山田邦子のがんとのやさしい付き合い方(第16回)
そこが知りたい 副作用がほとんどない
天然の「抗がん剤」高濃度ビタミンC点滴療法
高濃度ビタミンC点滴療法の歴史
2004年、ポーリング博士の弟子のヒュー・リオルダン医師が、経口投与はビタミンCが体内に吸収されにくく、がん細胞を殺すのに十分な血中濃度まで上昇させることが不可能という臨床結果の論文を発表。2005年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)、国立がん研究所(NCI)、アメリカ食品医薬品局(FDA)に所属する研究者たちが共同研究を進め、「高濃度ビタミンC点滴は、がん細胞に対してだけ選択的に毒性として働く」という研究論文を発表し、「ビタミンCは選択的にがん細胞を殺す」という理論が再度注目されることとなる。以後、米国、カナダ、日本、デンマークなど世界各国で高濃度ビタミンC点滴療法によるがん治療の臨床試験が進められ、一部の結果が医学専門誌に報告されている。
水上治医師との対談は2021 年7月9日(金)、東京都千代田区九段南の健康増進クリニック診察室において行われた
50年前から着手しているが、副作用で苦しむがん患者さんはいない
先生のクリニックは駅(JR市ヶ谷駅)を出てすぐのビルの中にあって、とても利便性がいいですね。
水上
ロケーションについては、がんの患者さんが多く来院されますから、駅近であまり身体のご負担のない場所を探したんですよ。
山田
そして広い。5階ですが、窓に面して心地よさそうな椅子が並んでいます。外を見ながら点滴を受けると眠ってしまうのではないですか?
水上
心地よさそうにしていらっしゃる方も多いですね。
ところで山田さんは高濃度ビタミンC点滴を受けたことはありますか? 濃度の高いビタミンC(アスコルビン酸)を配合した輸液を静脈に1~2時間点滴注射し、ビタミンCの血中濃度を大幅に高める治療法です。
山田
はい、受けたことがあります。この対談シリーズでお話させていただいた宇都宮の半田えみ先生があまりに若くて美しかったのでお世話になりました。
水上
山田さんが真剣に取り入れられたらさらに若く美しくなりますね。高濃度ビタミンC点滴療法には副作用はありませんが、幸福になる「福作用」はたくさんあります(笑)。若く、さらにきれいになり、元気はつらつとなる。
山田
「福作用」!素晴らしい!それ、いただきました!副作用はないのですか?
東京都生まれ、タレント。「がん検診率向上のため、日々頑張っています」
水上
私は品川の総合病院で内科医をしていた50年前から着手しています。以後、少し中断しましたが、このクリニックを15年前に開業してから確信を得ました。ナチュラルといわれるハーブや漢方薬だって副作用が起きることがあります。そこで私も最初は肝臓や腎臓に負担をかけるかもしれないと多少不安を感じていました。ところが今まで数千人という患者さんを診てきて誰も副作用に苦しむ人はいないどころか、元気になられているんです。
ビタミンCの血中濃度が高まると発生する「過酸化水素」が、がん細胞を選択的に攻撃する
山田
私も10年以上前に乳がんを経験していますが、それまでは柑橘系食品が嫌いでほとんど摂取しませんでした。でもがんになってビタミンCが大切と知り、以後、意識して柑橘系を摂るようにしています。家でレモンを栽培し、和歌山から各種みかんを取り寄せ、昨今では沖縄のタンカンです。栽培している村の人はみんな元気で長寿と聞き、それならばと積極的に取り入れています。
水上
さすがですね。病気をなさってから、一気に健康にシフトされているのでしょう。
山田
でもビタミンCは食して口から摂取するよりも点滴療法のほうがいいわけですね?
水上
血清濃度が100倍違います。口から摂取した場合、がん細胞を攻撃するほどの血中濃度に上がりません。
「血清濃度が100 倍違います。口から摂取した場合、がん細胞を攻撃するほどの血中濃度に上がりません」
山田
高濃度ビタミンC点滴療法のメカニズムを教えてください。
水上
ビタミンCの血中濃度が高まると、血管の外に運ばれ、ビタミンC自らが酸化され大量の「過酸化水素」という活性酸素を発生します。正常細胞は過酸化水素を中和するカタラーゼ(酵素)を持っているので影響はないのですが、カタラーゼをほとんど持っていないがん細胞は過酸化水素に取り囲まれ、細胞死につながります。つまり、選択的にがん細胞を攻撃することになるわけです(図1)。
図1高濃度ビタミンC点滴療法のメカニズム
山田
がん細胞だけをやっつけてくれるなんて、ありがたいですね。
水上
昨今では分子レベルまで研究され、6つのルートで、がん細胞に侵入することがわかってきました。過酸化水素が細胞膜から浸透して細胞内へ入っていくルート、ビタミンCそのものがビタミンC受容体から細胞内へ侵入するルート、ビタミンCの酸化型デヒドロアスコルビン酸がブドウ糖の受容体から細胞内へ侵入するルート、その他、鉄やブドウ糖からのルートもあります。
高濃度ビタミンC(アスコルビン酸)
尿中ビタミンC試験紙
山田
ブドウ糖も関係があるのですね。
水上
ブドウ糖とビタミンCの分子構造は8~9割が同じです。。多くの動物は自分の体内でブドウ糖からビタミンCを合成できますが、人間はブドウ糖からビタミンCを合成するGLOという肝臓の酵素がありません。米国の研究では、がん患者さんの多くがビタミンC欠乏だそうです。そこで断糖して血中のブドウ糖の量を減少させた状態でビタミンC点滴を行うと、がん細胞がブドウ糖と間違えてビタミンCを取り込むため、治療効果が高まるといわれています。
高濃度ビタミンC点滴療法は、民間療法ではなく先端療法だと思う
山田
1回に必要な点滴の量は決まっているのですか?
水上
山田さんのように健康でアンチエイジングが目的ならば1回25gで約1時間。月に1~2回でいいですね。少し慣れてきたら50gを2時間くらいするのもいいでしょう。
山田
私は栄養士でもあるのですが、ビタミンCは水溶性のため、たくさん入れても身体から出てしまうと教わりました。
水上
ビタミンCが排尿時にどのくらい排出されるか試験紙(46頁の写真)で測定すると1週間、ビタミンCが出ています。ということは、体内にストックされているのです。ビタミンCが身体で一番多い3つの場所は脳、副腎、白血球です。ここをいつも満タンにするためには定期的な点滴療法が最適なのです。
山田
がん患者さんの場合はどのくらいのビタミンCが必要ですか?
水上
がん治療に有効な血中濃度である5000μg/ ㎖以上になるよう調整するために当院では1回につき平均75gを使っています。ただし抗がん剤ほどの破壊力はないですからビタミンCだけでがんを消してくださいといわれても無理です。その場合は標準治療(手術、抗がん剤、放射線治療)との組み合わせをメインに、あくまでも補完的に使う必要がありますね。
山田
併用してもいいのですね?
水上
もちろんです。抗がん剤の副作用軽減や抗がん剤の効果を補強する可能性を示唆する研究論文だけで100本あります。2009年から東海大学の血液腫瘍科で再発悪性リンパ腫の第2相の臨床研究も行っています。高血糖改善、抗アレルギーなど40以上の薬理作用も認められています。ひとつの化学物質で40以上薬理作用があるものはありません。免疫力も上がります。NK細胞、T細胞、樹状細胞からマクロファージまですべてを活性化します。
山田
特に効果のあるがんはありますか?
「ビタミンCは食して口から摂取するよりも点滴療法のほうがいいわけですね?」
水上
抗がん剤はがん種を限定しますが、高濃度ビタミンC点滴療法は、メカニズムが違うので、あらゆるがんに効果的です。民間療法のように思われていますが、先端療法だと思います。
また46年前に当時佐賀大学の農学部教授だった村田晃博士が、ビタミンCに抗ウイルス作用があることを世界で初めて発表しています(村田晃著:アスコルビン酸のウイルス不活化作用 蛋白質核酸酵素20:593–601、1975)。昨今では新型コロナウイルスによる肺炎の患者さんに用いられ、驚異的な効果が出ていると中国や米国で報告されています。
山田
それはすごい報告ですね!
ビタミンC投与に掛かる費用は25gで1回1万円ほど
山田
治療するときの注意点はありますか?
水上
私も加盟している点滴療法研究会にはすでに700人ほどが加盟していますが、公式治療プログラム「リオルダン・プロトコル」を基本にしています。ヒュー・リオルダン医師が考案した治療プログラムで世界各国で実施されています。治療を受ける場合はこのプログラムに沿っているかどうかを確認したほうがよいでしょう。また点滴用のビタミンC製剤は、防腐剤無使用の輸入品を使います。国産製剤には防腐剤が使用されているため、大量に使うのは避けたいですね。私は15年前にアイルランドの工場に行き製造後2週間以内にクール宅急便で送ってもらうように交渉し、さらに複数の会社と取引してリスクヘッジをしています。
山田
素晴らしいことづくめですが、唯一、お財布が気になります。料金はいかほどになるのでしょうか?
水上
クリニックによって変わりますが、25gで1回1万円くらいです。
山田
誰でも受けられますか?
水上
赤血球を正常に機能させるG6PDという酵素が欠損している人は受けられません。当クリニックでは事前検査を行います。G6PDが欠損している人は遺伝的なもので日本人の0・5%くらいといわれています。女性には少ないですね。ほかには心不全、腎不全、人工透析中などです。
対談を終えて記念撮影
山田
一人でも多くの方がこの療法を活用して、闘病中はもちろん、予防に、美容に、QOL(生活の質)の改善に大いに役立てていただきたいですね。本日はありがとうございました。
山田 邦子●やまだ・くにこ●
1960年東京都生まれ。タレント。2007年、乳がんが見つかり、手術を受ける。2008年、〝がん撲滅〟を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、団長に就任する。2008~2010年、厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」の一員となる。栄養士の資格を持っている。