(がんの先進医療: 2013年1月発売 8号 掲載記事)
野菜や果物をベースに「ジュース」と言えば 「生ジュース」
私が子供の頃の朝ご飯やおやつのひとつに生ジュースということが結構ありました。冬の寒い時期より春から秋にかけて果物が季節を追いながら豊富に出回っている時期が特に多かったと思います。
母がその時の旬の果物を、いろいろな組み合わせでミキサーにかけて作ってくれました。いちご、バナナ、リンゴ、もも、ぶどう、トマト、みかんetc……。果物や野菜の組み合わせによっては牛乳や卵が入ったりしてちょっとリッチな感じのときもありました。あのミキサーが回るときの何とも言えないすごい音はある意味何がこの中で砕かれ出来上がるのかと子供の心の中では雑音というよりワクワクもするような音だったのを今でも思い出します。
私が幼い頃は、街中にも今のようにペットボトルであふれるようにジュースやお茶類が売られている時代ではありませんでした。お茶はお金を払って買う物ではありませんでしたし、ジュースと言えばコーラ、スプライト、バヤリースオレンジ、ファンタグレープ、ジンジャエールぐらいが代表の物でしたでしょうか。
祖母や叔母の家が酒の卸問屋、小売りをやっていましたので、普段は買ってもらえないジュースを遊びに行ったときだけとても貴重な物として飲んだ記憶があります。
さて、世界中どこを歩いてもペットボトルに入れられた色とりどりのジュースが店先に並んでいます。でもこれはジュースというより甘い砂糖水に合成着色料、まるで絵の具を混ぜるかのようにして見た目に美しい、でも、中身は恐ろしい飲み物としか私の目には映ってきません。
本来、ジュースと言ってよい物は本物の野菜や果物を搾ったりミキサーにかけたりして一手間かけて素材の味を感じる飲み物なのではないでしょうか。
私は、朝なるべく時間のゆとりがあるときはいろいろな野菜や果物をベースに生ジュースを作って飲むように心がけています。
バンクーバーでは、店先でオーダーして生ジュースを飲むことができる
さて、私は今、仕事の関係でベトナムに住んでいます。ここでは、フルーツは豊富で生ジュースがあちらこちらで飲むことができます。この点では日本よりフレッシュジュースが手に入りやすいのです。
ただお砂糖のことが少し問題になることと、ペットボトルの飲み物も増えていることが気にかかります。ここベトナムでのお話はまたの機会に書いていきたいと思います。
少しまたバンクーバーでのことを振り返りますが、日本よりは栄養学やオーガニック的なことは進んでいますが、先ほどの色とりどりの怪しげなジュースもたくさん売っているのも事実です。しかし、私の印象では甘味料たっぷりの色とりどりの飲み物と同時に、ジュースのスタンドバーも街のあちらこちらにたくさん見かけました。
一番すごいと思ったのはオーガニックの八百屋さんの店先に大きなジューサーがあって、何種類かのメニューの中から自分が飲みたいものをオーダーすると目の前では野菜は束ごと、果物も丸ごとどんどん入れていくのです。本当にこれでもかというくらいの勢いでした。見ているのがとても楽しく、どんな味にブレンドされて私の手に入るのだろうかと内心ワクワクしていました。
この思いと言うのは、幼い頃母のミキサーの音を聞きながら出来上がるジュースを待っていたときの気持ちと同じような感じでした。本来、食事やジュースひとつ口にするのにもこんなわくわく感があってもいいのでしょうね。
バンクーバーでは、やはりここにも選択肢があるということです。そして、みんなの意識が高いということもわかります。
生ジュースを飲むことを治療の一環として取り入れる
バンクーバーでのCancer care centreおよびクリニックでは、患者さんの栄養療法の中でジュースを作って飲むことを治療の一環に積極的に取り入れる処方をほとんどの患者さんにしています。基本的な物はニンジン、ビート、フィッシュオイルを入れることでした。
Anticancerの目的でビート、ニンジンはβカロチン豊富である代表の野菜です。フィッシュオイルはω3脂肪酸を豊富に含む代表的な食材です。
ジュースをがん患者さんに勧める理由に、がんの患者さんは、食欲の低下や消化吸収能力が落ちていることが多く見られます。そのため、ジュースであればのどごしも良く消化吸収の時間も早くなります。
ジュースの具体的なことをお話しする前に、がん患者さんの栄養療法の基本を挙げてみたいと思います。今までも何度となく書いてきましたが、おさらいの意味で。
①複合炭水化物を野菜と一緒に摂る。
②食べる量の60~70%は生の食材を摂る。
③アルカリ性の食品を多く食べる。
④発がん性のあるすべての添加物を避ける。
⑤すべての精製された砂糖と炭水化物を避ける。
⑥ホルモンなど添加された動物性たんぱく質を避ける。
⑦たくさんの野菜ジュースを飲む(出来合の物ではない)。
⑧ジュースでのデトックスプログラムを取り入れてみる(これはがんの状態にもよりますので、栄養療法を行う医師に相談してください)。
⑨肝臓の働きを浄化する食事をする。
では、少し具体的なことに触れていきたいと思います。
がんの患者さんでは、まずは抗酸化を考えていきます。抗酸化物質はフルーツや野菜の中には数え切れないほど存在しています。いくつか代表的なお勧めのできる栄養素を挙げてみます。
バイオフラボノイド、カロテン、脂肪酸のω3脂肪酸、共役リノール酸、γリノレン酸、鉄、セレニウム、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛などです。
ハーブ類では、アストラガルス(オウギ)、エキナセアなど。
ジュース療法の基本に使用する食材はビーツ、キャベツ、ニンジン、ガーリック、グリーンジュース(日本で言う青汁)、パセリ、ザクロジュース、トマト、小麦若葉ジュースなどです。
では、レシピをいくつかご紹介してみましょう。
「生ジュース」レシピ
朝の活力ドリンク(1~2人):
ニンジン3本をよく洗ってヘタは除きます
皮をむいたキュウリ1本
1/2本のビーツの根をよく洗って(少し蒸してもよい)
1/2個の皮をむいたレモン
1インチ(2・5㎝)のショウガの根をよく洗う、もし古ければ皮をむく
ミキサーにかけあまり時間をおかないで飲む
トリプルC(1~2人):
1/4個の小さめの緑のキャベツ
葉を取った4本のオーガニックセロリ
4本のニンジンをよく洗い、緑色のヘタは除く
ミキサーにかけ時間をおかないで飲む
カルシウムリッチカクテル(1~2人):
皮を?いた1本のキュウリ
1~2枚の中サイズのケールの葉
ひとつかみのパセリ
セロリ1本
皮をむいたレモン1/2個
1インチ(2・5㎝)のしょうがの根をよく洗って(古いときは皮をむく)
ミキサーにかけ早めに飲む
免疫アップジュース(1人):
ひとつかみのクレソン
かぶ1個、よく洗ってへたを取り整える
3本のニンジンをよく洗いへたを取り整える
にんにくを1~2かけ
1/2のグリーンアップル
これらをジュースにして時間をおかないで飲む
※報告によると、にんにくは自然の抗生剤の役割をするとのことです。それは、細菌、真菌、寄生虫そしてウイルスに効果を示します。生で食べたときにその効果を発揮するとのことです。
ほうれんそうパワー(1~2人):
1/2のキュウリの皮をむく
3本のにんじん、よく洗ってへたを取り整える
2本のセロリ
1/2のビートの根をよく洗い(少し蒸した状態がいいでしょう)
1つかみのパセリ
1/2の皮をむいたレモン
これらをミキサーにかけてジュースにして時間をおかずに飲む
滋養強壮ジュース(1人):
トマト2個
皮をむいた1/2のキュウリ
6~8個のさやいんげん
1/2の皮をむいたレモンかライム
少量のショウガ
これらをミキサーにかけ時間をおかずに飲む
ジンジャーホッパー(1人):
1/2グリーンアップル
1/2~1インチ(2・5㎝)の皮を?いたショウガの根
中サイズの5本のにんじんをよく洗い緑の部分を取り整える
これらをミキサーにかけ時間をおかずに飲む
心地よい眠りのジュース(1人):
パセリをひとつまみ
2枚のロメインレタスの葉
1/2の皮をむいたキュウリ
3本のにんじんをよく洗いへたを取り整える
セロリ1本(葉の部分は除く)
※パセリとロメインレタスは別にしておく。まずキュウリをミキサーして1度止める。そこにパセリとロメインレタスを入れミキサーする。最後ににんじんとセロリを入れて時間をおかずに飲む
キャベツ畑のカクテル(1人):
3~4ポンド(1ポンドは約453・6g)の緑色のキャベツ(春キャベツのような物が理想的)
1個のトマトか1個のレモン、皮をむく
1ポンドのオーガニックのセロリ、葉も一緒に
これらをミキサーでジュースにして時間をおかずに飲む
今回はいくつかジュースのレシピを挙げてみました。これらは、春にバンクーバーで入手した情報なので、実際日本でビートなどはどこでも手に入らない物が含まれています。ですが、参考までに買える食材でジュースを試してみてください。
日本の食材にも、もっとたくさん抗酸化物質も含まれていますから、今後日本の食材でのレシピも考えてみたいと思います。
ジュースのレシピの最後に、「時間をおかずに飲む」と書いておきましたが、ここで少し誤解のないように書いておきます。
この「時間をおかずに」というのは、一気のみをしてくださいというのとは違います。
フレッシュな食材は切ったりしますと、そこから空気に触れてどんどん酸化が進んでいきます。ですから、何時間も放置するのはよくありませんが、飲む間の数分間はゆっくりとリラックスしてそのジュースを飲むためだけの時間を確保してください。これはとても大切なことなのです。
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