(がんの先進医療: 2014年7月発売 14号 掲載記事)

がん闘病に必要な食事と栄養

第13回 体に良しとされる適量の紫外線などによりビタミンDを取り入れ、がんの縮小を図る

がん闘病に必要な食事と栄養について半田えみ先生(医療法人社団 中成会 半田醫院)に解説いただいた。

適度に紫外線を浴びるのは体にとって大切なこと

私達の体で一番大きな臓器の皮膚、そして、皮膚は常に外界にさらされています。皮膚を臓器と言いますと、あまりピンとこないかもしれません。

皮膚のトラブルや病気もたくさんあります。皮膚に症状が現れるときは、体の内側の何らかの変化や反応と関連していることがほとんどでしょう。体の中で起こっていることが、すぐに目に見えない状態でも、皮膚に症状が出てきた場合、その人に起こっている状態や病気を判断することができます。

皮膚と言えば、今の時代では美白がもてはやされ、特に日本社会では、日焼けは悪の風潮です。オゾン層破壊の問題では、南半球で皮膚がんが増加し極力紫外線を避けて日焼けをしないことがいいとされています。しかし、その反面で欧米社会などでは、日焼けを楽しむ傾向もあります。

そして、年間を通して日照時間の少ない地域に住む人々は、日光浴の大切さを知っていて適度に日光浴を楽しんでいる人もいます。以前カナダに滞在していたときに見た光景では、寒い時期が長く、1年を通して外で日光浴をできる期間は短く初夏に訪れたときには、気温が少しでも上昇し太陽が出た日は、上半身裸で芝生に横たわり日光浴を楽しむ人をたくさん見かけました。紫外線を浴びることは、適度であれば必要なことなのです。

最近、海外で注目されている体にとって大切な栄養素のビタミンDは、皮膚が紫外線を浴びることで産生されます。あまりにも紫外線を避けることが言われるために、その反面ではビタミンDが産生されず体内で不足し体の弊害や病気が出ていることも事実です。もちろん必要以上に過剰になれば、皮膚がんや光老化のような危険性も高まってきますので注意は必要です。

さて、ホーチミンで仕事をする中でベトナム人とアメリカ人の皮膚科のドクターにお会いしてお話をすることがありました。彼らのクリニックですが、ベトナム人のドクターもオーストラリアやアメリカなどで勉強してきたドクターがほとんどでした。

そして、アメリカ人のドクターなど他国籍のドクター達により診療を行うクリニックです。設備も技術も素晴らしく、何カ国語かでの診察も可能です。

ベトナム全体の医療水準は、まだまだ発展途上にあるところが大半ですが、実際に居住している人々は、ベトナム人以外にもかなりの国籍、人種の違う人間が集まっています。皮膚の病気も人種、遺伝、環境などによってさまざまで、そのためそれぞれの患者さんに対応して診察を行っています。

彼らとの会話の中で、ごく普通に抱える皮膚トラブルでも違いがあることが興味深かったです。たとえば、ベトナム人はニキビができる人が多いため、そのニキビ跡をきれいにする治療が多く、「日本人はシミで悩み、欧米人はシワトラブルが多い」と話してくれました。アメリカ人のドクターは、皮膚がんの治療や研究にも携わっています。

皮膚がんに関しては、日本ではあまり発症頻度が高いがんではありませんが、アメリカやオーストラリアなど世界的な規模で見ていきますとそうではありません。私は、ほとんど日本で皮膚がんの患者さんを診ることがないこと、また、がんの統合医療とりわけ栄養とがんについての関わりや治療に興味があることを話しました。日本では、その治療にも携わってきたことを話し、そのドクターにも興味があるかどうか聞いてみました。

すべてのデータが出ているわけではありませんが、皮膚がんにも食習慣の影響もあるし、予防効果のある栄養素もあるとのことです。その中で私が興味を持ったのは、ナイアシン(B3)が紫外線により誘発される免疫抑制を減らすことに非常に効果があるということです。

人間の皮膚においての細胞エネルギー代謝に対するナイアシンの影響、その結果、皮膚に対する紫外線保護効果があるなどです。これらは、まだ結論はこれかららしいのですが、いい結果が出ることを楽しみにしています。

ビタミンDはがんの栄養療法に欠かせない栄養素

さて、最初に少し触れましたが、日本ではまだあまりビタミンDの重要性は言われていないように感じますが、海外ではビタミンDはかなり話題になっている栄養素の1つで、がんの栄養療法にも欠かせない栄養素です。ビタミンDはステロイドホルモンの一種で、細胞内のあるいは核内の受容体と結合し、特定の遺伝子を活性化することによってその作用を発現させます。

最近では、ビタミンDが細胞分化や免疫機能にも関与することがわかってきました。ビタミンDは皮膚でつくられ、生合成には紫外線が不可欠です。この生合成には、すべての紫外線が必要ではなく、UVB(紫外線B)だけが必要です。

ビタミンDを活生化するために肝臓と腎臓が関与しています。ビタミンDは、動物由来のビタミンD3(コレカルシフェロール)と植物由来のビタミンD2(エルゴカルシフェロール)があります。動物の皮膚で生合成されるビタミンDは、紫外線を浴びてプレビタミンD3に変わります。

これは体温によって徐々に変化し、ビタミンD3になり血中に放出されます。植物にはプロビタミンD2が含まれ、やはり紫外線を浴びることでビタミンD2に変化します。

皮膚で合成されたビタミンD3と食品から接種されたビタミンD3は、十二指腸で吸収されリンパ管から静脈血に入り肝臓に運ばれます。肝臓で酵素により25-OH-D3(25水酸化コレカルシフェロール)になり血中に分泌されます。25-OH-D3は、腎尿細管細胞でさらに最も活性の強い1α、25(OH)2-D3に変換されます。

ビタミンDの機能はいろいろありますが、最近注目されている機能、そして特にがんとの関わりのある細胞分化誘導の機能は注目されます。活性型1α-25(OH)2-D3は、他のホルモンと同様に全身の細胞にある、細胞の核内のビタミンDのレセプターに働き、全身の細胞がそれぞれビタミンDの活性化を行いながら、正常な細胞の分化や異常細胞の細胞死などを誘導します。

それゆえ、ビタミンDが不足すると、適切に細胞の分化誘導が行われないためにがんの発症やがん細胞の増殖が起こってきます。ビタミンDは食事からも摂取されますが、体内のビタミンDの大部分はコレステロールを原料に日光浴をして紫外線を浴びることで合成されているのです。

巷では、日に当たることは悪いことのように言われており、そのため体内でのビタミンD不足に陥っている人は多いと考えられます。不足しているが故にいろいろながんも含め病気を発症している人もたくさんいるのではないでしょうか。

日本では、皮膚がんの発症頻度はオーストラリアなどに比べますと、かなり低い状況です。ですから、皮膚がんを恐れるあまり紫外線を極端に避けることをせず、適度な日光浴はがん予防にもなり、他のビタミンD不足による病気の発症の助けにもなることも知って欲しいと思います。

ビタミンDの摂取量と最適な摂取方法素

ビタミンDのがんにおける栄養療法ですが、私ががん統合医療の外来で勉強させていただいたカナダのドクターのところでも、ビタミンDはほとんどのがん患者さんの栄養療法に処方されていました。がん治療のベースに入れる栄養素の1つに挙げられていました。

そして、ビタミンDは、50%の代表的ながん(乳がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんなど)のサイズを縮小させる、そして、ビタミンDの体内でのレベルが十分であればすべてのがんの死亡率も減らすことができるとまで言われています。

さらに、ビタミンDを摂ることで60%のがんが予防できるとも言っています。がんを発症している患者さんには、1日あたり4000IU(国際単位)ぐらいの量の処方が平均的でした。2000IUの患者さんもいれば、6000IUの処方の方もいました。

ただし、これはどのがんにおいても誰にでも一律というわけではありませんので、みなさんは、必ず栄養療法をしてくださる主治医とご相談のうえ摂ってください。ビタミンDを摂取する上で大切なことは、血液検査をしてビタミンDの濃度を測って個々人の量を決めていくということです。

実際そのドクターのところでは、液体のビタミンDでの摂取が一番いいということでした。1ドロップで約1000IU摂れる液体がいいとのことでした。その液体をジュース(以前ご紹介しましたが〈VOL.8〉、ニンジン、ビートルート、フィッシュオイルをミックスしたジュース)に滴下して飲むことを勧めていました。ビタミンCは1日数回に分けて摂る方がいいけれど、ビタミンDは1日1回でいいとのことでした。

海外では、液体のビタミンDも普通に手に入ります。そのドクターによりますと、最近はビタミンDを注射で摂ることがよいという話もあり、6年間やってみたけれど液体を上回る効果はなかったとのことでした。液体で摂ることと差はなかったので、液体で摂るほうがいいとおっしゃっていました。

ビタミンDを個々人において摂取する量については先ほど触れましたが、まず最初に、血液で濃度を調べます。ビタミンDの体内での濃度は、体内で活性化される前の25(OH)D3を測定します。活性型1α-25(OH)2D3(日本の医療機関では、こちらで測定されていることがほとんどです)の値を測っても体内でのビタミンDの状態をまったく反映できませんので気をつけてください。

ビタミンDは、1カ月ぐらいかけてゆっくりと血中濃度を維持していきます。そして、3カ月ぐらいで肝臓や脂肪に貯蔵される分ができます。その後、体内での血中濃度が安定してきます。そのドクターの外来では、6カ月に1回ぐらいビタミンDの血中濃度を測定し、患者さんの量の過不足を調節しているとのことでした。

最後に、ビタミンDも治療レベルになりますとサプリメントでの高用量の補給が必要になってきますが、普段の食生活で過不足を補うには食材からの摂取も大切です。参考までに、ビタミンDの摂れる食材をお伝えします。

たら肝油、1テーブルスプーン:ビ タミンD1360IU(国際単位)

イワシの缶詰のオイルを除いたもの: 500IU

調理したサーモン(100g):  360IU

調理したサバ(100g):345IU

ツナ缶:200IU

ビタミンD強化ミルク(1カップ): 98IU

卵1個:20IU

調理した牛レバー(100g):  154IU

スイスチーズ(約28g):12IU

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