新シリーズ 宮西ナオ子のがんに挑むサプリメント
徹底リサーチ 第4回 ハナビラタケ
幻のキノコ、ハナビラタケとは?
ハナビラタケは、ハナビラタケ科ハナビラタケ属に属する1科1属のキノコです。キノコといっても一般的になじみのある傘つきのキノコの形状とは異なり、白色から淡い黄色の花がパッと咲いているように見えたり、あるいはサンゴのようにも見える華やかで美しい見た目が特徴です。さらにキノコというと、収穫は秋が一般的ですが、ハナビラタケは夏から秋にかけて標高1000メートルを超える高山の、ほかのキノコが近寄らないようなカラマツやモミ、マツなどの針葉樹の根元や切り株などの日陰に発生します。
ハナビラタケは「根株心材不朽菌(ねかぶしんざいふきゅうきん)」といって生きているカラマツなどの株の奥深くまで入り込み、栄養をむさぼります。結果、木を枯らしてしまうほど強いのです。ほかのキノコは、強い松ヤニを嫌がってカラマツには生えません。そのことからもハナビラタケの独自性が感じられます。このような理由から長い間、稀少な存在として「幻のキノコ」と呼ばれてきました。ハナビラタケが食用キノコとして美味であることを知る人は、長い間人工栽培を検討してきましたが、実現するまでにとても時間がかかったようです。
まずはきわめてデリケートなので、栽培にかかる日数も長期にわたるという問題がありました。ハナビラタケが収穫に必要とする日数は約4カ月。たとえばアガリクスなら約1・5カ月、マイタケは約2.5カ月、シイタケが約3カ月という日数から比較しても生長するまでの日数がかかります。またカビに弱いことも人工栽培の難しい原因となっていました。
日本での人工栽培は1990年代になってから。1998年度には科学技術振興事業団(現:国立研究開発法人 科学技術振興機構)によって「独創性研究成果育成事業」にハナビラタケの研究開発が選定されました。これは新しい産業を生み出す可能性のある独創的な研究開発を選定し、公的な資金サポートを行うシステムですが、選定事業名は、「ハナビラタケの経済的実用化栽培方法並びに一般嗜好食品と有用食品の試作研究」というものでした。
ここでハナビラタケの大量生産と健康食品における顆粒化・粉末化の安全生産の試作研究などが目的とされました。その結果、2000年以降には大量生産ができるようになったのです。とはいえ栽培が難しく生産者も少ないという事実は変わらず、エノキダケやシイタケなどに比較してもまだまだ生産量が少なく、市場で見かけることも少ないのではないでしょうか。
ハナビラタケの成分とその有用性
ハナビラタケが注目を浴びているのは、その成分の有用性にあります。日本食品分析センターの報告では、健康維持に役立つ成分といわれるβグルカン量が100g中43.6g含まれているといわれ、これはほかのキノコ類の中でも最も多い含有量を示します。たとえばアガリクスの5倍ものβグルカンが含まれているというわけです。
またグルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸、トレハロース、ビタミンDの前駆成分エルゴステロール、キトサン、ミネラル、グリコーゲン、ビタミンB1・B2有機酸、マンニトールなども含まれ、免疫力を高める効果も大いに期待できます。そのためがんの闘病中にサプリメントとして活用する人も増えているようです。
ハナビラタケを使った料理
長野県飯田市の「はなびらたけ元気」からハナビラタケ20袋を取り寄せました。1袋あたり80g入りで270円。ハナビラタケを使ったさまざまな料理に挑戦してみます。開封してみると、キノコ特有のいい香りが漂います。乳白色のハナビラタケは、キノコというよりも美しい花のようでもあります(写真)
写真1
煮込んでも形がくずれず、色も変わらず、シャキシャキ感があり食感が楽しめるうえに、香りもいいとのことで、ますます期待が高まります。さらに長期保存しても腐りにくく、生でも食べられるというのは嬉しいことです。
まずは軽く水洗いして電子レンジでチンするか、簡単に湯がき、塩などをふって食べれば美味という情報をもとに、さっそく電子レンジでチンしてみました。これに醤油、ドレッシング、マヨネーズ、塩などいろいろな調味料を使って、素材自体を味わってみましたが、どれを使っても美味。こりこり、しゃきしゃき感があり、食感がよく、マツタケに似たキノコ独特の風味が楽しめます。酒のおつまみにもよいのではないでしょうか。他にはバターで炒めたり、すでに作った料理の上に加えるだけでもワンランク異なったおいしさを提供できます。とても便利な食材だと感じました。
次にさまざまな料理を作ってみました。基本的にどのような料理に使ってもおいしく食べられます。毎日食べても飽きないどころか、1日のうちに何回も食べても飽きがきません。免疫力がアップするのか、身体が温かくなります。日ごろから食していれば、予防医学にも役立つのではないでしょうか?
ただしおいしいからといって食べ過ぎると、お腹が緩くなってしまうかもしれません。
料理例
◆ハナビラタケのサラダ
材料:
ハナビラタケ適量、トマト、ベビーリーフ、サニーレタス。
作り方:ハナビラタケをさっとゆでる。野菜と水切りしたハナビラタケを盛り付け、ドレッシングをかける。
感想:簡単に作れて香りと食感が楽しめる。
◆ハナビラタケの炊き込みご飯
材料:
ハナビラタケ適量。米3合、人参、ツナ缶(小缶すべて)、醤油、みりん、ねぎ 人参を千切りにする。
作り方:炊飯器にハナビラタケ、人参、ツナ、醤油、みりんを入れて炊く。できあがったらネギをかけて食べる。
感想:ネギをたくさんかけて食べるとネギのシャキシャキ感が増し、ハナビラタケの風味が引き立つ。ゴボウを入れてもよい。
◆ハナビラタケの入った甘辛豚バラピーマン
材料:
ピーマン中5個、豚バラ肉200g、ハナビラタケ。
作り方:ピーマンを1センチ幅に切る。豚バラ肉を一口大に切る。ぴマンを炒めたあと、ハナビラタケを炒める。その後豚肉を炒め、調味料で味を調える。
◆ハナビラタケの豆乳スープ
材料:
ハナビラタケ60グラム、ブロッコリー60グラム、じゃがいも1個、コンソメスープの素少々、水400cc、豆乳200cc、塩少々。
作り方:ブロッコリーを洗い、さっとゆがく。じゃがいもを茹でる。鍋に水とコンソメスープの素、豆乳、塩を入れて加熱。その後、ブロッコリーとじゃがいも、ハナビラタケを入れて中火で1~2分。
感想:ハナビラタケの風味がおいしさを醸し出します。
◆ハナビラタケの澄まし汁
材料:
ハナビラタケ100グラム、みつば、カイワレ大根適量、水800グラム、しょうゆ大匙4杯、塩少々
作り方:ハナビラタケを適当な大きさにカット。水を沸騰させハナビラタケを入れる。1,2分ハナビラタケを茹で、塩、しょうゆで味を調え、みつば、カイワレ大根を添える。
感想:簡単なのに、ハナビラタケの香りがまるでマツタケのようで、高級感のあるお澄ましに早変わり。
◆ハナビラタケの入った青椒肉絲
材料:
牛肉薄切り約150グラム、ピーマン、約6個(130グラム)、水煮タケノコ150グラム、片栗粉大匙1、青椒肉絲の素。
作り方:ピーマン、水煮タケノコを細切りにし、肉は細切りにして片栗粉大匙1杯をまぶす。ピーマン、タケノコを炒める。次に肉を炒め、青椒肉絲の素を入れる。その後、ピーマンタケノコを一緒に炒める。
感想:タケノコの香りとハナビラタケの香りがマッチして超美味。
※このほか焼きそば、カレー、スパゲティなど、どのような料理にもハナビラタケを添えると、さらにおいしくなります。どんな料理にも使えるハナビラタケに感動しました。
ハナビラタケを使った料理を提供するお店
料理に万能なハナビラタケを提供してくれるお店を都心部で探しました。
カレーブース「とんがらし」
田園都市線の三軒茶屋駅を出てすぐの道路沿いにあるカウンター席のみ7席の3・2坪のスペースの店。
21年間の歴史を持ち、80代の女性店主が切り盛りしています。豚の軟骨で作ったカレーが有名でしたが、ハナビラタケのカレーを提供するようになってますます人気が出ているとか。確かに芳醇なカレーのルーにハナビラタケが入っており、美味しくて健康によさそう。身体も温まります。
〒154– 0024 東京都世田谷区三軒茶屋1丁目41–12
TEL: 03–3487–1401
カレーブース「とんがらし」のハナビラタケのカレー
「恵比寿マッシュルーム (MUSH ROOM)」
恵比寿と代官山の中間にあるフレンチレストラン。エントランスにたくさんのマッシュルームの置き物が。店内にもキノコの絵画などが飾ってあります。さまざまな珍しいキノコが集まってくるというお店。
キノコ好きにはたまらない魅力満載です。ハナビラタケの香りや歯ざわりと、魚の旨みのハーモニーは感動もの。27年目という長きにわたる歴史とキノコのよさを引き出すメニューの素晴らしさに感服します。
住所: 〒150– 0021東京都渋谷区恵比寿西1-16-3 ゼネラルビル恵比寿西中2F
TEL:03– 5489– 1346
「恵比寿マッシュルーム(MUSHROOM)」のハナビラタケを使ったメニュー
ハナビラタケの論文情報
食材として非常に優秀なハナビラタケですが、論文ではどのような評価なのでしょうか? 国際データベースPubMed で「がん」に関するヒト臨床試験の論文は収載されていませんでした。そのため、動物試験4件をご紹介します。
新種フタリド化合物の抗癌関連活性
日本で、試験管内またはラットおいて新種フタリド化合物の抗がん関連活性を調べたところ、抗酸化、抗炎症、抗腫瘍活性を有すると結論づけられた。
〈コメント〉
ラットの実験といえども抗酸化、抗炎症、抗腫瘍活性を有していることは注目できる。
PubMed № 20686231
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=20686231
B i o l P h a r m B u l l . 2 0 1 0 、33(8):1355-9.
マウスにおける血管新生および転移に対する効果
日本で、マウスにハナビラタケ由来のβ–D–グルカンを投与すると、腫瘍誘発性血管新生を阻害し、肺での腫瘍増殖および転移を抑制した。
〈コメント〉
本研究は、SBGの経口投与が血管新生および転移を抑制することを示す初の報告ということで、大いに注目できる。
PubMed No. 19182386
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19182386
Biol Pharm Bull. 2009 年2月、32(2):259-63.
ハナビラタケの免疫調節作用について
日本で、健常人およびマウスにハナビラタケを投与すると、Th1細胞を活性化させる一方、Th2細胞の活性化を抑制し、Th1/Th2のバランスをTh1偏向型に変化させることを示唆した。
〈コメント〉
日本語翻訳によると、マウスのみならずヒトのNK細胞活性化効果についても検討を行っているのは注目すべき点。
PubMed No. 15553707
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=15553707
※日本語翻訳
https://www.pieronline.jp/content/article/0385-0684/31110/1761
癌と化学療法 Volume 31, Issue11, 1761 – 1763 (2004)
ハナビラタケ由来成分の抗腫瘍効果
日本で、強い血管拡張および出血反応を持つICRマウスの肉腫180固形がんに対して、ハナビラタケ由来成分が抗腫瘍活性を示した。また、シクロホスファミド誘発白血球減少マウスに対して造血反応の増強を示した。
〈コメント〉
ハナビラタケ培養子実体由来の抗
腫瘍成分1・3– β – グルカンによる。
PubMed No. 10919368
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=10919368
Biol Pharm Bull. 2000 年7月、23(7):866-72.
総評
今回取り上げたハナビラタケは大変、優秀な食材だと感じました。簡単に火を通すだけで食べられ、調理も簡単で、どんな料理にも貢献し、味を引き立てます。さらに日持ちをすることには驚きました。ハナビラタケが届いたのが11月上旬。その後、しばらくは冷蔵庫に入れずに常温で保存していたものの2週間が経過しても、腐ったり、傷んだりする形跡はなく普通に食べられました。ほかの野菜やキノコ類ならばこんなに長く常温で持たないと思います。これならば忙しくて毎日料理を作れない人でも安心です。
ハナビラタケを食べた後は、身体が温まるのを感じ、多くの人が寒い寒いと言っているようなときでも、寒さをあまり感じなかったりしました。このような万能選手のハナビラタケを日々の食材として大いに取り入れたいものです。最近ではハナビラタケを扱う農家もインターネットなどで検索できるので、ぜひとも活用したいもの。また、論文ではマウスの試験がメインでしたが、実際にはサプリメントとして扱われているものもあり、やがてはヒトの臨床試験結果も出てくるのを期待します。
宮西ナオ子(みやにし・なおこ)
上智大学ポルトガル語学科卒業。生き方研究家・ライター・エッセイスト・女性能楽研究家・博士(総合社会文化)。著書に『朝2時間早く起きれば人生が変わる』『眠る前の7分間』『一週一菜の奇跡』『和ごころのある暮らし』など多数。2014年「東久邇宮文化褒賞」受賞。