宮西ナオ子のがんの生存率・再発率に関連する食事・栄養や、
サプリメント成分の研究比較 第2 回 大腸がん
多目的コホート研究(JPHC研究)とは?
分析疫学の手法のひとつで、ある特定の疾患が起こる可能性のある要因を持ったグループ(対象集団/コホート)を決め、その要因や特性を持った群(曝露群)と持たない群(非曝露群)に分け、一定期間観察して、その原因や特性と疾患との関連性を明らかにし、健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究のことをコホート研究といいます。
すでに全国11カ所の保健所と国立がん研究センターなどとの共同研究により、約10万人から生活習慣に関する情報を集め、長期にわたって生活習慣が疾病の発症に関連しているかどうか調査したものが、国立がん研究センター予防研究グループHPで公開されています。1990年に開始されたこの研究は、対象となった住民全体の8割を越える参加で20年以上にわたる長期追跡により、結果を積み上げてきました。しかしこれまでの研究では解決しない部分も残されており、さらに、最近の研究や技術の進歩で、生活習慣病に役立ついろいろな情報が得られる可能性が出てきたために、2020年4月1日より「次世代多目的コホート研究」が開始されています。
大腸がんの発がんリスク
大腸がんとは?
大腸がんは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんです。早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。症状としては、血便(便に血が混じる)、下血(腸からの出血により赤または赤黒い便が出る、便の表面に血液が付着する)、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少などが見られます。
大腸がんのリスクが低下する食べ物 5アイテム
大腸がんの発がんリスクが低下する食べ物は、カルシウム、マグネシウム、コーヒー、ビタミンB6そして健康型の食事の5アイテムがありました(表1参照)。
研究素材/テーマ | 研究内容 | 結果 |
カルシウム | アンケート調査の結果を用いて、カルシウムの1日当たりの摂取量を算出してグループ分けを行い、その後の大腸がん発生率を比較した。 | 男性において、カルシウムの摂取量が最低(300mg 未満)のグループと比べると、最高(700mg 以上)のグループでリスクが40%近く低かった。 |
マグネシウム | アンケートから計算されたマグネシウム摂取量によって、5 つのグループに分けて、最も少ないグループに比べ、その他のグループで大腸がんのリスクが何倍になるかを調査した。 | マグネシウム摂取量が高い男性ほど大腸がんリスクは、低くなる傾向が見られた。この傾向は結腸がんで特に関連が明瞭だった。 |
コーヒー | アンケート調査の結果を用いて、コーヒーの飲用頻度によるグループ分けを行い、その後に発生した大腸がんとの関連を調査した。 | 1 日に3 杯以上コーヒーを飲むグループで結腸がんリスクが56%低くなり、飲む量が多いほどリスクが低くなるという傾向が見られた。 |
ビタミンB6 | アンケート調査の結果を用いて、ビタミンB6 の1 日当たりの摂取量を算出して5 つのグループに分け、その後の大腸がん発生率を比較した。 | 男性において、ビタミンB6を多く摂取するグループで大腸がんのリスクが低下した。 |
健康型の食事 | 調査のアンケート結果に基づき、134 品目の食品および飲料の摂取量を用いて「健康型」「欧米型」「伝統型」の3つの食事パターン*1を抽出し、3つの食事パターンのスコアにより5つのグループに分類し、その後の大腸がん罹患との関連を調査した。 | 男性では、健康型食事パターンのスコアが高いグループで、大腸がんのリスクが低下することがわかった。 |
表1 大腸がんのリスクが低下する食べ物
*1「健康型」:野菜や果物、いも類、大豆製品、きのこ類、海そう類、脂の多い魚、緑茶などとの関連が強い食事
「欧米型」:肉類・加工肉、パン、果物ジュース、コーヒー、ソフトドリンク、マヨネーズ、乳製品、魚介類などとの関連が強い食事
「伝統型」:ご飯、みそ汁、漬け物、魚介類、果物などとの関連が強い食事
この中では主に男性に対して結果が顕著で、カルシウムでは摂取量が最高(700㎎以上)のグループは最低(300㎎未満)と比較してリスクが40%近く低くなっています。またマグネシウムやビタミンB6でも摂取量が高いほうが大腸がんのリスクは低くなります。さらに食事については、健康型の食事パターンのスコアが高い男性のグループには大腸がんのリスクが低下しています。コーヒーに関しては男女を問わず1日に3杯以上コーヒーを飲むグループでは結腸がんリスクが56%低くなり、飲む量が多いほどリスクが低くなることがわかりました。
大腸がんリスクが高まる食べ物(表2)
研究素材/テーマ | 研究内容 | 結果 |
肉類 | アンケート調査の結果を用いて、肉類の総量や赤肉(牛・豚)・加工肉(ハム・ソーセージ等)の1 日当たりの摂取量を少ない順に5 グループに分け、その後に生じた結腸・直腸がんの発生率を比較した。 | 赤肉の摂取量が多いグループで女性の結腸がんのリスクが高くなり、肉類全体の摂取量が多いグループで男性の結腸がんリスクが高くなった。 |
表2 大腸がんのリスクが高まる食べ物
赤肉(牛・豚)の摂取量が多いグループで女性の結腸がんのリスクが、肉類全体の摂取量が多いグループで男性の結腸がんのリスクが高まることがわかりました。
システマティックレビュー(SR:Systematic Review)とメタアナリシス分析(meta analysis/ メタ分析、メタ解析)とは?
システマティックレビューとは、学術文献を系統的に検索・収集して、類似する内容の研究を一定の基準で選択・評価を行う研究や研究成果物のことです。
メタアナリシス分析は、さまざまなバイアスを評価し、介入の効果や影響を推定し、統計学の手法を用いて定量的に評価するものです。システマティックレビューはエビデンスに基づくことが必須ですが、メタアナリシス分析は必ずしもエビデンスに基づいた評価とは限りません エビデンスレベルの高さについては、図1を参考にしてください。
図1 エビデンスレベル
今回は「がん患者のための栄養と運動のガイドライン(米国対がん協会)」で掲載された食品を対象に、2012年以降のPubMedに掲載された論文を追加調査しました。論文が3本以上ある食品の場合は、エビデンスレベルの高いシステマティックレビューとメタアナリシス分析の最新論文に絞って掲載しました。
大腸がん患者を対象とした食事に関する論文からの抽出
大腸がんの生存率、再発率、死亡率に関して、大腸がん患者さんを対象とした食事に関する論文を4本ご紹介します。これらの論文はすべてシステマティックレビューです(表3)。
次に大腸がんの患者さんを対象としたサプリメント成分に関する研究成果についてリサーチしました。こちらは2005年以降にPubMed に掲載された論文と研究情報のみのサイト(製品販売を含むサイトは除く)に掲載されている中から大腸がん患者さんを対象とした論文が9件、ヒットしました(表4)。
●大腸がん患者を対象とした食事(表3)
研究素材 /テーマ |
タイトル | 研究内容 | 結果 | 掲載誌/ 掲載年/ 国 |
ビタミンD | 大腸がんの発生・進行に対するビタミンD の効果:システマティックレビューとメタ分析 | 【システマティックレビューとメタ分析】 PubMed などのデータベースを用いて、開始から2020 年4 月までの検索期間で、大腸がんの発生率および長期生存率に関する適合研究21 件を対象にメタ分析を行った。 |
食事またはサプリメントのいずれかの方法によるビタミンD 摂取は、大腸がん患者の臨床転帰(治療により疾患の経過が変わっていく結果)を改善し、長期生存率を向上させることが示された。 | Int J Colorectal Dis 誌 2021 年中国 |
欧米式の食事 | がん診断後の食事についての事実。前向きコホート研究の系統的レビュー | 【システマティックレビュー】 PubmedおよびWeb of Science のデータベースを用いて、開始から2019 年10月30日までの検索期間で合計29 件(うち、大腸がん9 件)の前向き研究を分析した。 |
欧米式の食事のような有害な食事様式は避けるべきだが、食品カテゴリー(肉、乳製品)のどれ一つもがん患者の食事から排除すべきでないことを示唆した。 | Nutrients. 誌 2020 年イタリア |
カルシウム、全粒穀物 | 大腸がんサバイバーの全死亡率および大腸がん死亡率と関連する食事摂取量:前向き研究のシステマティックレビューとメタ分析 | 【システマティックレビューとメタ分析】 Pubmed およびEmbase のデータベースによって特定した合計45 件の研究を分析した。 |
少なくとも3 つの研究では全粒穀物とカルシウムの摂取量は、大腸がんの全死亡率と逆相関していた。一方、不健康な食事パターン*2 は、死亡率との間に正の関連が認められた。 | Cancers (Basel) 誌 2020 年韓国 |
地中海食 | 地中海食の遵守とがんのリスク:最新のシステマティックレビューとメタ分析 | 【システマティックレビューとメタ分析】 Pubmed およびWeb of Science のデータベースを用いて、開始から2017 年8月25 日までの検索期間で、評価研究83 件の無作為化試験、コホート研究、症例対照研究を分析した。 |
地中海食の遵守スコアの高さは、いくつかのがん種(大腸がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、頭頸部がん、前立腺がん)で死亡率が低下しており、死亡率と逆相関となっていた。予防効果は果物、野菜、全粒穀物に最も起因するように見えることが明らかになり、主として果物、野菜、全粒穀物を多く摂取することによって有益な効果がもたらされる。 | Nutrients 誌 2017 年ドイツ |
表3 大腸がん患者を対象とした食事
*2 不健康な食事パターン:詳細不明
大腸がんを対象とした食事に関するPubmed 収載論文の検索条件
colorectal cancer / patients or diagnosis / 死亡率or 生存率or 再発率/該当の食べ物(2012 年以降)
大腸がん患者さんを対象とした食事についての論文は、「欧米式の食事」「地中海食」「ビタミンD」「カルシウム・全粒穀物」の4つがありました。
ビタミンD
中国で行われた本メタアナリシス分析では、大腸がんの発生率および長期生存率に関する21本の研究を対象にメタアナリシス分析を行ったところ、食事またはサプリメントのいずれかの方法によるビタミンD使用は大腸がんの発生率に好影響を与えるだけでなく、大腸がん患者の臨床転帰(治療により疾患の経過が変わっていく結果)を改善し、長期生存率を向上させることが示されています。
欧米式の食事
欧米式の食事は、「がん診断後の食事に関する事実:前向きコホート研究のシステマティックレビュー 」の論文(Nutrients 誌、2020年/イタリア)で、がん患者さんの診断後の食事と予後の結果との関連を調べ、Pubmed とWeb of Science データベースの系統的な文献検索を行ったものです。合計29本の前向き研究が確認されました。低脂肪食、健康的な食事、野菜などの食物繊維の定期的な摂取、良質のタンパク質の摂取は有益である一方、西洋食(WD)および飽和脂肪の大量摂取は死亡リスクの上昇と関連している可能性があることがわかりました。このシステマティックレビューでは、西洋食(WD)のような有害な食事パターンは避けるべきですが、がん患者さんの食事ではどの食品カテゴリー(肉、乳製品)も排除すべきではないことが示唆されています。
カルシウム、全粒穀物
「カルシウム、全粒穀物」については韓国の論文「大腸がんサバイバーの全死亡率および大腸がん死亡率と関連する食事摂取量:前向き研究のシステマティックレビューとメタ分析」で掲載されました。少なくとも3つの研究で全粒穀物とカルシウムの摂取量が増えると、大腸がんの全死亡率が低下しました。一方、不健康な食事パターンは、死亡率との間に正の関連が認められたとしています。
地中海式の食事
「地中海食(MedD)とがんのリスク」(ドイツ)についてのシステマティックレビューとメタ分析では、地中海式食事を遵守、がんの全死亡率リスク、異なる種類のがんのリスク、がんサバイバーにおけるがん死亡率・再発リスクに及ぼす影響について調査していますが、今回のメタ分析では、地中海食(MedD)を遵守すると、いくつかのがん種(大腸がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、頭頸部がん、前立腺がん)の死亡率およびいくつかのがん種(特に大腸がん)のリスクが低下することが確認されました。予防効果は果物、野菜、全粒穀物に最も起因することが明らかになり、主として果物、野菜、全粒穀物を多く摂取することによって有益な効果がもたらされるとしています。
大腸がんに関するサプリメント成分(表4)
研究素材/テーマ | タイトル | 研究内容 | 結果 | 掲載誌/ 掲載年/ 国 |
シイタケ菌糸体 | がん患者におけるシイタケ菌糸体抽出物配合顆粒のQOL 改善作用:多施設共同研究 | さまざまな治療背景をもつがん患者68名を対象に、各治療と並行してシイタケ菌糸体を4週間連日摂取した。 | さまざまな治療背景をもつがん患者が各治療と並行してシイタケ菌糸体を摂取したところQOL の改善を示した。 | 日本補完代替医療学会誌 2017 年 日本 |
シイタケ菌糸体 | がん免疫療法実施患者における、免疫向上・免疫抑制軽減・QOLに対する有用性報告 | がん免疫療法を実施中の患者10名を対象に、4 週間は免疫細胞療法単独、次の4 週間はシイタケ菌糸体を併用した。 | シイタケ菌糸体を併用して摂取するとQOL および免疫能が改善する可能性がある。 | Gan To Kagaku Ryoho 誌 2012 年 日本 |
シイタケ菌糸体 | がん化学療法中の患者におけるシイタケ菌糸体エキス経口投与の有用性と安全性 | 乳がん・胃・大腸がんの術後補助化学療法、食道・大腸再発がんの化学療法中の患者7 名を対象に、治療1 コースは単独化学療法、2 コース目はシイタケ菌糸体を併用した。 | シイタケ菌糸体を摂取するとQOL と免疫機能を改善することを示唆した。 | Am J Chin Med 誌 2011 年 日本 |
シイタケ菌糸体 | 胃がん・大腸がん化学療法実施患者における、抗がん剤副作用軽減に対する有用性報告 | 進行性消化器がん(胃がん1 名、大腸がん6 名)の患者7 名を対象に、1 コース目は単独化学療法、2 コース目はシイタケ菌糸体を併用した。 | シイタケ菌糸体を併用して摂取すると化学療法で起こる副作用の発生率を低下させることを示唆した。 | Asian Pac J Cancer Prev.誌 2011 年 日本 |
フコイダン | 転移性大腸がん患者における補足療法としてのフコイダンの有用性報告 | 【ランダム化比較試験】 標的化学療法剤を受けている転移性大腸がん患者54名を対象に、低分子フコイダン群とプラセボ群のいずれかに無作為に割り付けた。 |
低分子フコイダンを併用摂取したところ、疾患制御率の有意な改善を示した。一方、全奏効率、無増悪生存期間、全生存期間、副作用、生活の質では有意差は認められなかった。 | Mar Drugs. 誌 2017 年 台湾 |
フコイダン | 大腸がん化学療法実施患者に対化学療法施行中の大腸がん患者を対象に、フコイダン対照群とフコイダン非投与群に無作為に割り付けた。 | 化学療法施行中の大腸がん患者を対象に、フコイダン対照群とフコイダン非投与群に無作為に割り付けた。 | フコイダンを摂取すると、疲労が改善する作用が観察された。 | Oncol Lett. 誌 2011 年 日本 |
霊芝 | 消化器がんにおける霊芝胞子による血清腫瘍マーカーの上昇:5 例の報告 | 消化器がんの患者5 名を対象に、霊芝胞子を1 日2 回1 ?2 カ月間経口摂取した。 | 霊芝胞子を摂取すると、治療効果の観察に最も重要な血清腫瘍マーカーの1つであるCA72-4 のレベルが上昇した。また摂取を中止するとCA72-4 が急速に正常レベルに戻った。 | Integr Cancer Ther.l 誌 2014 年 中国 |
霊芝 | 進行大腸がん患者の生薬服用時の免疫機能推移 | 進行性大腸がん患者47 名を対象に、霊芝から分離した多糖類を12 週間経口摂取した。 | 霊芝から分離した多糖成分を服用させると、NK 細胞活性などが上昇した。 | Int Immunopharmacol 誌 2006 年 中国 |
プロポリス | プロポリス抽出物の大腸腺腫ポリープ摘出患者への効果に関するパイロット、無作為化、プラセボ対照、二重盲検第0 相/ バイオマーカー試験 | 【ランダム化比較試験】 大腸腺腫ポリープ摘出後の患者を、15 名のプロポリス投与群と16 名のプラセボ投与群に無作為に割り付け、プロポリス抽出物を3カ月間投与した。 |
プロポリス抽出物を摂取したところ、結腸がんの初期段階で起こる変化の予防有効性は確認されず、また心筋細胞を含む筋肉組織に有害な副作用を及ぼす可能性が示された。 | J Am Coll Nutr 誌 2012 年 日本 |
表4 大腸がんに関するサプリメント成分
大腸がんを対象としたサプリメント成分に関するPubmed 収載論文の検索条件
agaricus blazei or lentinula edodes mycelia or Inonotusobliquus or Ganoderma lucidum or shark cartilage or Sparassis crispa or fucoidan or propolis/patient ancer
うち「大腸がん」が含まれる論文を抽出(2005年以降)
大腸がんを対象としたサプリメント成分に関するPubMed 収載論文のなかで、2005年以後、「大腸がん」が含まれる論文を抽出しました。
シイタケ菌糸体4本、フコイダン2本、霊芝2本、プロポリス1本です。
シイタケ菌糸体
シイタケ菌糸体では、日本からの論文が4本。「QOL(生活の質)や免疫機能の改善を示した」(3本)、「シイタケ菌糸体を併用して摂取すると、副作用の発生率を低下させる」などの結果が出ています。
フコイダン
フコイダンについては台湾と日本からそれぞれ1本。台湾の論文では、「転移性大腸がん患者における補足療法としてのフコイダンの有用性報告」と題するランダム化比較試験が行われた結果、「低分子フコイダンを併用摂取したところ疾患制御率の有意な改善を示し」ましたが、同時に「全奏効率、無増悪生存期間、全生存期間、副作用、生活の質では有意差は認められなかった」という結果となっています。もう1本、日本の論文では、「フコイダンを摂取すると疲労が改善する作用が観察された」とあります。
霊芝
霊芝については、2本で両方とも中国の論文です。ひとつは「摂取すると治療効果の観察に最も重要な血清腫瘍マーカーの1つ、CA72–4レベルが上昇し、摂取を中止すると急速に正常レベルに戻った」という報告がありました。また「NK細胞活性などが上昇した」という結果もありました。
プロポリス
プロポリスの論文は日本からのランダム化比較試験の1本ですが、「結腸がんの予防有効性は確認されず、心筋細胞を含む筋肉組織に有害な副作用を及ぼす可能性」が示されています。
総評
1950年から2000年までの50年間で日本の大腸がんによる死亡者数は、男性で約10倍、女性で約8倍と急激に増加したといいます。男女とも合わせて大腸がんで亡くなる人は、年間5万人を超えるといわれ、昨今では女性のがん死亡原因の1位が大腸がんとなっています。原因としては、食生活の欧米化や運動不足、飲酒や喫煙、ストレスなど、さまざまな生活習慣が影響しているといわれますが、いずれの要因も自分の意識次第では改善できるものでしょう。しかも大腸がんは早期に発見して治療すれば5年生存率が95%を超えるといわれるだけに、食生活に留意して、予防をし、早期発見をするにこしたことはありません。今回の論文から考察してみると、地中海食、ビタミンD、カルシウム、マグネシウム、全粒穀物などを摂り入れる食生活がよいかと思いますし、野菜、果物を多く摂取し、肉食はなるべく少なめにしたほうがよいかもしれません。コーヒーがよいという報告やサプリメント成分ではシイタケ菌糸体がQOLや免疫機能を向上させるという報告も興味深いと感じました。
宮西ナオ子(みやにし・なおこ)
上智大学ポルトガル語学科卒業。生き方研究家・ライター・エッセイスト・女性能楽研究家・博士(総合社会文化)。著書に『朝2時間早く起きれば人生が変わる』『眠る前の7分間』『一週一菜の奇跡』『和ごころのある暮らし』など多数。
2014年「東久邇宮文化褒賞」受賞。
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