発見できるまで大きくなったときに、再発と診断されるのです。

再発が起きた場合には、そこだけでなく、さまざまな部位に小さながんが転移していると考えられます。そのため、全身性の再発胃がんと診断されて、治療が進められます。

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