(2016年.vol21)
3月30日、東京都内で行われた記者会見で、高校生や大学生たちを含む、子宮頸がんワクチンを接種し痛みや痙攣などの副反応を訴えている女性たちが、国や製薬会社を相手取り、今年6月にも集団で提訴する意向を明らかにした。
被害を訴える女性たちは記者会見でこう話す。
「なぜ自分が被害を受けたのか。すぐに適切な医療を受けられなかったのか。国に情報が正しく届かないのか。それを知りたい」「国と製薬会社はもっと私たちと向き合うことで、原因究明と治療法の開発が進むはず。背景を明らかにし、同じようなことを繰り返さないでほしい」(21歳女性)
「ワクチンを打ってから今まで、いいことは一つもなかった」(17歳女性)
「ワクチンを勧めた人は、自分たちのしてきたことの最低さを痛感してほしい」(17歳女性)
国が子宮頸がんワクチンを定期接種に指定したのは2013年、これまで副反応として知られていなかった痛みや全身のしびれなどの報告が相次いだことから、わずか2カ月後に国は推奨を一時中止し、2014年に厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会は、ワクチンの副反応と見られる症状は、「心身の反応」「自然発症の紛れ込み」と報告したが、今も再開するかどうか議論が続いている。
日本の動きを受け、WHO(世界保健機関)は2014年、「ワクチンは安全で有効である」との声明を発表。日本産科婦人科学会も「検診とワクチンが子宮頸がん予防の両輪だが、検診の受診率が低い日本では今後、子宮頸がんの患者が増える恐れがある」と懸念を示し、日本小児科学会なども積極勧奨の再開を求める要望書を出している。
約340万人の女性が接種したとされる子宮頸がんワクチン。厚生労働省は2015年9月の報告書で、その中で副反応が見られたと報告があった人は2584人、追跡で確認が取れている人は1739人で、未だに副反応が回復されない人は186人だとしている。厚生労働省が予防接種を受ける人向けに配布しているパンフレットによると、注射部の痛みや腫れなどの軽度の副作用は50%以上の人に現れる可能性があるとしているし、頭痛や発熱なども10%〜50%の人に現れるとしているから、報告があった例は、腹痛・嘔吐、手足のしびれや失神などになるのだろう。つまり、そういった重度と思われる副反応が起こる確率は、0・1%以下だが、その副反応が継続してしまう確率は10 %程ということになる。
では、子宮頸がんを罹患する確率はどれくらいか。現在、女性が生涯で子宮頸がんを発症するのは100人に一人ほどと言われている。そもそも、このワクチンで予防できるヒトパピローマウイルスが原因の子宮頸がんは全体の50%〜70%。つまり、生涯でヒトパピローマウイルスが要因の子宮頸がんを発症する確率は、0・5%〜0・7%ということになる。
もちろん、これは簡単な計算にすぎないが、WHOや他の国が言うままに「ワクチンの積極的な接種推奨」を急ぐ必要が本当にあるのだろうかと思ってしまう。
今回、国などを相手に訴えることを決めた女性たちの苦しみの原因を探り、治療法を見つけ、ワクチンと関係がない、もしくはワクチン接種による特異的な例であるならばその要因を明らかにする――。その間に、そんなにも子宮頸がんの罹患者が増えてしまうと言うのだろうか。
「世界的な流れを日本で止めてしまうかもしれない、ましてやワクチンの危険性について不安を煽ってしまうかもしれない」「人種的な違いによる副反応の違いなど起こるはずがない」という意見もある。
この「起こるかもしれない、起こるはずがない」という予測でしかない考えは、彼女たちの悲痛な訴えの前では意味がないと思う。彼女たちは実際に深刻な症状に悩まされ、それがワクチンの副反応であると感じているのだから。
今でも、リスクを承知でならば予防接種を受けることは可能だ。国は、子宮頸がんワクチン接種による副反応の追跡調査はもちろんだが、ワクチンの是非とは関係なく、彼女たち一人一人としっかりと向き合ってほしいと思う。