山田邦子のがんとのやさしい付き合い方(第24回)
そこが知りたい がんの治療効果を高める放射線ホルミシス療法
がん患者への治療効果は、ラドンを体内に取り込むことによる低用量放射線のホルミシス効果
川嶋先生は安倍元首相のお抱えドクターとして総理官邸にも行かれたのですか?
川嶋
総理になる前からのおつきあいでした。昭恵夫人からご相談があり、家の中で簡単にできることをご提案しようとラドンの吸入装置を持参し、毎日吸っていただきました。
すると体調もよくなり、お仕事にも集中して、あれよあれよという間に総理大臣に就任されました。
川嶋 朗院長との対談は2023 年3 月24 日(金)、アスリート・マーケティング株式会社応接室において行われた
山田
ラドンの効果はすごいですね。 前回(VOL.49)では、ラジウム(ラドン)温泉によるホルミシス効果についてたくさんの有益な情報をいただきました。改めて、ラドンによるホルミシス効果について教えてください。
川嶋
「ホルミシス」という言葉は、ある物質が高濃度あるいは大量に用いられた場合は有害になるものの、低濃度あるいは微量で用いられた場合、逆に有益な作用をもたらす現象のことです。ラジウム(ラドン)温泉は「放射能泉」と呼ばれ、がん患者様への治療効果は、低用量放射線のホルミシス効果によるものです。
山田
そうでしたね。
東京都生まれ、タレント。「がん検診率向上のため、日々頑張っています」。近著に、2021 年3 月に刊行した〝やまだかつてない〟『生き抜く力』がある
川嶋
ラジウム(ラドン)温泉には、温泉水に溶け込んだラドンが蒸発して空気中に充満しています。効能において重要なのはラドンなので、ラドン蒸気の「吸引」や、ラドンを含んだ温泉水を飲む「飲泉」などが効果的です(図1)。
図1 ラジウム(ラドン)温泉
山田
放射能が身体に溜まったりするなどの健康被害は出ないのですよね?
川嶋
半減期というものがあり、身体に入ったラドンの半分は30分で消え、2時間でほとんど排出されます。ラドンが溶けた温泉水も4日もするとラドンはなくなってしまいます。
山田
ラドンから放出される放射線にはどのような作用があるのでしょうか。
川嶋
放射線にはα線、β線、γ線、X線、中性子線などの種類がありますが、ラドンから放射される主な放射線の一つはα線です。α線は作用が強いのですが透過性がほとんどなく、紙レベルでα線を止めてしまいます(図2)。
図2 放射線の種類と特徴
α線は皮膚から入らないのでラドンを鼻から吸ったり、溶けている水を飲んだりして体内に取り込みます。呼吸によって体内に取り込まれたラドンは、肺から血流とともに全身の細胞周辺に運ばれていき、そこでα線を放射します。がんの原因となる活性酸素を除去する酵素の活性を上げたり、細胞活動を活発にしたり、NK細胞(リンパ球の一種)を活性化したりします。また、がん抑制遺伝子であるP53遺伝子が活性化し、がん細胞の増殖が抑制されます。
放射線ホルミシス療法は、ラジウム(ラドン)温泉によるホルミシス効果と同様の効果が期待できる
ぜひとも活用したいと思いましたが、なかなかラドン温泉に行く時間がありません。ホルミシスルームでも同じような効果が期待できるということでしたね。
川嶋
そのとおりです。ラジウム鉱石を使ってつくられたホルミシスルームに入ることで、人工的に放射線ホルミシス効果を得ることができます。現在では放射線ホルミシス療法が受けられるホルミシスルームが完備された施設は全国に広がっていますよ。
山田
川嶋先生のクリニックにあるホルミシスルームに興味があります(写真1)。
写真1 ホルミシスルーム。一人部屋が2つある(編集部 撮影)
中はどうなっているのですか?
川嶋
ホルミシスルームには壁から天井からすべてに世界各地から吟味して取り寄せたラジウム鉱石を塗り付けて密閉しています。ラドンは重たい気体なので下に沈むため、入口の扉は高くしてあり、患者様には床に寝ていただきます。温度はだいたい38度から40度。湿度は60%〜80%くらいです。
山田
何時間くらい入るのですか?
川嶋
無理しない程度で、1時間くらいを目安にしています。
山田
どのくらいの頻度で行くのですか?
川嶋
病気を抱えている人ならば週に1、2回の間隔が多いですね。症状がひどいときは、週に3回入ってもらいますが、よくなってくると回数も減ります。安定したら月に一度といった具合に、症状や状況に合わせます。完全に治ったといっても月に1回くらいは入ったほうがよいですね。継続的に入り続けることが大切です。
「ホルミシスルームに入ることで、人工的に放射線ホルミシス効果を得ることができます」
山田
何人で入るのですか?
川嶋
一人部屋が2つあります。
山田
お値段は高いのでは?
川嶋
1回1万円くらいです。患者様の無理のないようにしています。継続ができる範囲で行わないと意味がありませんからね。継続できない金額のものに手を出してはいけません。
台湾の放射能汚染アパート住民のがん死亡率は、台北地域の一般市民と比べ20分の1以下
効果は認められているのでしょうか。
川嶋
20年前から取り組み、現在の方法にして5~6年が経過しますが、効果は確実に出ています。特に抗がん剤や放射線治療の合間に行うと効果が高いのではないかと思います。
山田
がん種や進行状態に関係ありますか。
川嶋
どのようながん種も進行状態も関係ありません。細胞周辺に運ばれたラドンは崩壊しながらα線を放射し、細胞に大きなエネルギーを放射します。そして抗酸化酵素の活性を上げ、活性酸素を除去します。また細胞のホルモン分泌を促したりNK細胞などの免疫系を活性化したり、がん抑制遺伝子の産物であるP53タンパク質を増加させることも確認されています(図3)。
図3 がん抑制遺伝子 p53の活性検査
山田
すごいですね。
川嶋
ところで「台湾・放射能汚染アパートによるがん死の予防効果」という有名な実例をご存じですか?(※1)
※1 出典:Dose Response.2 0 0 6 Aug 25;5(1):63-75. doi: 10.2203/dose-response.06-105.Chen.
山田
放射能汚染でがん死の予防?
川嶋
1982年に完成した台北市とその近郊のアパートを含む約1700戸(約1万人)の建物の話なのですが、鉄筋コンクリートにコバルト60の放射性元素が混入していたということで、住居内放射線レベルがきわめて高いことが完成から10年後の1992年に判明したのです。
山田
それは大変な騒ぎになりますね。
川嶋
ところが高放射線アパートに住んでいた約1万人の住民にとって19年間のがん死亡率は、台北地域の一般市民と比べ20分の1以下でした。しかもその10年間で、がんで亡くなった人は7人しかいませんでした。その人たちは、入居時にすでにがんがあったのです。ということは、このアパートに住んでからがんが発症して亡くなった人はゼロだったというわけです(図4)。
図4 放射能汚染アパートによるがん死の予防効果
山田
びっくりしました。すごい結果ですね。
「なかなかラドン温泉に行く時間がありません。ホルミシスルームでも同じような効果が期待できるんですね」
クリニック以外にさまざまな施設で放射線ホルミシス療法が受けられる
先生のホルミシス研究会では、どのようなことをされているのですか?
川嶋
正しい放射線ホルミシスの普及のために、2004年頃より放射線ホルミシス療法に関する研究をし、実践を続けていた医師や企業の有志による勉強会を行っています。
この医療の欠点でもあるのですが、残念ながらインチキが多いのです。ラジウムが出る「オーストリアの石」や「玉川温泉の石」を使用していると言いますが、現地の人に聞くと効果のある石は海外不出ですし、玉川温泉の北投石も天然記念物なので採集不可です。
山田
ほぼ20年が経過するわけですね。
川嶋
多くの動物実験データや人体への臨床例が蓄積され、2007年10月に「有限責任中間法人ホルミシス臨床研究会(設立当初)」が正式に発足し、翌月には、この分野の先駆的権威のトーマス・D・ラッキー博士を招いて国際シンポジウムを催しました。以後は、医師と企業が協力し、放射線ホルミシス療法の正しい啓蒙と普及を行っています。
山田
私たちが注意することはありますか?
川嶋
ホルミシス療法を試したり、ホルミシスシートなどの市販品を購入する場合は測定値を確認することです。α線、γ線、β線が出ているのか、そしてラドンの度数はどのくらいかを表示していない場合は、信用してはいけません。
いずれにしても放射線を扱えるのは医療従事者のみですから、医療行為を期待するのなら医者が完全に責任を持っているところを選んでください。
山田
先生の書籍には、クリニック以外にドラッグストアや整体、健康サロンなど、さまざまな場所で放射線ホルミシス療法が受けられる施設が掲載されていますが、このような施設でも大丈夫なのでしょうか?
川嶋
顧問医師を置くように指導しています。顧問医師がいなければ違法となることがあるので、そこを確認されたらよいでしょう。
山田
認定された施設は今、全国でどのくらいあるのですか?
川嶋
20~30カ所はあると思います。
治療で大切なのは主治医とコミュニケーションをとって、最良の方法を導き出すこと
先生は大学で統合医療(※2)を教えていらっしゃるのですね。
※2 統合医療:西洋医学による医療と代替医療を合わせて患者を治療すること
川嶋
昨年(2022年)神奈川歯科大学大学院統合医療講座を開設し、高等教育機関による教育を開始しています(写真2)。
写真2 SDM クリニック内にある「神奈川歯科大学大学院 高輪キャンパス」(編集部撮影)
ここでは統合医療全般、アロマやホメオパシー、カイロプラクティックなどの講座も授業に入っています。そして何よりも患者様が満足して生きる生き方を教えています。現在は10名の受講生が学んでいます。
今後、統合医療のニーズはますます高まると思います。ある腫瘍内科医ががんになったときに、なかなか同僚の西洋医学の医者には相談できず、そして最後には代替医療を取り入れたとおっしゃっていました。
山田
西洋医学の先生でも? 思い起こせば、私ががんになったとき、全国から励ましの意味も含めて、たくさんのアドバイスや商品が届きました。そこで主治医に確認すると、たいがいはダメだと言われたんですよ。
川嶋
その中には偽物も多いとは思いますが、論文などで証明されている本物もあるでしょう。新しい療法に対して、頭から怒るようならば、その医者を替えればいいわけです。大切なのは主治医とコミュニケーションをとって、最良の方法を導き出すことですね。
山田
主治医との相性もありますね。
川嶋
私の場合は患者様に「死んでは困りますか?」と訊きます。そこで「困る」とおっしゃる患者様には、「自分の人生で何をしたいのか、何を大切にしたいのか」を訊きます。すると患者様は、ご自身の気持ちを伝えてくれますから、その回答次第によって治療方法が変わってきます。その方が希望する方法を第一優先に考えます。医師が自分の価値観を押し付けてはいけないと肝に銘じています。
たとえば、「治療をしない」という選択肢もあります。がんがあっても天寿を全うできるなら、それもよいという考え方もありますよね。そして何の治療もしないで、実際に長生きされている方もいます。
山田
さまざまな価値観がありますからね。
川嶋
かつてと今の日本とでは人口の構造がまったく異なっています。『サザエさん』の漫画を知っていると思いますが、お父さんの波平さんの年齢を知っていますか? 一見、老人に見えますが、設定上では53歳なんです。
山田
53歳といったら、今ではまだまだ若い。
川嶋
当時は人口の6割が若い人でした。ところが2060年になると人口比率が逆転します。50歳以上が6割になるのです。すでに人生100歳の時代です。100歳で子供ができる世の中になるかもしれません。そのような時代に満足して死んでいくためには、新しい医療を取り入れる考えが必要になってくるわけです。
山田
さらに、ホルミシス治療は、病気を癒すだけではなく、予防医学という捉え方もできるわけですね。
川嶋
健康にもいいですし、妊活にもいいんですよ。また認知症の認知機能が改善したという結果も出ています。
山田
素晴らしい。万全ですね。私もホルミシスルームを活用したいものです。本日はありがとうございました。
対談を終えたあとで記念撮影
神奈川歯科大学大学院統合医療学講座
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統合医療SDMクリニック
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URL: https://sdm-clinic.jp/
山田 邦子●やまだ・くにこ●
1960年東京都生まれ。タレント。2007年、乳がんが見つかり、手術を受ける。
2008年、〝がん撲滅〞を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し、団長に就任する。2008〜2010年、厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」の一員となる。栄養士の資格を持っている。